陶芸家・林恭助の挑戦
陶芸家・林恭助の挑戦
陶芸家・林恭助の名を一躍有名にしたのは2002年に発表した曜変天目茶碗です。
曜変天目茶碗とは今から800年ほど前の南宋時代に中国南部福建省・建窯で作られ、陶芸史上最も美しく謎に満ちた茶碗と呼ばれています。
現存数は世界でわずか3点のみ。いずれも日本にあり国宝に指定されています。
技術の継承が途絶え、800年間誰も再現できなかった曜変天目茶碗を現代日本で甦らせました。
林恭助の生涯
林恭助は昭和38年に岐阜県土岐市に生まれました。
現在は土岐市の無形文化財・黄瀬戸の技法保持認定者にして美濃陶芸協会4代目会長を務めています。
23歳のときに地元の土岐市立陶磁器試験場に研修生として入所し、その翌年には陶磁器デザインコンペティションに入選を果たすなど、早くから才能を認められてきました。さらに同じ岐阜県出身の人間国宝・加藤孝造に師事し、その後も数々の賞を受賞しています。
独立後、当初は黄瀬戸を中心に作品を生み出していましたが、陶芸家として何か違うことをしなければと考えた時に曜変天目茶碗に出会いました。
昔から曜変天目の神秘的な輝きは人々の心を捉えて離さず、多くの陶芸家がその再現に挑んでは挫折を繰り返してきました。制作方法に謎が多く再現が困難であるため「曜変天目の再現は身代をつぶす」とまで言われた難題です。類似品もなく手に取ることもほぼ不可能な中での挑戦です。
曜変天目への挑戦
曜変天目茶碗とは黒い釉薬に大小様々な結晶が斑紋となって現れ、その周囲が星のように瑠璃色の光を放っているものを指します。この斑紋を生み出す技法が長年の謎でした。文献資料もなくこれまで誰にも再現できなかったことから、焼成のなかで偶然できたのではないかとも言われていました。
林氏は天目茶碗の故郷である中国の建陽市から陶土を取り寄せ、釉薬の研究と合わせて試行錯誤を重ねました。結果、一度黒い茶碗を焼いた後で二度目の焼成を行う「二度焼き」の手法で曜変天目に限りなく近い作品を作り上げることに成功しました。
そして曜変天目の完成へ
2002年に再現した曜変天目茶碗を発表すると、国内のみならず世界中から注目されました。国宝3点に非常に近い斑紋を持つ作品の発表により、陶芸界に衝撃が走りました。
発表の翌年2003年には岐阜県県知事表彰を受け、各地でも個展が開催されました。
2007年には曜変天目茶碗の故郷・中国北京でも展覧会が開催されました。中国人研究者たちからも高い評価を受け、民間の外国人作家としては異例で同年に故宮博物院と中国美術館に作品の永久保存が決まりました。故宮博物院は審査基準が厳しく、中国の人間国宝クラスの方の作品でもなかなか収蔵されません。中国での大きな関心と評価の高さが伺えます。このほかではイギリスのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館へも収蔵されています。
ほぼ忠実に曜変天目茶碗を再現したとはいえ、未だ「完全」な再現には至っていません。林恭助氏の他にも多くの陶芸家が研究を続けていますが、焼成の仕組みなど完全には解明されておらず、まだまだ謎多き伝説の茶碗です。
これまでの研究結果を生かし林恭助独自の曜変天目茶碗を発表しつつ、完全再現に向け更なる研究を続けている注目の作陶家です。
さいごに
めったに手に入らない林恭助の茶碗。作家本人の制作意欲がつまった作品を拝見するだけでも構いません。大事なものだけど扱いに困る、処分したいけど、どれくらいの価値がつくかわからないなど、私達はお客様がご納得頂けたらお買取りさせて頂いております。メールや電話で無料査定など行っております。お気軽にご利用下さいませ。