ヨーロッパ初の硬質磁器ブランド・マイセン。その歴史と特徴・評価
約300年の歴史を持つマイセンは、ヨーロッパで初めて硬質磁器を生み出したブランドです。窯印である「青い双剣」と繊細なデザインは、唯一無二。食器ブランドに明るくない方でも、その名前は知っているという方が多いのではないでしょうか。今回は、そんなマイセンの歴史や成り立ち・特徴・評価などをご紹介します。
ヨーロッパ初の硬質磁器を産み出したマイセン。その歴史と成り立ち
▲マイセンの工場があったドイツ・マイセンの街にあるアルブレヒト城
ヨーロッパ初の硬質磁器「マイセン」が誕生するまで
マイセンは17世紀、今からおよそ300年前に誕生しました。ヨーロッパで初めて硬質磁器を生みだしたドイツの名窯として知られています。当時のヨーロッパでは、中国の陶磁器や日本の伊万里焼などが芸術品としてもてはやされていました。しかし、それらのような純白で薄い硬質磁器は、当時まだヨーロッパでは作ることができませんでした。
そのため、各国の貴族や実業家たちはみなその製法を見つけようとしていました。中でもドイツのザクセン選帝侯アウグスト2世(※)は、東洋磁器の熱心なコレクターでした。そして、自らも硬質磁器を完成させようと、錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーを監禁して磁器製造の秘法を研究させました。
1710年、ついにベトガーは白磁製法を解明。ここにヨーロッパ初の硬質磁器「マイセン」が誕生したのでした。その後、1717年にはベトガーらによって染付け磁器の焼成に成功しました。
ポーランド・リトアニア共和国の国王。在位は1697年~1706年、1709年~1733年に渡る。驚異的な怪力の持ち主であったことから「ザクセンのヘラクレス」とも呼ばれる。
アルブレヒト城内に工場が設立される
マイセンが大きな発展を遂げた理由のひとつは立地条件の良さでした。マイセンの工場が設立されたのは、アウグスト強王のお膝元・マイセンの街にあるアルブレヒト城(※)。ここはエルベ川の船運によって材料や製品の輸送がしやすく、原料を採掘できる鉱山も近くにあったのです。また、堅牢な作りと自然の要塞に守られた城は磁器の製造方法を守るのにも役立ちました。
ドイツ、ドレスデンにある城。ドイツ最古の城と言われている。
マイセンの発展
1739年、マイセンの代表作となる「ブルーオニオン」が発表されます。白磁にコバルトブルーの絵付けが高貴な印象を醸し出しています。1764年には工場私設の芸術学校が設立され、訓練・実習と専門過程を学ぶことができるようになりました。
1865年、アルブレヒト城からトリービッシュタール(※)に工場が移転。そこに国立マイセン磁気製作所が設立されました。1960年にはマイセン近郊にアトリエが作られ、マイセンの技術を未来に残すことを目的としてトップアーティストが集まるようになります。この「芸術の発展を目指すグループ」を率いたのは、現代マイセンの磁器絵付けと壁面装飾に大きな影響を与えたハインツ・ヴェルナー(※)でした。彼は後に「アラビアンナイト」や「サマーナイト」といった名作を生み出しました。
ドイツのザクセン州マイセン地区にあった自治体。
(※)ハインツ・ヴェルナー
現代マイセン5人組のひとりとして活躍した人物。その中でも最も人気の高い絵付師とされる。
マイセンの作品の特徴は?青い双剣と緻密なデザイン
▲高級磁器ブランド・マイセンを育んだドイツ・マイセンの美しい街並み
マイセンの窯印「青い双剣」
マイセンの磁器には、交差した青い二本の剣の模様が施されています。これがマイセンの特徴の一つと言えます。マイセン磁器の製造では機密保持が厳守されており、従業員にも製造過程の一部のみが伝えられていました。しかし、競合ブランドを立ち上げようとした職人のひとりが製造技術を盗み出そうとする事件が起きたため、1722年に偽装防止の措置としてこのトレードマークが設定されました。
このマークは現在でも手書きで記されているため、同じものはふたつとして存在しません。また、このマークは時代とともに少しずつ変化しているため、製造年代を判断する材料ともなっています。そしてこの窯印は1875年に国内外で登録商標を取得しているため、真贋判断にも使われています。
