最も伝統あるフランスの磁器「リモージュ」。気品あるデザインで愛され続ける逸品
リモージュとは焼き物や七宝焼きの街として世界的に名高いフランス・リームザン地方の中心都市であり、その周辺で生産される磁器は、リモージュ焼きとも呼ばれます。その歴史は1771年にリモージュにて窯が開かれたことから始まります。
透き通るような白磁にクラシックで優雅な絵が施されているのがリモージュの特長です。気品あるデザインの最古の窯「ロワイヤル・リモージュ」をはじめ、「ベルナルド」、「アビランド」、「レイノー」、「ロールセリニャック」など、今なお多数のブランドが存在しています。
この記事では、リモージュの成り立ちや魅力についてご紹介します。
フランスを代表する磁器・リモージュの歴史と成り立ち
▲現在のリモージュ。リモージュ駅の建物。
偶然見つかった白磁の原料
17世紀のヨーロッパでは、中国の白磁を「白い宝石」と呼び、貴族たちがこぞって買い集めていました。1709年ドイツのマイセンがいち早く白磁の製造に成功し、生産を独占します。フランスでも白磁を作りたいと考えていましたが、原料となる鉱物「カオリン」が見つけられず、白磁の制作は難航していました。
そんな中、思いがけないところから「カオリン」が見つかることとなります。1768年リモージュに住む薬剤師の妻が洗濯に使用していた白い土がその「カオリン」だということが判明します。それがきっかけとなり、1771年リモージュに初めての窯が開かれました。
本格的に磁器の生産に乗り出す
リモージュでは豊富な原材料が採れることから、後に多くの製陶所が誕生していき、白磁の街となっていきます。もともと「エマイユ(エナメル)」と呼ばれる七宝焼き(※)やステンドグラスの技術を持っていたリモージュ窯は、その技術を活かし、本格的に磁器の生産に乗り出したのでした。
金属の素地にガラス質の釉薬をかけて焼きつける工芸の一種。その工芸技法および作品のことを指す。
しかしこの時期はまだレパートリーが少なく、経営は行き詰まることに。1774年に製陶所はアルトワ伯爵(後の国王・シャルル10世)の保護下に置かれます。1784年にセーヴル王立製陶所がリモージュの製陶所を買い取ると、セーヴルの兄弟窯として、セーヴルを凌ぐ高品質の磁器を次々に生み出していきました。
フランス革命(1789-1795年)で磁器の生産は贅沢とみなされ、セーヴルの工場が次々と閉鎖。技術者の多くはリモージュへと移り住んだことにより、さらに民間に多くの優れた窯が生まれました。それまでは王族や貴族がリモージュ焼きを好んで使用していましたが、市民向けの手頃なテーブルウェアも制作され、市民にとっても馴染みがあるものとなっていきます。多くの技術者の影響もあり、リモージュの磁器は食器だけに留まらず、様々な製品を制作していきます。ジャンルは置時計や彫刻、花瓶、シャンデリアにいたるまで多岐に渡りました。
リモージュの黄金時代。世界で知られる陶磁器ブランドに
1840年代頃から、リモージュ市内には30以上もの製陶所がつくられました。最盛期にはその数は100を超えたとされています。そして19世紀後半にかけて、リモージュの黄金時代が訪れます。1842年にダビド・アビランドがリモージュを訪れ、多くのリモージュ磁器をアメリカに紹介しました。これがきっかけとなり、アメリカへの販路が拡大することになります。
1851年には、ロンドン万国博覧会へ多くの窯が作品を出品すると、その品質の高さと美しさからリモージュの磁器は世界にその名を知られることになりました。20世紀前半には、新たなリモージュの特徴となる「はめ込み技術(※)」が開発され普及していきます。二度の大戦で困難な状況にも陥りましたが、復興期を経て、今なお多くのモチーフやフォルムの開発が続けられています。
自国以外で生産することが多くなったヨーロッパの陶磁器ですが、リモージュはフランスで制作することにこだわり、現在も世界中で多くの人々に愛されています。
他の金属で作った線状やモチーフ状などにはめ込み、装飾をつける装飾技法。いわゆる象嵌(ぞうがん)技法。
