遺品整理で刀が……。刀剣、日本刀を見つけたときの処分方法を詳しく解説
「家族や親戚が亡くなった後に遺品整理をしていたら、日本刀が出てきた」……そんなとき、どう処分したら良いのか知っていますか?おうちに日本刀があるとは知らなかった場合、驚いたり困ったりしてしまう方がほとんどなのでないかと思います。そこで今回は、遺品整理で日本刀が出てきた場合の処分方法について詳しく解説します。
刀の処分に困る……。実際に体験した方々の声
遺品整理などで倉庫や故人の物置を整理していると、処分してよいのかわからないさまざまな物品が見つかります。中でも、見つけた際に特に困惑するのが「刀剣」の類。実際に遺品整理で刀を見つけた人の声を集めてみました。
・60代女性「処分方法がわからず困惑……」
祖父が亡くなった後の遺品整理しているときに、物置の中から日本刀が出てきました。鞘(さや)から少しだけ出してみると、刃もまだキレイな状態で慌てて鞘に戻しました。必要とする人もいないので処分を検討しましたが、そのまま捨てる分けにもいかず、誰に何を聞いてよいかもわからずとても困りました。
・50代女性「保管方法がわからず、しばらく放置……」
祖父の遺品整理中に刀が出てきました。すぐに夫に相談したところ、価値のあるものだから処分せずに保管した方が良いのではということに。ただ、日本刀は持っているだけで犯罪になると聞いたことがあったので、自宅で保管し続けて良いのかわからずに困りました。
・60代男性「登録証がなく、再登録に必要な手続きがわからない……」
祖父の遺品整理をしていると倉庫から日本刀が出てきました。私自身は刀にそこまで興味はなかったのですが、せっかくなら引き継ごうということで、自分で保管することに決めました。ネット等で調べると、登録証が必要だとわかったのですが、その登録証がなくとても困りました。
このように、遺品整理で刀を見つけると処分方法や保管方法で困惑してしまう方が多いようです。刀はそもそも所持している方が少なく、刀を見つけた際には処分方法も保管方法も一から調べる必要があります。
以下、刀の処分方法や保管・登録方法などについて詳しくご紹介します。
遺品整理で刀が出てきたときの対処方法
今でこそ観賞用・美術品として扱われる日本刀ですが、かつては武器だったもの。その扱いに困ってしまう方は多いかと思います。まずは刀の処分方法についてご紹介します。処分する際には、以下の点に留意しましょう。
●銃砲刀剣類登録証の有無を確認しよう
日本刀を見つけたら、まずは遺品整理で日本刀が出てきたら、まずは「銃砲刀剣類登録証」の有無を確認してください。この登録証があれば、美術品として刀を所持したり、不要な場合は専門店に売ったり美術館に寄贈したりすることが可能です。反対に、登録証がない状態で刀を所持していると、銃刀法(鐵房刀剣類所持等取締法)に抵触してしまいます。
・銃砲刀剣類登録証とは
銃砲刀剣類登録証とは、各都道府県の教育委員会によって発行されるものです。刀剣・日本刀の中でも美術的価値があるものだけに交付されます。登録証には、その刀の種別(太刀・打刀・短刀…など、その刀剣の種類)や長さ・反り・銘文などのデータが記載されています。
銃砲刀剣類登録証は紙で発行されるものです。遺品整理で刀を発見したら、近くに一緒に保管されていないかどうかを確認してください。もし登録証が見当たらない場合は、その刀は未登録の状態である可能性も。
●刀は不用意に持ち運ばないように注意しよう
遺品整理で刀が出てきた場合、焦って警察署に持っていこう・相談しに行こうとする方がたまにおられます。しかしこのような行為はやめましょう。刀を不用意に持ち出してしまうと、場合によっては銃刀法違反に問われる恐れもあります。先述したように、まずは銃砲刀剣類登録証の有無を確認し、その後然るべき対応をとることが大切です。
登録証の有無で変わる。遺品整理で刀を見つけた後の対応
遺品整理で日本刀が出てきた場合、銃砲刀剣類登録書があるかないかによってその後取るべき対応が変わってきます。登録証がある場合・ない場合、それぞれについてご説明しましょう。
●登録証がある場合
登録証が見つかったら、発見した刀剣と登録証に記載されている内容が一致しているかを確認してください。まれにですが、内容が異なったり改ざんされていたりするケースがあり、そうなると登録証の再交付や登録のし直しが必要になります。
登録証の内容と刀が一致されていることがわかったら、その刀をどうするか考えましょう。後述しますが、自分で所有する以外にも、警察に届けて処分してもらう・教育委員会に相談して美術館などに寄贈する・骨董品買取店・日本刀の専門店に売却するなどの方法があります。
●登録証がない場合
