【銀座本店:絵画買取】上村淳之 リトグラフ
日本画界のサラブレッド
偉大な日本画家である上村松園と上村松篁を祖母と父にもち、いわば「日本画界のサラブレッド」として日本画界のみならず世間からも大きなプレッシャーを感じてていたのではないかと思いきや、本人曰くプレッシャーは全くなかったのだそう。
父・松篁のあとに続き、花鳥画というジャンルを選んだのも、小さな頃から鳥やウサギなどの動物たちと遊び、親しんできたからというなんともシンプルな理由からだそう。
確かに作品を拝見するたびに生き生きとした鳥たちが存在感をもって描かれており、そこには「松篁の息子として是くあらねば」というような重圧は感じられません。ただただ「鳥を描きたい」という思いのみが伝わってきます。
ちなみに奈良県のご自宅では1000羽を超える鳥たちを自然に近い形で飼っているそう。
繊細な作品とは裏腹に、意外と豪胆な方なのかもしれませんね。
一日本画家としての上村淳之
さて、上村家としてのプレッシャーは感じなかった上村淳之ですが、一人の日本画家としての試行錯誤はやはりあったようです。
今でこそ存在感のある花鳥と余白の美が魅力的な作品を多く描かれていますが、若き日の作品は今からは少し想像し難い作風でした。
重い色合いに、遠目で見ると油絵にも見えるタッチで、所謂「花鳥画」の雰囲気とは趣が違います。
これは想像でしかありませんが、鳥や自然、日本画という伝統にどのように向き合っていこうか、まだまだ思い悩んでいたのではないでしょうか。
個人的には、当時の作風も好きですが…。
ただ、ご自宅の話を聞くだけで、鳥たちに対して単なるモチーフとしてだけではない愛情があることや、鳥たちを観察することへの真面目さをひしひしと感じます。
その情熱があったからこそ、プレッシャーをもろともせず、偉大な祖母・父の影に隠れてしまうこともなく、今日まで素晴らしい作品を発表し続ける日本画家「上村淳之」ができあがったのでしょう。
さいごに