~硯~石から生まれた芸術作品
~硯~石から生まれた芸術作品
書をする上で必要不可欠な道具である筆・紙・硯・墨これら四つを合わせて「文房四宝(ぶんぼうしほう)」といいます。今回はその中の硯についてご説明いたします。
墨を磨るのになくてはならない道具である硯。一口に硯といっても日本で作られたものや、中国で作られたもの、石の種類や大きさ等々…さまざまな硯があります。どういったものが良い硯といわれているのか、硯の歴史を辿りながら紐解いていこうと思います。
そもそも、日本では平安時代のころまでは陶硯と呼ばれる陶器で作られた硯を使っていました。現在、私たちが使っているような石の硯は室町時代の終盤になって作製されるようになります。
日本で作られた硯を和硯(わけん)といい、中国で作られた硯は唐硯(とうけん)といいます。
和硯で代表的なものといえば、雨畑硯(あまはた)山梨県産、玄昌硯(げんしょう)宮城県産、赤間硯(あかま)山口県産、那智硯(なち)和歌山県産、雄勝硯(おがつ)宮城県産、土佐硯(とさ)高知県産などといったところで採石されているものになるでしょうか。
唐硯だと、端渓硯(たんけい)、歙州硯(きゅうじゅう)、とう河緑石硯(とうかりょくせき)、澄泥硯(ちょうでい)、 羅文硯(らもん)あたりのものが良いとされています。
和硯や唐硯とさまざまな硯がある中で、一番有名なものはやはり「端渓硯(たんけい)」ではないでしょうか。中国の広東省高要県で採石された硯石のことを指しますが、いくつも採石場があるため、場所によって多少の違いが見られます。その端渓石のなかでも特に良いとされているものが「老坑」とよばれる石です。青灰色がかった紫色の石色で、硬すぎず柔らかすぎない均等な硬さのとれた石質が特徴的です。
長い間、水に浸かってできた水岩石であるため石質が非常に温潤で墨おりが良いのも特徴のひとつです。
老坑の坑脈は小さな石が重なり合ってできているため、大きいものが採れることはほとんどなく、小さいものが多く採れます。そのため、小さい硯石を無駄なく使うために原石の形を残したままで作られることが多いです。
現在は、老坑の坑脈が廃坑となっているため、原石が採れず市場に出回っている数が少なくなってきています。今後、稀少価値が高くなる可能性があるかもしれませんね。
硯は半永久的に使うことができますが、その分お手入れもしっかりしないと墨が磨れなくなってしまいます。
墨を磨る上で一番大事なのが、鋒鋩(ほうぼう)と呼ばれる硯の表面の部分です。光をあててみるとキラキラと宝石のような細かい光の粒があり、これがあることによって墨を磨ることができます。この鋒鋩が緻密かつ均一に散りばめられているほど良いとされ、美しい墨色を出すことができます。
そのため、定期的に硯用の砥石で硯面を研ぎ、磨り減らないようにしていかなくてはいけません。
また、硯は基本的に使用したごとに洗う必要があります。脱脂綿などを使い、隅々まで冷水できれいに洗います。古い墨を残してしまうとそれが腐り、新しく磨った墨も腐ってしまいます。また、磨った墨を硯の上に置いてしまうと張り付いてしまう可能性もあるため気をつけなくてはいけません。
せっかくの良い硯も扱いを間違えてしまったら悪くなってしまいます。良いものにはメンテナンスを怠らないようにするのも大切ですね。
硯といってもさまざまな種類があるということがわかりましたね。最近では書を書くことすらなくなってきました。これを機に押し入れに眠っている硯を出してみてはいかがでしょうか。そして、その硯がどこからやってきたものなのかを調べてみるのもまた、ひとつの楽しみ方でもありますね。
さいごに
道具としての硯や鑑賞目的の硯。もし表舞台に立っていない硯がお家にございましたら、一度お掃除がてらに査定してみては如何でしょうか。思ってもみなかった値段がつくかもしれませんし、つかないかもしれません。私達八光堂は査定料は一切いただきません。無料で査定させて頂きます。