銃砲刀剣類登録証が見つからない場合、ご自身で登録証を申請することになります。登録証の申請するためには、都道府県の教育委員会が実施する登録会に参加します。すぐに足を運びたいところですが、その前にまずは警察署に行って「刀剣類発見届出済証」というものを交付してもらう必要があります。この届出を行うことで、銃砲刀剣類登録証の申請が行えるようになります
登録証がない場合の対処法①刀剣類発見届出済証を取得しよう
遺品整理で見つけた刀に登録証がついていない場合は、まずは最寄りの警察署で「刀剣類発見届出済証」というものを交付してもらう必要があります。ここでは、登録証がなかった場合の手続きについて詳しくご紹介します。
●刀剣類発見届出済証の取得方法
まずは、最寄りの警察署に電話し、登録証がついていない刀を発見した旨を伝えましょう。証拠として発見当時の写真を求められることもあるので、不用意に刀を移動させたり動かしたりせずに、先に警察への電話連絡を済ませることが大事です。なお、電話連絡は発見後できるだけ速やかに行ってください。登録証がついていない刀を所持すると、銃刀法違反に触れてしまう恐れもあります。
刀剣類発見届出済証の申請や発行は、警察署の生活安全課が担当しています。この電話で刀を発見した経緯を聞かれますので、素直に回答するようにしましょう。その後は警察の指示に従って、刀の現物を発見したときの状態で警察署に持参します。
警察署では必要事項などを記入したり、担当者が刀の種別や長さ・銘文などの詳細を確認して用紙に記載したりします。これら一連の手続きが終わったら、晴れて届出証が発行されます。刀を持ち帰ることができ、登録証の申請も可能になります。
なお、この手続きは発見者自らが行う必要があります。手続きには印鑑と本人確認の取れる身分証(運転免許証やパスポートなど)が必要です。届出証を発行するための費用はかかりません
登録証がない場合の対処法②:登録証を申請しよう
刀剣類発見届出済証の発行が済んだら、銃砲刀剣類登録証の申請手続きへと進みましょう。この登録証は、美術品としての価値があると判断された刀にのみ交付されます。登録証があれば、個人が刀を所持することが可能になります。
●登録書の申請はいつ・どこでできる?
登録証の申請は、お住まいの地域の教育委員会が実施している登録会にて行います。教育委員会が定期的に登録審査日を設けているので、ホームページなどでチェックしてみましょう。なお、登録証の申請手続きは、刀剣類発見届出済証の交付から20日以内に行ってください。
●登録会では何が行われるの?
登録会では、持ち込まれた刀に美術品としての価値があるかどうかの審査を行っています。担当するのは、文化庁から審査を委託されている専門の鑑定士です。
●刀の発見者が行かないとダメ?
発見者が自ら登録会に行くのが一番ですが、どうしても無理な場合は、委任状を託すことで家族や知人など代理の人に行ってもらうことができます。
●登録会に持っていくものは?
発見した刀と刀剣類発見届出済証・印鑑と身分証明証を持参してください。
●刀を登録するのにはお金はかかる?
審査・登録には、6,300円の手数料が必要になります。なお、この手数料は申請段階で支払うものなので、もし審査に通らず申請がおりなかった場合も返金はされません。
●登録会で審査されるポイントは?
先述したように、この登録証は美術品としての価値がある刀にのみ交付されます。そのため、審査会では主に以下のポイントがチェックされます。
・日本独自の鍛冶技術・伝統的な製作方法でつくられた刀か
日本刀の製作工程は非常に複雑で、段階ごとにさまざまな鍛冶技術が用いられます。代表的なものには「焼き入れ」や「鍛錬」などがあげられます。これらの工程を行うことで、強靭で鋭く、美しい日本刀が仕上がるのです。
・刃の素材として「玉鋼(たまはがね)」が使われているか
日本刀の素材として最も重要なのが、玉鋼(たまはがね)です。砂鉄を原料とした製鉄方法「たたら製鉄」によって精錬された鋼のうち、良質なものだけを玉鋼と呼びます。玉鋼が使用されているかどうかは、刀の良し悪しを見極める上での重要な審査基準です。
・美術的な価値があるかどうか
日本刀は武器であると同時に、武士の威厳を表すものでもありました。そのため、刀には例えば刀身を収める鞘(さや)や手で握る部分に当たる柄(つか)には、さまざまな装飾が施されています。また、刀身の刃の模様や形状も、流派や刀工によってさまざまな特徴を有します。審査会では、これらを総合的に見て美術的な価値があるかどうかを判断していきます。
これらの審査項目を満たしていれば、美術品としての価値が高いと判断されやすく、登録証の交付が期待できます。また、刀剣はその保存状態や価値によって「保存刀剣・特別保存刀剣・重要刀剣・特別重要刀剣」の4つに分類されます。以下に4つの分類ごとの詳細の審査記述についてご紹介します。
