【広島店:鋳金・彫金買取】秦蔵六 花器
緻密で地道な鋳金技術
鋳金の作品ができるまでの工程は、大まかに次の3段階に分かれています。
- 鋳金の作品ができるまでの工程は、大まかに次の3段階に分かれています。
- 鋳込み…溶かした金属を鋳型に流し込む
- 研磨…冷やして鋳型から取り出した作品を、表面を磨いて整える
一見簡単な作業のように思えますが、実際はとんでもなく複雑で手間がかかる工程です。
まず、鋳金の作品は①鋳型の成形が一番の肝だといわれています。
完成形の作品は、成形した型のままに仕上がるため、鋳型成形の際に誤差や歪みが生じてしまうと、どんなに小さな欠点であっても忠実に作品に反映されてしまいます。少しの歪みやずれも生じさせないように、作家は綿密に計算して慎重に型作りを行っていきます。
こうして無事に型が完成しても、まだ油断は禁物です。②の鋳込み作業では、温度管理に細心の注意が要求されます。
溶かした金属を鋳型に流し込む際に、温度が高過ぎると肌が荒々しくなり異物混入を招く原因となったり、温度が低過ぎても溶解した金属が隅々まで行き渡らず、型崩れの原因になったりします。
この①、②の神経を使う工程が終わり、やっと型から取り出して完成!…という訳にはいかず…。その後も非常に忍耐力が要求される③研磨の工程が待っています…。
型から取り出したばかりの鋳金作品は、発掘したばかりの土器のような姿をしています。
そのため、不必要な部分を削り取り、光沢を出すために何度も何度も磨きをかけ、やっと輝きを持った完成形の姿となるのです。
鋳金作家の第一人者
私が最初に秦蔵六の作品を目にした際には、古代の銅器を彷彿とさせるような、神秘的でありながら無駄のない計算されたフォルムと、青銅と金のグラデーションの流麗さに驚きました。
実際に手にしてみると、金属を用いている作品のため、重く、冷たく、無機質な印象かを受けるかと思いきや、彼の作品には柔らかみがあり、肌には美しい光沢があり、手触りも非常に滑らかです。
上記に挙げた、複雑な工程の一つ一つを丁寧に実践している結果が、作品に忠実に表れています。
初代秦蔵六は江戸期から鋳金作家の第一人者として活躍し、その腕前は確かな物で、将軍徳川慶喜の金印や、明治天皇の印章の制作を依頼される程でした。
初代が築いた技術と栄誉は現在でも受け継がれており、当代は六代目秦蔵六を襲名されています。
江戸から令和に至るまで技術が受け継がれているのは、これらの緻密で地道な工程を忠実に守り続けてきた故なのだと、作品を鑑賞しながら思いを馳せております。
さいごに