イタリアを代表する老舗食器ブランド「リチャードジノリ」。今なお多くの作品を制作
リチャードジノリはイタリアを代表する食器ブランドです。軽やかで独特な白い陶磁器は「ベッキオホワイト」と呼ばれ、ギフトとしても有名です。気品あるたたずまいから、ナポレオンの妻マリー・ルイーズや、神聖ローマ皇帝フランツ2世、エジプト総督などの皇族や貴族も愛用していました。
リチャードジノリの歴史は1735年創業と古く、さらに創業者が貴族という珍しいブランドです。
なぜ貴族が食器ブランドを創業するに至ったのでしょうか?
そんなリチャードジノリの創業の経緯や、今なお愛され続けている作品の魅力に迫ります。
リチャードジノリの成り立ち。1735年から続く老舗ブランド
▲リチャードジノリの始まりイタリアのトスカーナ地方
リチャードジノリの創業。ベッキオホワイトの発表
1735年、イタリアのカルロ・ジノリ侯爵が自領であるトスカーナ地方ドッチアに陶器窯を開いたのがリチャードジノリの始まりです。中世ヨーロッパでの磁器は王侯貴族にとって権力の象徴だったため、各国で陶磁器の開発製造に力を入れていました。
すでに名声を獲得していたドイツのマイセン窯や、ウィーン窯に匹敵するエレガントな白磁をイタリアでも作ろうと研究を重ねていました。ジノリ侯爵は鉱物学に造詣が深く、トスカーナで自ら原料の土を探し、磁器の研究を行い、イタリア初となる白磁を完成させることに成功しました。
そのときに制作した「ベッキオホワイト」はジノリ最古の作品であり、今も変わらず人気のシリーズです。
装飾的な磁器から実用的な磁器食器へ
1758年、カルロ・ジノリ侯爵は52歳で他界します。カルロの後を継いだのは長男のロレンツォです。ロレンツォは新工場を建設。土の研究を重ね、父の作品よりもさらに白い磁器を作ることに成功します。その磁器は「トスカーナの白い肌」と絶賛され、ドッチア窯で製造されたジノリ製品を不動のブランドへ確立させました。
技術の向上でテーブルウェアや置物、特に小物類の種類が豊富に制作され、製品は各国の君主や名家に迎え入れられました。いまなお根強い人気のある「イタリアンフルーツ」や、「アンティックローズ」のパターンは、すでにこの頃に発表されています。
1801年、カルロ・レオポルド・ジノリがフィレンツェに最初の直営店をオープン。当時流行していたネオクラシック様式(※)を製品にも活かし、直線的なフォルムが特徴の「インペロシェイプ」を発表します。1850年ロレンツォ2世・ジノリの時代には、1300人の職工と11基の磁器窯を持ち、産業としても大きく発展。ロンドン万博で「メディチのベース」と称される大変美しい作品が出品され、話題を呼びました。
1861年、イタリア新君主制が制定。ジノリは皇室御用達として芸術的で華麗な食器を数多く製造します。1880年頃、イタリア2代目の国王ウンベルト1世からの注文で「森の果実」をモチーフにしたシリーズの作品が誕生します。1896年には、イタリア北部にあるミラノのリチャード製陶社と合併。社名も「リチャードジノリ」へと変わりました。
ローマやギリシャ時代の芸術が模範とされた様式。ネオクラシカル様式、新古典主義とも呼ばれる。
リチャードジノリの現在。イタリア最大のメーカーとして作品を発表し続ける
イタリア最大の陶磁器メーカーとなったリチャードジノリは、時代の最先端を走るデザイナーとコラボレーションし、「伝統と革新」をテーマに多くの作品を発表し続けていました。しかし近年は経営難に陥り、2012年7月には陶磁器の製造を中止。2013年1月、イタリアのフィレンツェ裁判所は、リチャードジノリに対して破産宣告を通達します。
その後2013年4月、グッチがリチャードジノリを1300万ユーロ(約16億円)で買収。その2カ月後、創業当初の店フィレンツェのショップがリニューアルオープンし、リチャードジノリはグッチの子会社「グッチリチャードジノリ」として復活を果たしました。2020年、リチャードジノリは「ジノリ1735」へブランド名称を変更し、さらなる再生のスタートを切りました。
リチャードジノリの作品の特長。美しく使いやすい白磁
▲リチャードジノリの作品「イタリアンフルーツ カップ&ソーサー」
「ベッキオホワイト」はシンプルで美しい、最古にして最高の作品
リチャードジノリの代表作「ベッキオホワイト」は創業時に製作された最古の作品です。当時流行したバロック様式の特徴である「大きなうねり」を大胆に取り入れたレリーフは、今でも変わらず人気のデザインです。
