【コラム】掛軸と山
登山のススメ
先日お休みをいただき、西日本最高峰といわれる四国の石鎚山(いしづちさん)へ登山をしてまいりました。
標高は1982m。
いくつもの川を渡り、ひたすらに森の中を歩いていくと、頂上付近は岩肌ののぞく切り立った北壁。その周りには美しい緑の木々が見えました。
往復13時間、かなりきつい道のりですが、ロープウェイがあるので皆様も一度訪れてみてはいかがでしょうか?
紅葉の季節はそれは見事な風景で、その景色はなかなか見る事のできない大変美しいものですよ。
掛軸と山の切っても切れない関係
今回私が登頂したこの石鎚山は、古くから山岳信仰の山とされ、空海などが修行で訪れたとされています。その険しく美しい景色から人々は、山に神が宿るとして古くから信仰の対象としてきたのです。
そうした信仰心は、多くの美術品を生み出していきました。
長い前フリとなりましたが、掛軸と山についてお話いたします。
掛軸でも多くモチーフとされている山水ですが、山水画が描かれ始めたのは中国。山は神が宿る神聖な場所として描き始めたのが始まりとされています。その為、山は中国では古くから主流のモチーフとされ、現代に至るまで多くの絵師が様々な技法で描いてきたのです。
日本での山水画文化
その山水画の文化は、日本にも掛軸の文化とともに入ってきます。
現在でも私共が拝見させていただく多くの掛軸に山水画は描かれています。
個人的な印象として、八光堂博多店のある九州は地域柄かそれはもうたくさんの掛軸が出てきます。
なぜ・・・?
それは、中国との貿易がよくなされていたからです。
その為、九州では多くの掛軸が普及し、その中国画の影響を多分に受けた掛軸が多く出回ったといった背景があります。
特に見られるのは南画です。田能村竹田や吉嗣拝山などは九州では特に有名ですね。そして、富岡鉄斎などもその1人です。
南画をざっくりと説明すると、そのルーツは中国の南宋画から来ています。
宋の時代、中国絵画の系統は北宋画と南宋画の大きく二つに分類されました。北宋画は宮廷画家の職業画を指し、南宋画は文人が余技で描いていた絵を指します。
南画のその画風は、たいへんおおらかで哲学的、北宋画には無い深みや味わいが感じられます。そして、限られた掛軸の枠からはみ出すようなその存在感はとても濃密なものです。
是非一度、じっくりと掛軸の山の描かれ方を見てみてはいかがでしょうか?
さいごに