【京都店:絵画買取】西村龍介 油彩
カフカの見た城
(未完ではありますが)Kは物語の最後まで城に入るどころか、近づく事すらできず、その社会で常識となっている様々なルール、主観に翻弄されながら、物語は運ばれていきます。
その社会の象徴として冒頭から提示されているのが、近づこうとしても近づけない城の存在です。
この掴んでも手ごたえのない、たった今自身が選択した事実を周囲から軽くあしらわれてしまうような感覚は、日常でも多々起こりうる現象です。
そのためここでは、城といっても城自体ではなく、城から根を下ろしている慣習、風俗、概念を包括した存在として焦点を絞ってみた方が良さそうです。
城から見る記号
ジル・ドゥルーズの思想によると、我々の現行の価値観は端的に言えば、資本主義という概念の領土に支配されている状況とのことです。
普段の生活では全くの常識、価値観の土台といっても差し支えありませんが、考えてみると我々の生活は資本主義を基盤とした、ドゥルーズ的に言えば「欲望する機械」を動かし続けるための社会と捉えてもいいでしょう。
また、ロラン・バルトの『表徴の帝国』によれば、日本は表徴の国(エクリチュールの国)であり、日本から発したものなどに意味をさせず、端的に、記号として成り立たせている物が多々あるそうです。(例えば、歌舞伎の女形は女性のコピーを意味せず、女性としての表徴(特徴)を表した存在)
この表徴こそ、Kが翻弄された、その社会の通念、常識が端的に表れており、ドゥルーズの描いた領土に通じるものといえるかもしれません。
さいごに
今回ご案内する古城の画家、西村龍介の描く城を見ると、私にその感覚を思い起こさせます。
日本画由来の落ち着きと、油彩の点描。
表徴としての城と、城に連なる領土。
近づいているようで近くない、絶妙な距離。
描いている城の国はカフカとは違いますが、表徴の帝国出身の彼だからこそ、西村の見た城として、描き切れたのかもしれません。
西村龍介の作品をお持ちでいらっしゃいましたら、是非古美術八光堂へご依頼ください。
しっかりと拝見させて頂き、次のお客様へお繋ぎ致します。