小さな芸術品・目貫
目貫について
八光堂大阪本店鑑定士の北村です。
都内では開花宣言がされ、大阪でも春がすぐそこまできていますね。
まだまだ朝晩は冷え込みますが、体調崩されないようにしてくださいね。
さて、今回は日本刀の装具のひとつにスポットライトを当てたいと思います。
迫力と美しさを兼ね備え、現代でも根強い人気のある日本刀。
美しい刀身以外にも、各分野の職人技が光る様々な刀装具が見る人を惹きつけます。
“目貫”もそんな刀装具のひとつ。
ほんの数センチの小さな部品ですが、小さいからと侮るなかれ。
その数センチの中には、刀の持ち主と職人のこだわりがこれでもかと詰まっているのです。
目貫とは
目貫とは、そもそもは柄に刀身を固定するための物です。
柄と刀身の表裏を貫いていたので“目貫”と呼ばれていました。
それが時代とともに固定する為に刀身を貫いていた棒の部分と、柄の表面に出ている鋲頭部分とが別れていったのです。
元々柄の一番目立つところに据えられていた為に装飾を施されることの多かった鋲頭部分は、固定する役割から解放されることで益々装飾性を増していきました。
芸術品としての評価
そうして立派な芸術品となっていった目貫。
有名な金工師以外にも、七宝や木彫など各分野の職人たちが競って自分の技術を凝縮した作品を発表していきました。
家紋や龍、虎、獅子などのモチーフの他に、ナマズや茄子、ハエ、兎、中にはカブトムシなんてユニークな物も存在します。
そのどれもが見事な出来栄えで、小さいながらも龍や獅子は勇ましく、兎や雀などは可愛らしく、ムカデやハエにはあまりのリアルさにゲゲッとなりながらもついつい見入ってしまいます。
日常に根付く目貫
目貫はお守りのような扱いもされていて、“強さ”を表していたり縁起の良いモチーフが人気でした。江戸時代には大地震の後にナマズの目貫が流行ったりもしたそうです。
数百年前の武士たちも、自慢の刀にどの目貫をつけようか、あれでもないこれでもないとコーディネートに迷っていたのかもしれませんね。
刀の刀身や拵えと違い、小さく場所も取らないその気軽さとバリエーションの豊富さから目貫には今日でも多くのコレクターが存在します。
お祖父ちゃんがコレクターで、実家の机の引き出しを開けたら目貫がたくさん入っていた!なんてこともあるかもしれません。
さいごに