吉田美統~奥行きある金彩・釉裏金彩~
吉田美統について
石川県で生産される九谷焼――。
様々な色絵が施された磁器を前にした誰もが目も心も奪われてしまうのではないでしょうか。
そして、石川県金沢市では、全国における95%以上の金箔が生産されています。
この「九谷焼」と「金箔」の融合である技法があります。
厚さの異なる金箔で模様を象り、透明度の高い釉薬をかける技法――それが「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」です。
金箔を焼き付けた後に施す透明な釉薬により金本来の色を際立たせているのが特徴で、閉じ込められた金色は色褪せることなく金本来の色を永続することができる技法です。
この釉裏金彩という技法は、石川県ならではの技法となります。
今回、この釉裏金彩の技法で重要無形文化財(人間国宝)の指定を受けている吉田美統(よしだみのり)さんを紹介したいと思います。
釉裏金彩との出会い
吉田美統が陶芸の修行を始めたのは戦後まもなくの頃。
戦時中は物価上昇を防ぐため公定価格が制定されており、職人は国から許可が出たものだけを作っていたという背景から、模倣品を作るのではなく新しいことを切り開きたいという精神が根底にあったようです。
そんな中、人間国宝・加藤土師萌(かとうはじめ)の遺作展で「釉裏金彩」に出会い、衝撃を受け、誰も手がけたことのない花や蝶などをモチーフとした具象表現を追究するようになりました。
使用する金箔は極薄のため、裁断時には静電気により金箔が刃にくっついてしまうなど扱いには大変難儀したそうです。そこでいろいろなハサミを試す中、ついに医療用のハサミに辿りつくのでした。
こうして手探りで模索し、作品を初出しするまでに約4年もの月日を費やしました。
釉裏金彩の美しさ
吉田美統の釉裏金彩は金箔と釉薬を交互に窯焚きし、金箔を丁寧に貼って模様を作っていく緻密な作業で、工程も然ることながら時間も要するため大量生産はできません。
背景はシンプルですが、厚箔と薄箔を場面ごとに見事に使い分け、奥行きある複雑な表現を可能にしています。
また、背景に淡い色を用いる事で、金を使っているのに嫌みのない、それでいて温かみのある作品になっています。
吉田美統が作り出す釉裏金彩の格のある美しさは、国内外から高く評価されています
さいごに