interview:漆芸作家・工房ぬり松、さんvol.1
第3回目にご紹介する作家さんは、福岡市中央区六本松にて工房を構える漆芸作家・松生順さん、松生まさよさんにインタビューを行いました!
大濠公園に程近い場所で「工房ぬり松、」を営まれているお二方。
福岡中心街とは思えない昭和の街並みを残した閑静な場所にある元九州大学の下宿場を改装された工房で活動されています。
お二方の人柄を表すような素敵な工房に、初めて来た場所にも関わらず不思議と実家のような安心感と居心地の良さを覚えました。
漆芸の進化と発展、そして普及に勤しむ「工房ぬり松、」の魅力を少しでもお伝えできればと思います。
「工房ぬり松、」では漆芸/金継教室や材料販売など、漆に関わる様々な催しなども行われています。
詳しくはホームページをご覧ください。
松生 順 Matsuoi Jun
1967年 北海道生まれ
1995年 東京藝術大学美術学部工芸家漆芸専攻卒業
2018年 第72回福岡県美術展「朝日新聞社賞」
九州産業大学芸術学部 非常勤講師、岩田屋コミュニティカレッジ講師
松生 まさよ Matsuoi Masayo
1969年 東京生まれ
1994年 東京藝術大学美術学部工芸家漆芸専攻卒業
1998年 第2回千總きものデザインコンペ優秀賞
岩田屋コミュニティカレッジ講師
Official HP:https://nurimatsu.jp/
――活動を開始されてからのお話をお聞かせください。
工房ぬり松、さん(以後敬称略):漆芸作家として活動を始めたのが平成12年からですね。
今の工房(六本松)に引っ越してきたのは去年(平成30年)なんです。
この辺りは九州大学の下宿屋が多かったそうで、この工房も元々はそうだったんですよ。
部屋も当時のまま残っていたりするんですよ(笑)
私達は2部屋を借りて、壁を抜いて工房と教室として使っています。
――制作スペースとしてはあまり広くないように感じるのですが…。
工房ぬり松、:例えばお椀を一度に100個以上造るような大量生産であれば、このスペースではとても狭いのですが、私達はどちらかと言うと1点物が中心で多くても同じ物は10点くらいしか造りません。
それであればローテーションでやっていけば今のスペースで問題ないですね。
実際に使っている室(むろ。保湿しながら乾かすための木製の棚)がこちらなんですけど、漆は温度が25度以上で湿度60%以上でないと乾きが悪くなるんですよ。
工房ぬり松、:春先から秋口であれば福岡の気候ならそのままで乾くんですけど、冬になると温度・湿度をコントロールしながら制作してます。
この季節は気を使いますね。
――お二人共に東京藝術大学在学中に漆芸を専攻されていたそうですが、きっかけはあるのですか?
工房ぬり松、:元々はデザイナー志望で藝大を目指しましたが、色々と勉強していくうちに工芸が面白そうだなと。デザイナーというよりは、自分の手で作品を造った方が良いのではと思うようになりました。
東京藝術大学は1年~2年の間に6講座(彫金、鍛金、鋳金、漆芸、陶芸、染織)を3週間づつ体験することが必須なんですね。
その中から3年に上がる時に何を専攻するか選ぶんですよ。
その体験中に漆を初めて触ったんですが、とてもビックリしたんです。
液体なのに立体も造れたり、今までの素材にない感覚を覚えたんですね。
どちらかと言うと誰かに影響されたりではなく、素材の面白さから入っていきました。
漆芸で新しいことが出来るかなと思いました。
なので、今までの漆塗りの伝統を踏襲してというよりは、漆を使って新しい何か変なことも出来るんじゃないかなって。
――漆を専攻される生徒さんは多かったのですか?
工房ぬり松、:人気の年もあれば、そうではない年もありますね。
少ないときは数人しかいない時もありましたね。
私の時は焼物が人気でした。
vol.2へ続く…