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「マルク・シャガール」
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マルク・シャガール
漂うような夢幻の世界に、深い悲しみや喜びを込めて、愛や故郷への郷愁を描いたのがマルク・シャガールである。
シャガールは、ロシアのウィテブスクにユダヤ人として生まれた。1907年、サンクトペテルブルグの美術学校で絵画を学ぶ。その後、1910年にパリに渡り、多くの芸術家と出会う。フォーヴイズムやキュビズムなどに触れ、影響を受けたのもこの頃である。5年の滞在の後、ベラと結婚する。ベラもシャガールと同じ故郷のユダヤ人であり、シャガールはベラのことを終生敬愛していた。シャガールの数多くの作品にベラと思われる人物が登場しており、結婚の喜びや、ベラへの愛が描かれている。
幻想的な中に描かれるシャガールの深層
故郷ロシアでは、シャガールの絵画はその幻想性が嫌われて、良く受け入れられなかった。このためパリに戻ることになるが、第一次世界大戦が勃発、ユダヤ人に対するナチスの迫害から身を守るために、1941年にアメリカに渡ることとなる。その後、1944年には、ベラはアメリカで病死してしまう。 この時代のユダヤ人に対する迫害や、故郷ロシアで自らの絵画が受け入れられなかったため外国で生活せざるをえなかったことなどは、複雑な思いをもって作品に描き出されている。宗教に対する深い思い、故郷に対する複雑な郷愁は、やがて人間の根源的な悲しみへと導かれていった。幻想的でありながらも、作品に暗さや鋭さ、暗さといったものが垣間見られるのはこのためであるかもしれない。また、ベラが病死してしまったことで、シャガールは深い悲しみに沈んでしまう。ベラを失った悲しみもまた、作品に幾度も描かれた。永住先はシャガールの作品に影響をもたらした
その後、シャガールは南フランスに渡り、永住を決めた。そして、ユダヤ人女性のヴァランティーヌと再婚する。シャガールの作品にきらきらとした色彩をもたらしたのは、この南フランスでの気候と穏やかな暮らしであるともいう。この地で、シャガールは、教会のステンドグラスやオペラ座の天井画などという仕事も成し遂げている。 シャガールは97歳で天寿を全うした。人間の本質的な喜びや悲しみを描いた作品群には多くの人が今なお心動かされている。