中国由来の日本伝統工芸・鎌倉彫
鎌倉彫とは
若い方も祖父母宅などで見たことがあるかもしれませんね。神奈川県鎌倉市特産の伝統工芸品になります。種類としては漆器のひとつですので、一般的な漆器製品を思い浮かべると良いかと思います。
ここで疑問に思っている方もおられるかと思いますが、「堆朱(ついしゅ)」製品と似ていない?どう違うのかな?と気になりますよね。もちろん由来があります。
まず堆朱は中国の宋の頃に伝えられた美術工芸品で、香合や盆など仏具の種類として伝えられたそうです。漆を幾度となく塗り重ね、さらに細かい彫刻を施す・・・という膨大な時間と労力がかかる大変高価なものです。そこで仏師たちは彫った木下地に漆を塗ることで簡略化を図り、仏具を作り始めたのが鎌倉彫の始まりと言われています。
鎌倉彫と呼ばれるのは、室町時代の公家の日記に「鎌倉物」と記述があり、以前は「鎌倉ゆかりの木彫彩漆」と特に明確な呼び名は無かったようです。
製作方法
上記で簡略化しているとは言いましたが、そう簡単に出来る物ではありません。木地を作るだけで、“乾燥”→“粗挽き”→“仕上げ挽き”と一年はかかります。
出来上がった木地に彫りと漆塗りを施していくわけですが、まず和紙に図案を描き、木地に転写。次に“たち込み”→“際取り”→“刀痕”と彫りだけで3工程を踏み、ようやく漆塗りに入ります。
漆は“木地固め”→“蒔下地”→“中塗り”→“上塗り”→“乾口とり・マコモ蒔き”→“摺漆”と6工程となります。30㎝の盆を作る場合、彫りと漆塗りだけで30日~45日ほどを労します。
さいごに
これだけの製作期間を費やす鎌倉彫は、明治期には普段使いとして一般に出回っていたことを思うと・・・すごいですね。
工芸品ではございますが、これだけの技術・文化をこれからの世代の私たちが引き継いでいけるように、その橋渡しとしてもご協力出来ればと思います。
ぜひ、気になるお品物をお持ちの方はお気軽に古美術八光堂にお問い合わせ下さい。