伝統と革新の融合で日本画の新たな道を切り拓く。「現代の琳派」と称された画家・加山又造

加山又造は、戦後の日本美術界を牽引した重要人物のひとりです。生涯に渡り意欲的な創作活動を続け、動物画シリーズや裸婦画・水墨画など、日本画に立脚した表現の可能性を追求しました。

加山又造は、日本画の伝統的な様式美に西洋画の技法を取り入れ、現代的な感覚で表現し、新たな世界を切り拓きました。その華麗な装飾表現や大胆な意匠化は「現代の琳派」と称され、現在でも高い評価を得ています。

この記事では、そんな加山又造のプロフィールをはじめ、作品の特長や評価などについてご紹介します。

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日本画を革新した作家。加山又造のプロフィール

▲加山又造が幼少期を過ごした京都の街並み

京都生まれ。山本岳人に師事し、独自の世界観を構築

加山又造は1927年、京都府に生まれました。祖父は日本画の絵師、父は京都西陣織の衣装図案師という芸術家一家に育ち、幼少時から絵を描くことに親しんだと言われています。そして1944年には、東京美術学校（現・東京藝術大学）日本画家へ入学。

卒業後は山本丘人（※）に師事します。当時、日本は戦後の混乱期。西洋の文化が流入し、日本人の価値観・美意識も大きく変容しつつあった時代でした。そんな時代において、加山又造はさまざまな文化を取り入れた意欲的な作品の創作に挑んでいきます。

西洋画の手法を取り入れた新しい日本画の世界を開拓

戦後の混乱期、加山又造はラスコーの洞窟壁画やブリューゲル、アンリ・ルソー、パブロ・ピカソなど、幅広い時代の西洋絵画の手法を取り入れた新しい日本画の世界を切り拓いていきました。また、13名の画家たちによって結成された「創造美術『後の創画会（※）』」に所属し、戦後日本革新を担う若き芸術家として注目を集めました。

1959年には「轟会」を発足。日本工芸の意匠と技法に触発され、装飾性の高い作品を制作。代表作となる　「春秋波濤」や「千羽鶴」は、「現代の琳派（※）」と評されました。

水墨表現を取り入れた創作に注力した晩年

1970年代後半からは、水墨表現を取り入れた作品を制作するように。この表現技法は、1984年に発表された身延山久遠寺大本堂天井画《墨龍》や、晩年に描かれた京都・天龍寺の天井画「雲龍図」で見ることができます。

1997年にはこれまでの功績が認められ、文化功労者に選ばれました。また、2003年には文化の発展にめざましい功績を挙げた者に授与される文化勲章を受章しています。2004年に病に倒れるまで、日本の芸術を拡張し続けるような活動を続けました。

西洋画の手法を取り入れた、加山又造の作品の特長とは？

▲加山又造の代表作のひとつ、天井画「墨龍」がある山梨県の身延山久遠寺大本堂

西洋絵画の手法を取り入れた独自の表現

加山又造の作品の特長は、伝統的な日本画の枠組みに捉われない革新性にあると言えるでしょう。シュルレアリスム（※）やキュビズム（※）などの西洋絵画の手法を取り入れたほか、エアブラシを用いるなどして日本画の伝統的な様式に現代的な表現を交え、現代日本画の世界に新しい風を吹き込みました。

動物画・裸婦画・水墨画…10年ごとに新しい表現に挑戦

また、その作風はおよそ10年ごと、時期によって大きく変化しています。1950年代には猫や鶴などをはじめとする動物画を多く制作。1960年代に入ってからは、琳派を彷彿とさせる華麗で豪奢な装飾表現を用いるようになりました。

その後は官能的な裸婦画の制作を、そして1970年代以降は一周して伝統的な水墨表現に立ち返り、天井画や屏風を制作しました。その変幻自在な作品の数々は、日本画に立脚した表現の可能性へのあくなき挑戦だったと言えるでしょう。

国内外で高い人気。加山又造・作品の評価とは？

▲2017年に生誕90周年の大回顧展が開かれた、日本橋高島屋

装飾性の高い多様なジャンルの作品群

加山又造は、国内ではもちろん海外での評価も高い作家です。代表作である《春秋波濤》や《千羽鶴》などの装飾性の高い作風は、「現代の琳派」と称されています。

加山又造が注目を集め始めたのは、1949年に東京美術学校日本画科を卒業した後、1950年初頭頃。動物画シリーズをはじめとした作品が、日本画の新世代として注目を集め始めます。1955年には、養清堂画廊にて初の個展を開催しました。

フランス・中国・イギリスなど、国境を越えて愛される独自の世界

1958年にはグッゲンハイム国際美術展に出品。これを皮切りに海外の展覧会に多数の作品を出品するようになり、世界的な評価を受けるようになります。1990年にはパリのギャルリー・ド・フランコニーで、1993年には中国の北京中央美術館と上海美術館、1996年にはロンドンの大英博物館という錚々たる美術館にて個展を開催。このような功績により、1997年に文化功労者に選任、2003年には文化勲章を受章しています。

2004年に死去した後も、日本各地で回顧展が開催されており、多くのファンを魅了しています。2017年には、生誕90年を記念して東京の日本橋高島屋で大回顧展が開催されました。

初期から晩年までの約70点を展示したこの展覧会は、瀬戸内市立美術館・新潟県立近代美術館・横浜髙島屋・大阪髙島屋・京都髙島屋に巡回され、各地で大盛況を博しました。加山又造が遺した唯一無二の素晴らしい作品たちは、時代を超えて多くの人を魅了し続けており、買取査定においても高く評価されています。

加山又造の作品紹介

「猫」

木版　35×43cm
猫の凛とした顔つきが印象的な作品。毛並みまで細かく丁寧に描き込まれ、気品漂う佇まいが猫の魅力を最大限に引き出しています。

「鶴」

木版　33.5×52.5cm
銀で表現された大空が、まさに琳派を思わせる作品。加山曰く、「日本の美を追求していった結果、琳派へ辿り着いた」と述べていたそう。

「裸婦・79Ⅳ」

リトグラフ　36×54.4cm
さまざまな「美」を表現することを追求し、表現した加山。女性の曲線美を蠱惑的に艶やかに描き、人々の心を惹きつけました。

ご紹介した「猫」「鶴」「裸婦・79Ⅳ」のほか、加山又造はそのキャリアで多数の作品を残しています。10年ごとに表現や作成ジャンルを変えていった加山又造ですが、全ジャンルにおいて代表作が残されており、それぞれにファンを獲得しています。

まとめ

伝統的な日本画に西洋画の意匠と技法を取り入れ、現代の琳派と称された加山又造。彼の創作意欲と高い探究心は終生衰えることなく、2004年死去するまで多数の幅広い作品を生み出しました。戦後の日本画界に新たな風を吹き込んだ功績は、現在でもなお評価され続けています。

キズや汚れがついた作品であっても、国内外で高い評価を得る加山又造の作品は買取査定でも高く評価されています。加山又造の作品の買取を検討している方は、一度ご相談ください。