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日本画 近藤浩一路
日本画・近藤 浩一路(こんどう こういちろ)は1884年(明治17年)に山梨県南巨摩郡睦合村(現南部町)に生まれた日本画家であるが、漫画家としても名をなした。 裕福な家庭に恵まれ医者になるよう期待されていたが、浩一郎本人は文芸誌への投稿や俳句などにのめり込んでいき、20歳で東京美術学校西洋画科に入学した。 在学時代は西洋画を軸に学んだが、水墨画や文芸活動にも手をだすなど多面性を見せている。 卒業後は友人の藤田嗣治(画家、彫刻家)らと水墨画や漫画の展覧会を主催するなどしていたが、結婚を機に読売新聞社に就職し、政治漫画や挿絵を担当することになった。 夏目漱石の「坊ちゃん」の新潮文庫版に挿絵を描いているが、ほのぼのとした表現で見るものを微笑ませる。 交流のあった芥川龍之介は「画そのものの滑稽な漫画であり、威儀を正しさえすれば、一頁の漫画が忽ちに、一幅の山水となる」と評している。 1915年(大正4年)に結成された「珊瑚会」に参加したころから水墨に傾倒し始めたのだが、その作風は「南画じみた山水の中にも、何処か肉の臭いのする、しつこい所が潜んでいる」と芥川龍之介が評しているが、 珊瑚会のメンバーの影響が大きかったと思われる。 小川芋銭や川端龍子らかつて洋画教育を受けた者や鶴田吾郎のようなれっきとした洋画家、あるいは岡本一平・池田栄治といった漫画家という具合に一筋縄でいかない仲間のなかで、やはり近藤自身も独自性を追求して行ったのであろう。 関東大震災の直前に描いた「鵜飼六題」は近藤浩一郎の代表作となったが、川影の中に生き生きした表情で漁をする様子が水墨で描かれている。 漁師たちが翳すかがり火が、水墨であるのに燃える炎の色を感じさていて見事である。 農村の田植えの風景を描いた「雨期」を見てみると、西洋画的な構図と写実性を備えていながら雨雲の立ち込める様子を墨一色で描いた水墨である。 空の雲を透して田の水面を明るく反射する光が感じられて、見る者に日本の原風景を思い起こさせ、心を慰めてくれる。
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