魅惑の美人画
美人画について
八光堂博多本店の地蔵堂です。
皆さん、“美人”とはどういう人を想像されますか?
目鼻立ちがくっきりした女性?
きめこまやかな肌の女性?
流れるような美しい髪の女性・・・?
考えるとこれほどどの時代にもどの国にも存在する題材はないのではないでしょうか。
いつの時代も人々を魅了する女性画について、今回はお話いたします。
日本の美意識
日本は気候風土から大きな軒が発達してきたことにより、日常的に影を含んだ生活を基本としてきたのです。言うなれば、陰から生まれた美意識。
そして、相反するように西洋の建築は気候風土から光を多く取り入れるために軒は小さく、光を含んだ性質を持ちます。まさに光から生まれた美意識を生み出しました。
それらの生活環境は、そこに住まう人々の美意識に大きく影響を与えたのです。
日本の古美術品にも見られるように漆器や金工品、屏風、掛軸は光の下に鑑賞した場合と、薄暗く、弱い蝋燭などの光源のもとで鑑賞する場合で表情が大きく変わります。
揺らめく弱い火の明かり・・・影の中から現れる美術品。
妖しくも神秘的で、深みのあるその美しさは西洋美術には見られない異質な性質を感じさせます。
私共八光堂鑑定士も、出張の際に古い日本家屋から出てきた美術品を拝見するときに、薄明かりの中でその美しさにはっとさせられます。
この陰の美は女性に関しても共通しています。
日本人女性は影の中でこそその美しさが現れ、日本人女性の肌の白さは西洋女性の白さと違い、白の中に影を持ち合わせていると論じているのです。
表現豊かな女性の“美”
近年では、日本の美意識に加え作家個人の特性を融合させた作品が増えてきているように感じます。
大正時代は竹久夢二などが有名ですね。浮世絵的な様式に大正ならではの雰囲気は新たな美人像を確立しています。
洋画ですと、藤田嗣治は、パリで西洋にはない日本的な陰を含んだ独自の白い肌を作り上げ、つややかな輪郭線は日本画の細い筆で描かれました。
私個人的に好きな現代画家の松井冬子さんの作品は、古典的日本画技法を用いて、女性画に痛み、恐怖、狂気など美しさとは相反する要素を含ませています。人間の痛覚による痛みを超えた死と生の間は不気味にも美しい表情を見せています。
是非一度、様々な時代の様々な国々の女性画を見比べてみてはいかがでしょうか。
さいごに