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日本画 常盤大空
大正元年10月20日、福島県石川郡古殿町に生まれた日本画家、常盤大空(ときわたいくう)は、本名を政男といいます。川端画学校で学んだ後、堅山南風に師事することになります。昭和15年、院展で初入選を果たします。彼は、中国や西域をモチーフとした作品を制作したことで知られております。彼は、日本美術院賞や文部大臣賞を受賞しましたが、1983年にこの世を去っております。彼が1970年に描いた作品、「黒颷(こくふう)・カラフラン」は、平塚市美術館の常設展示集展示「美の表情線描をめぐって―紙の音・思考の輪郭―」で展示されました。この作品のタイトルに使用されている「黒颷」とは、黒いつむじ風を示し、「カラフラン」とはモンゴル語の大風のことを意味しております。絵の中では、モンゴル帝国のチンギス・ハーン率いる軍隊が押し寄せ、女性や子どもが平定される様子が描かれております。強い力でねじ伏せられようとしている人々を、白線の描写だけで表現することによって、歴史の中の強者と弱者、時間の遠近、空間のスペクタクルなどの対称性を巧みに伝えようとしていることがうかがい知れます。また、彼が1960(昭和35)年に描いた作品「古代頌」などを見ると、同じ福島県ゆかりの作家、土橋醇、鎌田正蔵、佐藤昭一、斎藤清などと同様に、象徴的なノスタルジーを感じます。そのように、故郷のイメージを思い出させる数多くの作家たちが存在することから、郷愁は、芸術家の大きなエネルギー源になっていることがわかります。彼の大展覧会に出品した作品と見られる力作は、長野県の佐久市立近代美術館(油井記念館)にも保存されております。長野県には、個性的な美術館が数多く存在しますが、近現代の日本美術を、ジャンルを問わずに収蔵しているところは少ないと思われます。そのような中で、油井コレクションは、日本画や絵画のみならず、多彩な美術に触れることの出来る希少性の高いものです。
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