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「グスタフ・クリムト」
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グスタフ・クリムト
グスタフ・クリムトは、絵画の中において装飾を巧みに扱い、見る者を別世界へと誘う洋画家である。この装飾性は、日本の尾形光琳の影響も指摘されており、洋画としては類まれなものである。
若くして成功を手にしたクリムト
クリムトは、1862年、ウィーン郊外に生まれた。7人兄弟の二番目であり、父は彫金師であった。14歳のときに王立工芸美術学校に入学し、その才能を発揮させる。在学中より建築装飾の仕事をし、26歳のときには劇場の天井の装飾画で皇帝から勲章を授与されるなど、若くして成功を手にした。 その後、「哲学」、「医学」「法学」をテーマにした3つの天井画を手掛けるが、妊婦や裸体を描くなど、当時の絵画界の常識とはあまりにもかけ離れた内容であったために、大変な批評を受けることとなった。これを機に、以後クリムトは、絵画において独自の世界を切り拓くことになる。見る者を夢現の異次元の世界へ引き込む作品
クリムトの絵画の特徴と言えば、写実的な人物に平面的な金色をあしらい、多種多様の文様を散りばめることで、見る者を夢現の異次元の世界へ引き込むところにある。その、クリムトの黄金期の代表となる作品であり、洋画における地位を確立したのが「接吻」である。 画面にはうっとりとした表情をうかべた女性がひざまずき、男性と抱き合っている。二人を包むのは金色の光であり、男性の側には黒と白の不規則な格子の文様が、女性の側には赤や青の花のような文様が施されており、画面を引き締めている。二人の立つ場所は、緑の崖とおぼしき場所であり、ピンクや青の花がびっしりと咲き乱れており、華やかな幸福と、それでいて不安な、危うい感じを漂わせている。 クリムトの絵画には、常に愛だけではなく死を、幸福だけではなく不安を感じさせる両面性がある。この両面性こそが、見る者を引き付け、今もなお多くの人を魅了している。