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「曾我蕭白」
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曾我蕭白
謎多き絵師、骨董買取・曾我蕭白。曾我蕭白は、江戸時代に活躍した絵師で、その生涯について資料があまり残っておらず、不明な点が多く存在する人物です。生まれは享保15年、京都であったというのが現在有力な説であるようですが、伊勢地方に残る彼の作品が多いことからかつでは伊勢出身なのではないかという説もありました。しかし近年の研究によって「丹波屋」という京都の商家の子だったということが明かされ、京都出身であったことがわかっています。曾我蕭白は変わった絵師で、多くの浮世絵師や画家がどんな表現をしようともその絵の美しさを求めている中で、彼は「美しさ」というものを求めていなかったようです。美しさを求めなかった曾我蕭白の作品に、「?居士・霊昭女図屏風」というものがあります。この作品は、中国の唐の時代隠者?居士が脛をこれ見よがしに見せ付けている霊昭女にどこか妖しい視線を向けている様子を描いたもので、まるで、女性の美しい脛に欲情している老人を描いたように見えます。絵の出来は細かく、しっかしとした線で描かれていて上等なものだと感じますが、お世辞にも美しい作品だとは言えないでしょう。老人のいやらしく見える視線もそうですが、脛を見せている女性の妖艶な姿を見ていると、どこか春画を目の前にしているような雰囲気さえ出てきます。しかし、これが曾我蕭白が目指した絵師としてのあり方なのかも知れません。曾我蕭白のこの作品は、どこか人間の性を表しているようにも思えてきます。どれだけ年老いても男は女を目で追い、女はその視線で喜びを感じながら男をからかう。まるで人間の性を皮肉っているようにも感じる作品です。美しさを求めなかった絵師、曾我蕭白。彼の絵師としての腕はまさに天才と呼べるものですが、その作品を見つめていると、その表現は正しくないように思えてきます。天才、というより、曾我蕭白は奇才と称した方がしっくりくるように思えます。曾我蕭白の作品から、線の美しさは感じましたが、作品としての美しさはほとんど感じませんでした。しかし、視覚を通して脳髄にずん、と襲い掛かってくるような、一種の圧力のような、そんな迫力を彼の絵は持っていると思いました。曾我蕭白の絵はどれも既存の絵師達の作品とは異なっていて、全体的に暗い雰囲気を持っているのですが、その作品達が持つ独特で、奇才としての圧倒的な力量をまざまざと見せ付けられるような心地がしました。