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古書 上田秋成
幼くして生死の境を経験した読本作家、骨董買取・上田秋成
上田秋成は江戸時代後期に活躍した江戸時代の読本作家です。また、歌人や茶人、俳人の他、火事で財産を無くした時には医者をやっていたなど、様々な分野に才能を発揮した人物です。上田秋成は、幼い頃に天然痘にかかり、生死の境を彷徨いました。その際、養父が加島稲荷に天然痘から救って欲しいと願った時、上田秋成に68歳の寿命を授けてくれる夢を見た、という有名な話があります。このとき一命を取り留めましたが、天然痘によって、右手中指と左手人さし指が短くなってしまいました。養父が寿命を授けてくれる夢を見た、という幻想世界の出来事のような経験をしたことを聞き、また上田秋成自身が生き長らえたことによって、代表作である怪異小説「雨月物語」を書くに至ったのは、一種の必然だったのでしょう。「雨月物語」は、九篇の短編小説作品で、怪異小説の元祖ともされており、現代の学校教育の中にも取り入れられている有名な作品です。九篇の短編小説のその全てに共通するのが怪異を物語の中に取り入れていることで、生霊や死霊といったものから、蛇精、魔王など、この世の存在ではないものが多く登場します。その怪異達は怪しいことを起こし、時には人間の命を奪ってしまいますが、上田秋成が幼い頃に天然痘によって生死の境を彷徨ったことから、この怪異を扱った作品はその時の死の恐怖に怯え、必死に生にしがみついた壮絶な経験が作品に投影されているのではないかと言われています。そして晩年には両目の視力も失ってしまいます。しかし当時「神医」といわれた谷川氏兄弟の治療を受けて左眼のみ視力が回復します。こういう経験から自己を顧みて不遇を意識しつつも、これを命禄とした人生観を上田秋成は得たのです。その後、回復した視力も徐々に弱り、視力を完全に失ってしまう頃に書かれたという「春雨物語」に登場する一つ目の神、というキャラクターは、視力を失う前の上田秋成自身がモデルだったとも言われています。怪異小説の元祖を築いた読本作家の、己の境遇を自嘲したとも取れる内容です。