現在でも手作業で一つ一つ型を制作しており、年月が経っても飽きることはありません。優美でシンプル、角の立たないデザインは使いやすく手になじみ、毎日の生活に優しく寄り添ってくれるでしょう。
貴族にも愛用される上品なモチーフ使い
リチャードジノリでは「ベッキオホワイト」の他にも、様々なモチーフを採用しています。
日本や中国への憧れが強く現れた「レッドコック(赤い雄鶏)」「グランデューカ」、様々な果物を色鮮やかに描いた「イタリアンフルーツ」、ルネサンス期の銀器の形を踏襲した「アンティックローズ」、愛らしいリボンと花の組み合わせの「ジュリエッタ」など、多くのシリーズがあります。「イタリアンフルーツ」は、もともとトスカーナの貴族のために作られた作品であり、特に上流階級の人々に好まれて世界中で大ヒットとなりました。
日本でも愛好家が多く、「ミナ ペルホネン」のデザイナー・皆川明さんと数回に渡りコラボレーションしています。日本の食卓を意識した商品開発も行っており、2017年には全国の主要百貨店にて販売されました。
リチャードジノリの評価とは?イタリア食器の代名詞。親しみやすさで人気
イタリアで初めて白磁の製造に成功し、ヨーロッパの高級食器メーカーとしての名声を得たリチャードジノリ。
イタリアの食器の代名詞といえば「リチャードジノリ」と言われるほど、現代において有名なブランドとなっています。
歴史の中で、ナポレオンの妻マリー・ルイーズや、神聖ローマ皇帝フランツ2世、エジプト総督など多くの皇族や貴族が愛用しました。特にメディチ家との関わりが深く、「メディチのベース」などの作品も制作されています。「メディチのベース」は現在でもコレクターに不動の人気アイテムです。
現在は、オリエント・エクスプレス号の食器に正式採用され、「VSOE(※)」のエンブレムをあしらったブルーを基調とした作品は、オリエント急行を表現しています。
買取市場では、リチャードジノリは常に人気があるブランドです。状態が良く希少価値が高いものや人気のあるシリーズでは、買取価格を期待できる品もあります。アンティーク作品として1743年から1759年までの期間に製造された磁器は大変希少価値が高いのですが、贋作と見分けるのも困難とされています。
Venice Simplon-Orient-Express(ベルモンドベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス)の略称。 イギリス・ベルモンド社が運営しているヨーロッパの豪華観光列車。
美術品高額買取
リチャードジノリの作品・代表作を紹介
・リチャードジノリ ベッキオホワイト ティーセット&テーブルウェアセット
白磁に浮き上がるバロック文様が人気のベッキオホワイトシリーズです。テーブルウェアの品揃えが豊富に展開されているため、どんな料理のジャンルにも調和しどんな場面でも使える、今なお幅広く愛されているシリーズです。さらにフルーツが描かれているベッキオフルーツシリーズも人気が高いです。
・リチャードジノリ イタリアンフルーツ ティーセット
大きめのフルーツが目印のイタリアンフルーツシリーズ。18世紀の半ばに貴族のために制作されたとされるイタリアフルーツシリーズは、イタリア・トスカーナ地方で穫れるフルーツを前面にあしらったかわいらしいデザインが特徴です。鮮やかで瑞々しいフルーツはテーブルのアクセントとなる逸品です。
・リチャードジノリ フィギュア ふたりの婦人
リチャードジノリは磁器人形(フィギュア)も人気の高いジャンルです。モチーフも貴族や天使、動物などいろいろ制作されており、マイセンやリヤドロなどと並ぶ人気でもあります。展開するシリーズも多く、コレクターも多いジャンルのひとつです。
「ベッキオホワイト」「イタリアフルーツ」の他、マグカップも人気
1735年に創業してから現在まで、300年近く愛され続けているリチャードジノリ。上品な白磁とシンプルなデザインで、貴族から大衆まで多くの人々に親しまれ、テーブルを彩ってきました。「ベッキオホワイト」「イタリアフルーツ」の他、マグカップなどでも人気の作品を多数発表しています。
そんなリチャードジノリの製品は、ティーセットなどテーブルウェアの種類や数が揃っているとより高額で取引されています。キズや汚れがあっても、査定額が高くなるものも数多くあります。リチャードジノリ製品の買取を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。
古美術 八光堂