今井俊満~変化を重ねるということ~
今井俊満~変化を重ねるということ~
こんにちは。
突然ですが上の写真、どちらも同じ作家が描いた作品です。
作風が変わることは、画壇の中では普通なのでしょうが、私達からしたら本当に同一人物が描いたものなのかと驚いてしまいます。
この作品を描いた画家・今井俊満(いまいとしみつ)とは・・・
「アンフォルメル」という言葉はご存じでしょうか。私はこの仕事をするまでは正直知りませんでした。第二次世界大戦後の1950年代、戦争の残酷さ、人々の悲しみや怒りなどを表現した抽象絵画作品を端に発した「非定形の芸術」。力強く描かれたそのひとつひとつの線が交じり合いひとつの感情になっているような表現は圧巻です。今井俊満はフランスで起ったアンフォルメル運動に参加した画家のひとりでした。
1980年代に入ると今井は抽象画から具象画へと作風を一変させます。それが1枚目(左手)の写真になります。琳派を思わせる雅さ。金地に梅の紅。具象画の代表作が「花鳥風月」シリーズ。「アンフォルメル」の心を持った今井独自の作品は、日本人にとって特別な感性を呼び起こす芸術へと発展していったのではないでしょうか。
その後、晩年になると今井は「コギャル」をテーマにした作品に没頭します。それが二枚目(右手)の写真になります。今井にとって彼女たちは日本文化のアイコンのひとつでした。コギャルのファッション、メイク、生き方。時代の流れとともに誰もが抱く若者への違和感。シニカルに、時に愛情を持って描かれていきました。彼女達が発するエネルギーは今井にとって面白い対象であったことに違いはありません。
2002年、今井俊満はこの世を去りました。
しかし、今井イズムは彼の作品によって現在そして未来も受け継がれていくのだと信じています。