リモージュの作品の特長 。インテリアとしても好まれる優美な磁器
▲リモージュのカップ
クラシックで優雅、気品あるデザイン
リモージュ作品は、透き通るような白磁にクラシックで優雅な絵が施されており、気品あるデザインが特長です。17世紀のマリー・アントワネットの時代を彷彿とさせる華やかさで、インテリアとしても好まれています。
アール・ヌーヴォー期には、ジャポニスムの影響を受けたデザインも多く作成されました。
上質の素材「カオリン」を惜しみなく使い、12世紀から長く続く七宝焼きの技術も取り入れながら、今なお白磁の質を追求し続けています。本焼きについても研究に研究を重ね、濃紺からローズ、ブラウン、イエローまで多彩な色を表現することができるようになりました。
フランスでの制作にこだわり、品質のよいものを作り続ける
リモージュは、白い生地に絵付けをした後、更に焼き付けるという手法で透き通るような白さを実現しています。その美しさは「リモージュの白」と言われ、高い評価を得ました。
リモージュ製品は食器だけに留まることなく芸術磁器へと生産を広げていき、置時計や彫刻、装飾花瓶、シャンデリアなど様々なものが作られています。
自国以外の国に生産拠点を移すことが多くなったヨーロッパ陶磁器の中でも、優美な色使いの手軽な焼き物を今なおフランスで作ることにこだわり続けている、名実ともにフランスの老舗ブランドと言えるでしょう。
リモージュの評価。一流レストランのシェフやセレブも愛用
リモージュのテーブルウェアは、その上品なたたずまいと品質の良さ、さらに時代とともに移り変わる料理のトレンドに合わせて制作されるため、フランスの三ツ星レストランの一流シェフたちもこぞって使用しています。
また、リモージュボックスという様々な装飾が施された小物入れは、ジュエリーなどの大切な思い出をしまっておくものとして広く愛されています。
各国の大統領や貴族、著名人などのセレブにリモージュボックスのコレクターが多く、ヒラリー・クリントンも愛好家として有名です。ホワイトハウスでは大統領就任時にリモージュボックスを美術コレクションに追加するのが慣わしとされているそうです。
日本の老舗お茶メーカーとのコラボの茶器も制作されており、日本人からも愛されているブランドです。
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リモージュの作品・代表作を紹介
リモージュ キャッスル 花器
目を引く濃紺のコバルトブルーはリモージュの代名詞といっていいほど有名な色味です。そのコバルトブルーの上を金彩で縁取り、中央に描かれた人物たちのストーリーをさらに引き立たせています。 存在感のあるリモージュは、インテリアとして部屋をさらに華やかにしてくれるのではないでしょうか。
リモージュ 花文デミタスカップ&ソーサー
リモージュのみならずその他陶磁器ブランドでも珍しい形のデミタスカップ&ソーサーです。縁取られた金彩が目を引き、小ぶりながら花の色味も鮮やかに描かれ、カップとソーサー自体がまるで花が咲いたかのようにも見える豪華なデミタスカップです。
リモージュ 陶板画 風景絵皿
細部まで繊細に描き込まれた色鮮やかな風景画の絵皿(プレート)になります。まるでキャンバスに描かれた絵画のような、クラシックで優雅な絵付けが施され、その皿の縁をふんだんに金彩で縁取った贅沢な仕上がりの逸品です。
「アビランド」「マリー・アントワネット」など人気作品・代表作が多数
今なお世界各国で愛されているフランスの老舗磁器ブランド・リモージュ。美しい白磁に施された優雅で上品なデザインは、使う人の心を華やかにしてくれることでしょう。今回ご紹介した作品以外にも「アビランド」「マリー・アントワネット」など人気の作品や代表作がたくさんあります。
国内外で高い評価を得るリモージュの作品は買取査定の評価が高い作品のひとつです。キズや汚れがついた作品であっても、作品によっては高値で取引されています。リモージュの作品の買取を検討している方は、お気軽にご相談ください。
古美術 八光堂