吉田博~木版画の魔術師~
吉田博について
明治から昭和にかけて風景画家として活躍した吉田博。
彼の人生は自然とともにあるものでした。
そんな吉田博が描く絵は、その生き様を反射するかのように自然の中にいるような、自然と一体になっていると感じられるようなものばかりです。
今回は、自然や日常を切り取り木版画にした吉田博について書きたいと思います。
木版画家への道
吉田博といえば、木版画のイメージが強い印象はありますが、吉田博が木版画の制作を始めたのは大正9年、44歳のときのことです。
幼き日に京都でみた三宅克行の水彩画に心を打たれ、当初は洋画家への道を歩み始めます。
10代の頃は丸山晩霞とともに山を登り峠を越え、まるで武者修行のような生活を2か月ほど行っていたり、さらには20代になると、片道切符片手に海外へと飛び込んでいきます。
当時の日本では海外に行くこと自体が稀な世の中。
言葉もわからないような状態の中、身振り手振りで吉田博は自身の絵を売り込むことに成功したのです。
これを機に海外で高い評価を受けるきっかけとなったのでした。
その後、海外から日本へ戻ってきた吉田博は変わらず山を愛し、それらを表現する事を追求していきます。
帰国後の30~50代は山に足しげく通い、自然の中での絵を描き続けています。
そして、大正9年吉田博が44歳のときに今まで手を出していなかった木版画に挑戦し、そこで新境地を開いていくのでした。
斬新な版画技法
吉田博は新しい版画を生み出すために、様々な技法を用いました。
時に30以上もの版を使ったり、時に一つの版で何色もの色を刷ったりと、多様な技法・技術を持った作家でした。その多様な技法によって吉田博にしか出せない世界を表現してきました。
同じ構図で多色刷りすることによって、時間の流れや気候の変化すらも表現したのではないかと思います。
また、個人的な意見ですが、光と影の表現、水の表現は吉田博の真骨頂だと私は思います。
また、吉田博は山や水といった自然風景の表現力に非常に長けていたと言われています。
木版画といえば日本的な風景というイメージがありますが、吉田博の作品では海外の風景を切り取った作品も数多くあります。アメリカ、ヨーロッパ、アジア・・・また山の風景から河川、街並み・・・などあらゆる場面を作品として残しています。
海外の風景を日本の伝統的な木版で表現することによって、とても個性的な独創的な作品のように感じます。
どれも素晴らしい作品ばかりですが、やはり彼の独特の技術を持って表現された「富士」には圧倒されます。
さいごに
リトグラフ、シルクスクリーンなどが主流のいま、木版画という日本古来の技法が見直され、人気が再燃しています。
吉田博だけに関わらず、木版画をお持ちの方はぜひ一度八光堂にお問い合わせ下さい。
皆様からのお問い合わせお待ちしております。