菅木志雄~答えはシンプルに~
菅木志雄について
皆さんは現代アートについてどう思いますか?
難しい・・・わからない・・・ちょっと難解で近寄りがたい存在・・・といったところでしょうか。
何を隠そう、私も鑑定士のお仕事に就くまでそんな感覚で現代アートを捉えていた時期もありました。
芸術性の強い作品は一見、何を表現しているのか分かり難いことがありますよね。
しかしその分、多種多様に渡る「見え方」がその作品の価値をまたひとつ上げることにもなります。
今回は現代アートを代表するアーティストのひとり、菅木志雄についてご紹介したいと思います。
室内または屋外などにオブジェなどを置いて、作者がその空間を作り出し、受け手にそれを体験させる“インスタレーション”というアートがあります。
菅木志雄は日本人として初めてその芸術を製作した、と自負しています。
1944年岩手県に生まれた菅木志雄は、大学時代に出会った二人の作家に大きな影響を受けました。
ひとりは斎藤義重、もうひとりは高松次郎です。
現代美術の先駆者である斎藤義重からは、構築的なアプローチからの脱却を。
概念を表現した芸術といった“コンセプチュアル・アート”に大きな影響を与えた高松次郎からは、今後の菅木志雄にとっての原点となっていく新たなアプローチ法を、それぞれから学びました。
そして60年代末から70年代中期にかけ、菅木志雄は現代アートの大きな動きとなった通称「もの派」の中心人物となり、多くの作品を世に送り出したのでした。
「もの派」とは、土、石、木、鉄などの素材にあまり手を加えずに展示した作品を手掛けた作者たちの総称です。ちなみに、誰がそう名付けたかは明らかになってはいません。
我々の周りに溢れる「もの」を様々な「行為」によって、その場の空気さえもその一部として取り込み、「放置」することで作品を完成させる・・・。
時には、画廊の中では収まりきらず、外へと飛び出して「イベント」と呼ぶパフォーマンスを行い表現する・・・。
そうやって菅木志雄の作品は、自由自在にどんな場所にも存在することができ、それでいながらある特定の場所のみにしか存在しえなかったのでした。
「もの」があり、「人」がいて、そこに「行為」がある。
そんなシンプルなところにアートはあると、菅木志雄は言います。
つまり、我々の周りに溢れるどんな景色や瞬間も行為も、「作品」として見ることが出来るのではないでしょうか。
菅木志雄の作品を見ると、私はそんな思いが過ぎるのでした。
芸術性の強い難解に見えるモノこそが、実は単純なことから生まれているのかもしれません。
もっと直感で感じたまま、素直な感情それこそが「作品」の一部なのかもしれません。
菅木志雄の作品に出会った時、あなたはどんな感情を抱くのでしょうか・・・。
さいごに