松井康成の表現力
松井康成について
現代陶器をお好きな方であれば、松井康成の作品を一度は手に取ったことがあるかも知れません。
常に新しい装飾表現・練上(ねりあげ)という技法で、表現の可能性を切り開きました。
そんな松井康成について、お話させていただきます。
1927年5月20日長野県北佐久郡生まれ、本名は宮野美明(みめい)といいます。
30代のころ、茨城県笠間市にある月崇寺(げっそうじ)第23世住職に就任。
月宗寺内に窯を築いたのち、1967年に田村耕一に師事。
1993年「練上手」で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。
練上手の美しさ
特徴は、作品を外側からも内側からも同じ柄が見えるところにあるでしょう。
「練上手」とは生地装飾技法のひとつで、元々は中国・宋代磁州窯から流れをくむ技法です。
2色以上の異なる土を何層にも組み合わせて、文字通り練上げて創り上げていきます。
しかし、土は種類によって焼成温度が違うのです。
そのまま焼いてしまうと伸縮率の違いから、ひび割れがおきてしまいます。
そのため、あまり大きな作品を作ることができませんでした。
そこで松井康成は研究を重ね、基本となる土は同じものを使用し、少量でも鮮やかに発色する呈色剤を混ぜる「同根異色」(同じ種類の土に黄・茶・赤などの色を混ぜる)を行なうことにより、大きな作品・鮮やかな色彩表現が可能となりました。
嘯裂と玻璃光
「嘯裂(しょうれつ)」は器の表面に櫛や刷毛で傷つけ、ろくろで厚さのある筒を形成したのち外側の表面を僅かに乾かします。
内側からのみ圧力をかけて膨らませ、表面に亀裂を出す技法です。
触ってみると、表面がザラザラゴツゴツしています。
まるで荒々しい岩のような、土本来を感じ取ることのできる作品といえるでしょうか。
「玻璃光(はりこう)」は、晩年の作品です。
焼成後にダイヤモンドの粉末で表面を研磨することにより、しっとりと光沢を放ちます。
嘯裂とはまた違った味わい深い表現となります。
この他にも、堆瓷(ついじ)、翠瓷(すいじ)、破調(はちょう)、風白地(ふうはくじ)、晴白(せいはく)など独自の装飾スタイルを確立しました。
さいごに