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「伊藤清永」
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伊藤清永
日本の美術界に多大なる影響を与えた昭和期の洋画家・伊藤清永は、兵庫県に生まれます。色彩の交響楽ともいわれるその作品の数々は、まさに芸術を超えた彼自身の軌跡としても受け取ることができます。自らのことをモダンボーイと呼んでいたというだけあり、常に新しい芸術の可能性に挑戦し続けた、日本きっての芸術家と呼んで良いのではないでしょうか。
そんな伊藤清永は、裸婦像の名手として非常に高い評価を得ています。その代表作として1936年に発表している「磯人」があります。海岸沿いで髪を絞る者や、赤子を抱く者、または収穫した貝類などを選別する者など日常風景を力強く大胆なタッチで描いており、彼の裸婦画制作への大きな機転となる作品になっています。そしてその後も、真実の写実を求め、常に新しい挑戦をしており、1953年には伊藤絵画研究所を設立しています。1962年にはフランスとオランダに渡り「オランダの裸婦」という素晴らしい作品も残しています。
彼の作品の特徴は、そのリアリティにあるともいわれています。芸術至上主義である伊藤清永は、その作品を描くことに決して手を抜くことはなかったそうです。裸婦を描くのであれば「抱いてみなければならい」というぐらいに現実感を大切にしていました。観察し、感じ、そして感動しなければ良い作品は生まれない。この精神を常に持ち続けた彼は、芸術という言葉に惑わされず真実を芸術の域まで表現できた日本でも数少ない洋画家なのではないでしょうか。伊藤清永は1970年以降、名画「曙光」で日本芸術員恩賜賞に日展内閣総理大臣賞を受賞し、その後文化勲章も受賞しています。数々の名誉ある賞を受賞し、日本洋画家界に大きな影響を残した伊藤清永。2001年に軽井沢のアトリエで製作中に息を引き取りました。伊藤清永という男は、芸術のために生まれたといっても過言ではない人間だったのです。