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表千家 歴代 宗匠
千利休に始まる千家の本流が表千家です。利休宗易に始まり、14代目の当代まで400年の歴史を誇ります。表千家の号は「不審菴」(ふしんあん)。利休が営んだ茶室の名ですが、千家屋敷全体を指す言葉でもあり、表千家の象徴として、代々受け継がれています。歴代宗匠はみな茶道具の蒐集や制作に熱心でした。そうした茶道具は「好」(このみ)、「見立て」として後代に伝えられ、型紙や絵図が残っているものは職人の手によって改めて作られることがあります。それらは通常、宗匠の名に「好」をつけて「利休好」のように呼ばれます。また、書画で言う臨模のように模して制作されたものは「写」(うつし)と呼ばれます。
宗匠の好みは時代によって異なる
千家によって完成したわび茶の精神を汲んで、表千家歴代の宗匠の好みは簡素な美しさを持つものが少なくありません。その代表的なものが黒楽茶碗でしょう。黒一色の簡素さと、形のいびつさが見る者の心にしっとりとなじんできます。また、茶室それ自体や、庭、路地のあり方まで演出した利休に倣い、好みの及ぶ範囲は非常に広く、空間全体を演出するよう配慮されたものもあります。簡素な美が好まれる一方で、江戸時代中期には、町人文化を受容する中で華美な装飾を持つものを多く作りだした時期もあります。蒔絵など華やかな装飾を好んで入れ、町人に楽しみを提供したと言われています。このように、宗匠の好みは時代によって異なっており、当時の時代性、宗匠の茶道具への思いや考え方がにじみ出ており、それを見比べるのも、茶道具の楽しみのひとつといえるでしょう。 宗匠の好みは、有名な茶碗や茶入だけでなく箸、棚、椀、台子、茶筅などなどすべての道具に及んでいます。実際に作るのは千家十職と呼ばれる職人たち。茶碗師、釜師、竹細工師、指物師、袋師などがおり、その高度な技能は代々受け継がれ、千家と同等の歴史を持っています。写の場合でも、誰の手によって作られたものかは出来不出来に大きく影響しています。千家十職は代々襲名されていますのでその名は覚えておいて損はないかもしれません。 また、歴代宗匠はみな書画を能くし、彼らの手になる書や書付なども蒐集の対象になっています。