【大阪本店:現代アート買取】中川幸夫 書
白菜で脱退
前衛華道家?
華道から連想される伝統と前衛は相反するイメージですね。
中川幸夫の作品はまさに想像と常識を遙かに飛び越える型破りな物でした。
そして、その作品は斬新なだけでは無く、美しさと恐ろしさを兼ね備えた物でした。
1918年に香川県に生まれた中川は、叔父と叔母の影響で池坊にて華道を始めます。
しかし、33歳の時に白菜を丸ごと生けた作品(!?)で家元と揉め、池坊を脱退します。
まあ、それは揉めますよね。
その後はどの流派にも属せず、弟子も取らずに人生の全てを生け花に捧げました。
そう聞くと人付き合いをせず孤高なイメージがありますが、実際は様々な分野の芸術家と交流があったようです。舞踏家の大野一雄とは「花狂」というイベントも行いました。
これは河川敷にヘリコプターから20万本のチューリップの花びらを撒き、観客も含めた舞台が花に染まっていく中、95歳の大野が踊るという大作でした。
死をも表現する生け花
「花坊主」という生け花があります。これは900本の真っ赤なカーネーションをガラスの花瓶に入れ、白い和紙の上に逆さに置いた作品です。
花びらから流れ出した赤い液体は血のように和紙を染めていき、美しさと同時に恐ろしさをも感じさせます。
中川はこれ以外にも衝撃的な作品を発表しています。
枯れ果てて花びらが落ち、雄しべと雌しべだけになったチューリップを生けたり、4000本のチューリップを腐らせ挽肉のように固めた作品などです。
一般的な生け花とは文字通り、花を生かし、花の美しさを鑑賞するものです。
しかし、中川は生け花の世界に“死”の概念を持ち込み、生の部分をより照らし出すことに成功しました。
生誕百年
昨年2018年は中川幸夫の生誕百年で、ドキュメンタリー映画「華 いのち 中川幸夫」の上映も行われました。この機会に中川幸夫の作品を是非拝見してみてください。彼の創作衝動は生け花だけに留まらず、ガラス、絵、書、写真と多岐に渡り残しています。山田洋次監督の映画「たそがれ清兵衛」の題字も彼の作品です。
もしかしたら、意外なところで彼の作品に触れているのかもしれませんね。
さいごに