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「中村善策」
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中村善策
洋画家、中村善策は1901年生まれの昭和時代に活躍しました。画家を志し、小樽洋画研究所と東京の川端画学校にて絵画を学んでいます。その後、二科展に入選、一水会の会員にもなっています。中村善策の作品の中心は独特の目線と写実的な描写で描かれた風景画が主になっています。自然の中に身をおくことにおいて、確実な風景を描写できるとした中村善策は地元である北海道の小樽市の風景や、疎開をした先である長野県の信州の大自然を中心に描き続けています。彼にとって北海道小樽市は特別な思いがあり、小樽は日本有数の画因を蔵している、とさえ語っています。小樽という街は海や山、もちろん街の風景や歴史などにおいても風景画を描く者にとって素晴らしいものばかりです。その優しく温和な人間性が現れた、見るものを心穏やかにさせる作品の数々は未だ人々を魅了してやみません。 この中村善策の作品を語る上で欠かせない作品が1982年に制作された「小樽港」です。高台から降りて来る途中から見える小樽港を描いたこの作品ですが、まさに故郷を思う気持ちと滋味溢れたタッチが共鳴し、哀愁を感じる一枚になっています。油彩独特の荒々しくも優しいタッチに、バランスの取れた色彩の構図には彼の目線で捉えられた小樽の風景への愛情を強く感じることが出来るのです。また、その作風は昔も変わらず、ブレることが無かったことが1959年に制作された「海港の秋」を見ることでもわかります。紅葉の終盤に差しかかった、冬の足音が聞こえ始めた小樽の風景が描かれたこの作品も中村善策独特のタッチや目線など、晩年の作品と大きな差はありません。むしろ、若さも手伝ってか全体的に丸みとボリューム感を出し、自然の織りなす豊穣さも感じることができるのです。そんな明快な色調が特徴の風景画を描く中村善策は、美術界でも高い評価を得ています。日展文部大臣賞や日本芸術院賞の受賞歴もあります。生涯において故郷を中心に描き続けた中村善策。郷土愛に満ちた、慈愛溢れるその人柄で多くの秀作を残した日本が誇るべき画家の一人なのです。