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「絹谷幸二」
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絹谷幸二
絹谷幸二は奈良県生まれの日本の洋画家です。東京芸術大学美術学部油画科で小磯良平の教えを乞い、卒業後同年1966年に第34回独立展に初出品、独立賞を受賞しています。絹谷幸二は翌年も独立賞を受賞しており、若き頃から画家としての才能を開花させていきました。アフレスコという独特の絵画技術で描かれた彼の作品は、キャンパスの中に特徴ある色彩鮮やかな人物が描かれたものが多く、その類い稀なる構図の取り方などは未だに多くの人を魅了してやみません。描くもの全てに豊穣さと純然たる鮮烈を落とし込んで行く絹谷幸二の作品の数々を語る中でも、特に彼の特徴は顕著に現れている作品のひとつとして独立展出品作品である「もう一人いる私」があります。右側の男性の鮮やかな原色使いが魅惑的に映し出される裏に、黒と褐色で描かれた同一人物と思われるもう一人の男の姿。まさに、人間の光りの部分と闇の部分を合わせもつメッセージ性の強い作品になっています。闇の側に描かれた男の背景には口づけをする男女に、奇形魚ともとれる不気味な魚の姿が描かれています。まさに不気味さと陰影に包まれた人間の漆黒の部分を感じとることができるのです。そして、人間ではなく中心に寄り合う竜と富士山を描いた「蒼天富獄双龍飛翔」においては、その純然たる空の青の鮮やかさにめまいを覚えるように、言葉も失う感動を覚えます。写実的に描かれた富士山に龍の姿の精度の高さ、鮮やかな色彩使いのバランス。洋画家でありながら、まるで浮世絵かのような風合いを感じさせるこの作品には、希望と夢を感じることができます。独特な風合いを出す技術であるフレスコ画は、絹谷幸二が芸術大学卒業後イタリアへ留学する事で身につけています。この技法を使い制作活動をしている画家は日本では珍しく、日本全国に公演なども行っています。1997年には長野県で行われた冬期オリンピックのポスターデザインも行っており、精力的に芸術活動を行っていました。現在では、東京芸術大学の名誉教授、そして大阪芸術大学教授に就任しており日本の美術界においても、重要な人物となっています。流行に流されず、自分の信じる道だけを信じ続けて大家となった絹谷幸二。彼こそが、芸術家と呼べる数少ない日本人の一人なのではないでしょうか。