現代モダンアートの先駆け。大正時代のロマン画家・竹久夢二
大正時代を代表する画家のひとりで、数多くの美人画を残した竹久夢二。その叙情的な作風は「夢二式美人」と呼ばれています。憂いをおびた眼差し・あでやかな衣装・のびやかなポーズ…まさに大正ロマンを体現するような画家です。
そのモダンでファッショナブルな作風は当時の若い女性たちから絶大な人気を博しました。この記事では、そんな竹久夢二の生い立ちをはじめ、作品の特徴や魅力についてご紹介します。
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大正時代を代表するロマン画家、竹久夢二の生い立ち
▲竹久夢二が生まれた岡山県瀬戸市の風景
誕生から上京まで
竹久夢二は、1884年に岡山県瀬戸市に生まれました。父親は実業家で、実家は大きな酒屋を営んでいました。1901年17歳のときに家出し、単身上京。翌年早稲田実業学校専攻科に入学しました。現在でも名を知られる画家の多くが美術学校に通い絵画の基礎や技術を学んでいる中、竹下夢二の経歴は異例といえるでしょう。
画家デビューは新聞のコマ絵だった
竹久夢二は、在学中に生活費を稼ぐためにアルバイトで新聞に風刺画(※)を描き始めました。のちに美人画の画家として知れられる竹久ですが、反戦風刺画が彼の画家としての始まりだったのです。
当時は、次々と大衆向けの雑誌が創刊され、コマ絵(文章の空白に描かれる小さな絵。挿絵)が人気でした。その多くが伝統的な日本画の手法で描かれたコマ絵が多い中、竹下夢二の独特な画風は斬新で、新しいコマ絵として若い女性達の心を掴みました。
社会や人物の風刺(社会または人物の難点や短所などを遠回しに批判すること)を目的に描かれた絵画。
竹久夢二の描く美人画が若い女性の間で大人気に
その後も、数々の雑誌や新聞などで風刺画を中心に挿絵を描いていた竹久夢二。そんな彼の最初の画集「夢二画集‐春の巻」が発売されたのは1909年のこと。この画集は若い女性の間で大人気となり、たちまちベストセラーになりました。ファッション雑誌のような役割も果たし、絵の女性のファッションを真似する女性も多かったといいます。
創作と恋愛に生きた竹久夢二
竹下夢二の作品を語るにあたり、彼の恋愛遍歴や愛憎劇は切っても切れないものだといえます。美人画で知られる彼は、実生活でも多数の女性と浮名を流していました。
23歳で結婚した妻・他万喜(たまき)や、後の恋人となる彦乃・お葉などは、彼の絵のモデルであり作品のあちこちに登場しています。諸説ありますが、彼の代表作である「黒船屋」は、結核をわずらった彦乃を想いながら描いたものといわれています。
40代後半で欧米に遊学。しかし、アメリカは大恐慌時代。ヨーロッパに渡航するもファシズム(※)の台頭する時代において、欧米での活動は順調にはいきませんでした。2年あまりの放浪の後、1933年に帰国するも結核を患い、49歳にてこの世を去りました。
極右の国家主義的、全体主義的な独裁の政治形態を指す。独裁的な指導者による偏った民族主義や排外主義を唱えることが多く、対外侵略政策をとるなどの特徴がある。
新たな時代を象徴する鮮烈な美人画。竹久夢二の作品の特徴
▲竹久夢二は、艶やかな着物を着た美しい女性の絵を多数描いた
復興に向けて動き出す時代を象徴するかのような、自由で新しい美人画
竹下夢二の描く美人画は、独自の美意識にあふれています。カラフルな色使い、復興に向けて動き始めていた時代を象徴するかのような伸び伸びと自由な構図、そこに描かれる女性は大きなぱっちりとした目をし、あでやかな着物に身を包む……。従来の日本画と一線を画するその画風は、「夢二式美人画」と呼ばれていました。
モダンでスタイリッシュな作風は、ファッションアイコンとしての人気も得る
大正ロマンを感じさせる竹下夢二の作品は、今見てもモダンでスタイリッシュ。画集が当時の若い女性たちの間で大流行し、ファッションアイコン的立ち位置を得たのもうなずけます。
当時の画家の多くは、美術学校に通い絵画の基礎や技術を身につけていました。しかし、彼はそうではなく、新聞のコマ絵の風刺画からキャリアをスタートさせています。伝統的な絵画様式が飽和状態だった時代において、彼のオリジナルで自由な表現は目新しく、大衆に好意的に迎えられたのでしょう。
「夢二式美人画」として知られる竹久夢二の作品。その評価とは?
竹久夢二の代表作は、「黒船屋」や「女十題」などがあります。「黒船屋」は美術の教科書にも掲載され、誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか。これらの作品は、大正ロマンの象徴的な作品として今日でも高く評価されています。
また、竹久夢二は子供向け雑誌の挿絵や広告デザインを手がけ、商業的な成功も収めました。彼の独特の雰囲気をもつイラストやデザインは、大衆の心をつかんだのです。それまで美術作品は裕福層向けの娯楽という側面がありましたが、竹下夢二の作品は庶民向けの大衆文化として根付き、日本の芸術や美術の新しい可能性を切り開いたといえるでしょう。
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竹久夢二の作品紹介
「トランプ占い」
トランプで占いに興じる女性は今見ても遜色ないほどモダンかつスタイリッシュな装いです。ショートカットの髪型、ぱっちりメイクも施され、流行の最先端を作り出していた夢二はまさに時代の寵児だったのでしょう。
「黒船屋」
黒猫を抱きかかえる着物の女性…誰もが一度は見たことのある作品ではないでしょうか。伏目がちで愁いをおびた白い肌の女性と黒猫との色調のコントラストが印象的です。「大正の歌麿」とも称された美人画の名匠でもあった夢二の代表作です。
「女十題:黒猫」
1921年に完成されたさまざまな場面での女性を描いた「女十題」のシリーズのうちのひとつ。黒船屋の女生とは対称的にこちらを見つめ、洋装を着こなした凛とした女性像を描いています。モダンガール(モガ)の走りとなる竹久夢二の女性像は、その時代に生きる女性たちにとってアイコンの役割を果たしていたのでしょう。
竹久夢二の他の作品としては、この他「舞扇」などが有名です。美人画の新しい様式を確立した竹久夢二の作品は現代においても、多くの方々に愛されています。
まとめ
大正時代に多くの美人画を描いた竹久夢二。「夢二式美人」と呼ばれる画風を確立した彼の作品は、現代の感覚で見てもみずみずしい美しさに溢れています。
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