刀装金工の世界

皆さんは金製品、銀製品という言葉を聞いてどんなものを思い浮かべますでしょうか。西洋アンティークの食器、銀瓶、金瓶、様々なものがあります。江戸時代以降、刀を装飾するため鍔などに金や銀で細工がされていました。後藤一派をはじめ、多くの金工師が存在していたと言われています。そのような金工を刀装金工と呼びます。今回はそんな「刀装金工」の世界を覗いてみたいと思います。

主に鍔や小柄、笄、目貫、柄頭、縁金などに細工されている。そもそも刀装具とは刀を保護し使いやすくするためのものですが。実はそれ以外の面で大きな役割を果たしていました。
一言でいえば権威の象徴と考えて良いのではないかと思います。刀装具は刀を飾るものでもあったため、武士達は分かりやすく身分や権力を示すものとしてそこにこだわっていたのです。室町時代から刀装具への金工は見られますが、特に江戸時代以降は大名たちがこぞって煌びやかな刀装具によって自身の刀を飾ったと言われています。

刀装金工の祖とされているのは、室町時代に出現した後藤裕乗と言われています。
後藤家は室町以降、足利や豊臣、徳川といった将軍に仕え、数多くの優れた彫金作品を残しました。幕末続いたいわば刀装金工のトップに君臨していた一派です。
室町時代にはじまり、徐々に彫金、刀装金工が浸透していき、江戸時代に入ると馴染みのあるものになり、そうなると後藤家だけでなく、様々な金工師、彫金師が生まれました。一般に浸透すると徐々に芸術品として認められるようになり、刀よりも刀装具が重宝されていたのが江戸時代だと言われています。刀装金工は明治時代に入ると、刀から銃へと武器が変わっていくため、あまり重宝されなくなってしまいます。

現代では実践で刀を使う武士などはいないため、美術品として楽しむものにはなりますが、まだまだ彫金の名作と言われるものが各地に眠っているのではないかと思います。「後藤」の名前が刻まれていたら、それはもしかしたら名門後藤一派の残した作品かもしれません。気になったものがあればぜひ一度八光堂までお問合せ下さい。