「THE FALL」で知られる国際的画家・千住博。そのモダンで新しい日本画の世界
滝を題材にした作品「ウォーターフォール」で知られる千住博。1990年代からNYを拠点に、国際的な活躍を続けています。
日本画を軸としながら、どこかモダンでスタイリッシュな作品は、多くの人を惹きつけてやみません。この記事では、そんな千住博の生い立ちをはじめ、作品の特徴や魅力についてご紹介します。
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国際的に評価される画家・千住博の生い立ち
▲「フラットウォーター」のモチーフとなったハワイのキラウェイ火山
芸術家一家に生まれ、高校時代からグラフィックアートや建築に興味を抱いていた
千住博は、1958年東京都で生まれました。父は工学博士の千住鎮雄、母は教育評論家でエッセイストの千住文子、後に弟は作曲家の千住明、妹はヴァイオリニストの千住真理子といった芸術一家の長男として育ちます。なんと幼少時から自宅の壁や襖(ふすま)をキャンバスにして絵を描いていたそうです。高校時代にはグラフィックアートや建築に興味を持ち、美術系の大学への進学を志していましたが、日本画の展示会に訪れたことをきっかけに日本画専攻の予備校に通い始めました。
東京藝術大学で学び、才覚を表す
1978年に東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻に入学。その後、同校修士課程に進みます。修士課程修了作品である「回帰の街」が、首席で大学の買い上げに。
大学卒業後の1980年代は、風景をモチーフとした絵画を主題としていました。東京育ちだった彼は自然に自生した多様な木々に感化され、風景画へと向かうようになったと言われています。
滝をモチーフとした作品群で世界的に知られるアーティストに
1993年に、ハワイのキラウエア火山の溶岩が海に流れ込む様を描いた「フラットウォーター」を発表。この作品はニューヨークでの個展にて大きな評価を受け、ニューヨークの美術雑誌「ニューヨークギャラリーガイド」の表紙を飾ることとなりました。
さらに1995年には滝を題材にした「THE FALL」を発表。この作品は縦3.4m、横14mの大作です。この作品の発表時は、館内全域に水を張りすべての作品が水面に反射するという会場構成で行われました。千住の建築や空間デザインへのこだわりが感じられます。
また、この作品は、イタリアのヴェネツィアで開催されている現代美術の国際美術展覧会である「第46回ヴェネツィア・ビエンナーレ」で名誉賞を受賞しました。これは東洋人としてはじめての快挙であり、これをきっかけに千住博の名は世界的に知られることとなりました。
パブリックアートの制作にも注力
1997年には、大徳寺聚光院別院全襖絵(ふすまえ)の制作を大徳寺聚光院(※)から依頼され、制作。この作品は後に東京国立博物館で公開されることとなります。
このほかにも、千住博は数多くのパブリックアートを制作しています。ベネッセアートサイト直島の「家プロジェクト」における「空の庭」や、羽田空港新ターミナルにおける「ウォーターシュライン」と題する全長18mの滝の作品、JR博多駅におけるアートディレクションなどが代表的です。
2010年にはAPEC JAPANの会場構成を担当しました。また、2018年にはブルガリ(BVLGARI)とのコラボレーションが実現、腕時計が制作されました。
臨済宗大徳寺派の寺院。京都市北区紫野にある。千住博は聚光院別院の襖絵の制作を担当した。
伝統的な日本画技法を用いながらもモダンな作風。千住博の作品の特徴とは
▲滝モチーフの作品群は、千住博の代表作として広く知られている
千住博は、自然の中に美の核心を見出し、伝統的な日本画の技法であらたな世界を表現し続けています。千住博は、天然の鉱物を砕いて粉にした岩絵具と呼ばれる絵具を用い、「にかわ」という動物性油脂で和紙や絹で定着させる伝統的な日本画の技法を用いています。伝統的な技法を用いながらも、千住博の作品はモダンでスタイリッシュな印象を与えます。また、千住博の作品は淡く幻想的な色使いが特徴的で、その表現は非常に力強く、自然の生命力をありありと感じさせます。
また、彼自身が建築や空間デザインへの造詣が深いことから、作品展示にも多大なこだわりが見られます。2011年にオープンした軽井沢千住博美術館は、そのコンセプトを体現した創造的な空間です。明るく開放的な空間は、自由なアート体験ができる場として人気が高く、多数のファンが訪れています。
「ウォーターフォール」で知られる千住博。その作品の評価とは?
▲2011年にオープンした軽井沢千住博美術館
千住博の有名な作品といえば「ウォーターフォール」や「フォーリングカラー」が真っ先に浮かびます。滝をモチーフとした作品で、これらは非常に人気が高く高値で取引されています。特に「ウォーターフォール」は東洋人で初めてヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞した作品です。
滝の他にも、砂漠や街並み・森・海などの題材も手掛けており、どの作品もとても人気があります。作品によってはほとんど入手が不可能なものも少なくありません。
また、千住博は日本画のほかにリトグラフやエッチングといった様々な手法の版画も制作しています。こちらも人気作となれば高値で取引されています。
千住博買取
千住博の作品紹介
「朝の水辺」
千住博の作品の中でも人気の高い「森」シリーズの一作。作品が作られたその背景に、奈良公園にて遭遇した鹿との不思議な体験から着想を得ているという逸話があります。幻想的な世界観が、鹿に対する気高さ・神秘性までもが感じられます。
「Metal Sakura#2」
ステンレス製の金属板にフォトエッチングという千住独自の技法により表現された桜。暗闇の中で咲き乱れる満開の枝垂桜の優美さ、儚さまでもが表現されています。金属板にて制作されたメタルフォールと並んで人気の高い作品です。
「ウォーターフォール」
千住博の代名詞ともいわれるほどポピュラーなウォーターフォール。滝の飛沫や冷涼な空気感まで伝わるほどの幽玄な作品。東京メトロ副都心線の新宿三丁目駅の地下通路にて、壁一面に広がるウォーターフォールのパブリックアートをご覧いただけます。
千住博の作品としては、この他「滝」「滝桜」「高野山・襖絵」などが有名です。これらの作品に触れ、現代のトップアーティストである千住博の世界観を堪能しましょう。
まとめ
世界的に活躍する画家・千住博。スタイリッシュかつモダンな作風でありながら日本画の美しさを追求した作品群は、多くの人を魅了しています。
そんな千住博の作品は買取市場でも人気が高く、作品によっては高額で取引されています。キズや汚れがあっても、査定額が高くなる作品も数多くあります。千住博の作品の買取を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。
日本画高額買取