【京都店:絵画買取】有元利夫 リトグラフ
夭折の画家・有元利夫
疎開先の岡山県に生まれた有元利夫は、東京都台東区谷中で育ちました。
幼い頃から絵画に関心を持ち、5回の受験を経て、東京藝術大学へ入学します。卒業制作は大学の買い上げ(※成績優秀者の作品を今後の資料として大学が買い取る制度)となり、また1977年には第21回安井賞展選考委員会賞、1981年には第24回安井賞を受賞しています。
このように将来を嘱望された画家でしたが、38歳という若さで亡くなりました。
有元の表現する世界観
有元利夫はイタリアルネサンス前期のピエロ・デッラ・フランチェスカやジョットの宗教画、さらには仏画などの日本の古典絵画から多大な影響を受けています。
宗教画の象徴的で、やや素朴な画面構成から影響を受けていることはもちろん、これらの時代を経た古色も彼は表現しようとしています。
作品の画面にはあえて傷が付けられ、初期の額縁には虫食いの跡まで表現されています。これらの作品には風化した古美術の風合いが見てとれ、作家の美意識の片鱗を窺うことができます。
また、有元は仏画とフレスコ画の共通性を見出し、岩絵具を用いることでフレスコ画に通じる表現を獲得して独自の世界を創り上げました。
空から射し込む光、長い梯子、大きな緞帳、舞い散る花々、これらのモチーフを有元利夫は繰り返し描いています。
自身の作品について多くを語らなかった作家ですが、これらの作品は確かに天上世界を仄めかしています。特定の宗教に言及しないことで、かえって人間の原始的で純粋な信仰心を覚える作品世界が展開されていると感じるのは私だけでしょうか。
さいごに