マイセン磁器のデザイン
マイセン磁器は、もともと中国磁器や日本の伊万里焼などの東洋磁器に対する憧れから生まれました。そのため、東洋的なデザインの絵付けが多く存在しています。特に初期の作品にはその特徴が顕著に見られます。時代が下がるにつれて、東洋的なデザインにくわえてオリジナルデザインの「ブルーオニオン」や「インディアンフラワー」「シノワズリ」などが描かれるようになりました。これらは今日でもブランドの代表的なデザインとして用いられています。
食器からフィギュアまで。さまざまな作品
マイセンは過去から現代に至るまでに、さまざまな製品を発表しています。その作品は23万種類を超えるほど。食器などのテーブルウェアから花瓶・フィギュア(磁器人形)など、さまざまな製品があります。
中でも種類が多いのはテーブルウェアです。「ブルーオニオン」や「リッチオニオン」「ブルーオーキッド」「インディアンフラワー」など、たくさんのシリーズがあります。フィギュアも、「パゴダ」や「天使」「クラウン」「モンキーバンド」「ガーデナー」などのシリーズがたくさん展開されています。
マイセン作品の評価は?美しい製品は今でも世界で愛されている
ヨーロッパ初の硬質磁器として知られるマイセン。今日でもその美しい製品は世界中で愛されており、高い評価を受けています。中でも1725~1763年頃に作られた製品は、骨董的価値が高いとされています。
また、「マイセンの黄金期」といわれる1824~1924年の製品や、「ファイファー期」と呼ばれる1924~1934年に作られた製品は芸術性が高く、価値が高い傾向にあります。
このほか、マイセン誕生200周年にあたる1910年6月6日から1年間のみ製造された1710と1910の数字が印された製品は、希少価値が高く、コレクター垂涎のアイテムです。
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マイセンの作品紹介
「マイセン ブルーオニオン」
1739年に染付の技法を生かして完成させた「ブルーオニオン」。なぜ「たまねぎ」なのか?と言いますと、東洋の染付磁器がヨーロッパへ伝わった際に、ザクロの絵柄をたまねぎと見間違えて制作されたからというエピソードがあります。中国ではザクロは吉祥文のひとつとされ、おめでたいモチーフのひとつとされています。西洋でたまねぎへと変化したものの、世界中の人々に長年愛されているシリーズです。
「柿右衛門写 飾り皿」
当時のヨーロッパではまだ白磁を作り出せず、中国や日本から輸入された陶磁器が貴族の間で珍重されていました。その際に伝わった柿右衛門様式は、マイセンにて絵付けを真似することからスタートし、いつしかオリジナルのシノワズリ(東洋趣味)へと進展されました。こちらはその酒井田柿右衛門の作品を写した飾り皿になります。柿右衛門写の他にも、「インディアンフラワー」や「ドラゴン」など東洋の影響を受けたシリーズも展開されており、どのシリーズも人気が高いです。
「マイセン フィギュア・天使」
陶磁器で作られた人形(フィギュア)は食器とともに人気が高く、コレクターの多いジャンルでもあります。肌の色や質感、表情やそれぞれシーンの臨場感などが魅力です。また、フィギュアの造形家と絵付師はテーブルウェアの職人とはまた別途修行を積み、フィギュア制作の専門家として育成されます。マイセンのこだわりと高い技術力をうかがわせる逸品です。
まとめ
ヨーロッパ初の硬質磁器を発明した、老舗ブランド・マイセン。多岐にわたるコレクションは、世界中のコレクターから愛されています。そんなマイセンの作品は買取市場でも人気が高く、作品によっては高額で取引されています。
キズや汚れがあっても、査定額が高くなる作品も数多くあります。マイセンの作品の買取を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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