【コラム】落語で覚える骨董品
落語と骨董品
さて、我々鑑定士が普段目にする骨董品、絵画、掛軸、お茶道具、陶器に西洋美術品…など、数えあげれば枚挙に暇がありません。
また、そのジャンルの数だけ沢山の作家さんがいらっしゃり、お品物自体も何万点とあるため、覚えるのは一苦労です。
情報化社会といわれる現代でもこの状況ですから、情報手段が限られていた江戸時代などではさらに大変だったと思われます。
現代ですと、テレビ番組などで骨董品、古美術品が鑑定される機会が多くみられるようになり、以前と比較してみれば身近になってきたのかなと思われますが、それでは江戸時代には現代のように骨董品、古美術品が登場するメディアはなかったのでしょうか?
答えは、あります。
そのメディアとは、落語です。
落語には様々な骨董品が紹介されており、それは茶碗や刀など、様々な品物に渡ります。
例えば、落語に「猫の皿」という題目があります。
猫の皿
ある所に、性質の悪い美術商が休憩がてら茶屋へ立ち寄りました。
茶屋は猫を飼っており、何気なく美術商が見ているとエサ皿が何と柿右衛門の名物。
『どうやら店主、柿右衛門を猫のエサ皿にするほど目利きに疎いらしい。「猫が気に入った。どうせならいつも使っている皿の方が猫も安心するだろう」とか言って上手く手に入れてやれ。』と、算段を立てる美術商。
店主に懇願し、3両(※現代の価格でいうと、大まかに30~40万円くらい)で猫を譲り受けました。
ここまでくればもう安心と美術商、
「ついでに皿も猫が普段使いしているそれが安心いいだろう。それもくれ」と言って、皿に手を伸ばそうとしますが、
「猫は譲りますが、その皿は柿右衛門の名物なので、こっちの皿にしてください」と店主がピシャリ。
驚いた美術商。店主に柿右衛門と分かっていながら、何故エサ皿なんかに使っているんだ?と尋ねます。
すると店主、「これをエサ皿にしていると、たまに猫が3両で売れるんです。」
こんなちょっとしたお話にも、柿右衛門が出てきます。
ちなみに、この柿右衛門のお皿は演者によっては絵高麗の梅鉢となります。
他にも様々な噺に骨董品は出てきますので、意外と江戸時代の人々には骨董品は身近な物だったのかもしれませんね。
さいごに