※以下審査規程第17条第1項に基づく審査基準より引用(平成27年5月19日改正版)
【保存刀剣】
1 江戸時代を下らない各時代・各流派の作で銘の正しいもの、または無銘であっても年代・国・ 系統を指摘し得るもの。
2 前項に該当するもので、地刃に多少の疲れ、あるいはキズがあっても鑑賞に堪え得るもの。
3 地刃に補修のある場合は、美観を著しく損なわない程度のもの。
4 明治時代以降の刀工の作は在銘で出来の良いものに限る。
5 再刃のものは不合格とする。ただし、南北朝時代を下らない著名刀工の在銘の作で、資料性 が高く、かつ地刃や茎の荒が少ない場合の再刃(焼直し)は、その旨を注記して合格とする場合がある。
6 在銘作は、銘字及び作風より真偽を俄かに決しかねるもの、また、無銘作で適切な極めを容 易になし得ないものは「保留」とする場合がある。
【特別保存刀剣】
1 保存刀剣のうち、更に出来が良く、保存状態の良いもの。
2 前項のものの中で、以下のものは合格の対象とはならない。
(1) 再刃のもの。ただし、南北朝時代を下らない著名刀工の在銘の作で、資料性が高く、かつ 地刃や茎の荒が少ない場合の再刃は、その旨を注記して合格とする場合がある。
(2) 室町時代及び江戸時代の無銘作。ただし、著名刀工の上作と鑑せられ、保存状態の優れた ものについては合格とする場合がある。
【重要刀剣】
特別保存刀剣のうち、以下のもの。
(1)特に出来が優れ、保存状態の良好な、国認定の重要美術品に準ずると判断されるもの。
(2) 前号のもので、南北朝時代を下らないものは、無銘作でも合格の対象となる。また、室町 時代以降の作は在銘に限り、かつ江戸時代以降の作は、原則として生ぶ茎在銘のもの。
【特別重要刀剣】
重要刀剣の中で、更に一段と出来が傑出し、保存状態が優れ、資料的価値が極めて高く、国認定 の重要美術品に相当する、または国指定の重要文化財に準ずる価値があると判断されるもの。
この他「刀装の審査基準」「刀装具の審査基準」もそれぞれ分かれており、別の基準で審査員によって審査されます。非常に厳正な審査が行われていることがわかるのではないでしょうか?「審査が正確性が不安」という方も、安心して審査を受けることができるはずです。
●審査に通らない刀剣・日本刀とは?
反対に、審査に通りにくいのは以下のような刀です。
・伝統的な鍛冶技術でつくられていないもの
・ダメージがひどいもの
・外国製のもの
●審査に通らなかった場合はどうすればいいの?
残念ながら美術品としての価値が認められず審査に取らなかった場合は、登録証が交付されません。登録証のない刀を個人が所持することは原則として法律で認められませんので、警察に処分を依頼してください。ただし、所持できないのは刀身の部分のみです。「家族や先祖の形見として手元に置いておきたい」という場合は、鞘(さや)や鍔(つば)などの刀身装具は持ち帰ることができます。
登録書がある場合の刀の処分方法は?
発見した刀にもともと登録証がついていたケース・発見後に自分で申請して登録証を交付してもらったケースなど、登録証が存在する場合は以下から処分方法を選択することが可能です。
●自分で所持する
登録証があれば、刀を美術品として所持することができます。「コレクションとして美しい刀をそばに置いておきたい」「家族の形見だから手放したくない」という方は、ご自宅に飾ったり大事に保管しておいたりすると良いでしょう。
●警察で処分してもらう
警察に処分を依頼することも可能です。ただし、「登録証がある」というのはイコール「美術品としての価値が認められている」ということですので、ただ処分してしまうのはもったいないかもしれません。
●美術館・博物館などへ寄贈する
美術館や博物館に寄贈するという方法もあります。文化財として貴重な刀の場合、自分では管理・保管が難しいことも。そういった場合には、美術館や博物館への寄贈は一つの選択肢と言えるでしょう。寄贈を考えている方は、まずはお住まいの都道府県の教育委員会に相談を。
●刀・日本刀の査定ができる買取業者に相談する
自宅に飾る場所がない・美術品とはいえ刃物を家に置いておくのは怖いなど、所持するのが難しい方は、刀や日本刀の買取業者に売却するのがおすすめです。日本刀の価値は、作られた年代や作者・地位域などによって大きく異なります。刀によっては思わぬ高額買取が成立する可能性も。ぜひ正しい査定ができる専門買取業者に相談してみてください。
刀剣・武具高額買取
まとめ
遺品整理で日本刀や刀が出てきたら、どうしたらいいのか処分に困ってしまう方は多いかと思います。ぜひ今回の記事を参考に、正しい処分を行ってくださいね。登録書があるものは、すぐに処分せず、どの程度の価値があるのかを確認するために、まずは査定を依頼してみてください。