【大阪本店:陶器買取】徳田八十吉 花生
引き継がれる伝統
技法に関する文献や資料が少なく、数多くの謎に包まれる古九谷焼の技法――。初代徳田八十吉は、そんな古九谷の五彩(赤・黄・緑・紺・紫)の再現に人生を費やし、再現する事に成功した人物です。無形文化財にも指定されたその技術は二代目へと引き継がれ、やがて九谷焼は近代的な芸術作品として確立するようになります。
今回の主役、三代目はその二代目の長男でした。世間一般の芸術家のイメージとは裏腹に、多趣味なことで有名だったそうで、釣りや将棋、社交ダンスなどの趣味にも打ち込み、特に釣りはトローリング(カジキマグロを釣るスポーツ)をするために海外へも足を運んだそうです。
そんな三代目の工房には彼が自身で釣り上げたカジキマグロが飾られていたとか。頑固一徹というよりは遊び心が感じられますね。その遊び心が「耀彩」を生み出したのではないでしょうか。
唯一無二の技法「耀彩」
三代目は九谷焼の陶工として初代と比較され続け、苦しみます。必然ではあったものの、彼は「文化踏襲」と「創作」の間で苛まれ続けます。
そんな中、初代の友人である洋画家の中村研一氏から「自分の作りたい九谷を作れ」と強い後押しを受けます。自分だけの九谷創作へ決意を固めた三代目は、古九谷に描かれた花鳥風月を一新し、絵付けには西洋美術に見られる抽象表現を取り入れます。また、九谷焼最大の特徴である五色を基調とした色付けを四色に絞り込み、初代の上絵釉薬の調合方法を解読、アレンジし、これにより色の境目が溶け合ったグラデーション絵付けを生み出すことに成功します。これが「彩釉」と呼ばれる三代目の特徴技法の一つです。
更に、絵付け後の焼き上げ温度を今まで以上に高温で仕上げることで絵付けの中にガラスのように輝く特殊効果を閉じ込めました。きらめくグラデーションが彩られ、近代に生まれ変わった九谷焼――。これこそ三代目が生み出した「耀彩」でした。
光り輝く人生で
九谷特有の重厚感を取り払った近代的で輝きある作品「耀彩」は、今も国内外問わず高く評価されています。
「新しいことではなく、好きなことをやれ。」
「耀彩」には、多趣味で遊び好きの彼のそういった人生観が詰め込まれているように見られます。
そして続く四代目がこの「耀彩」の技法と意思を三代目より受け継ぎ、現在も活動中です。三代目が作品には見られなかった技術も取り入れ、徳田八十吉の系譜を脈々と受け継いでいっています。
さいごに