オールドノリタケとは?日本を代表する陶磁器ブランド、愛され続ける初期の名品
オールドノリタケは、名古屋市にある日本を代表する陶磁器ブランド・ノリタケが、明治~大正期に海外輸出していた陶器製品のこと。気品あふれる形とデザインで長い間世界中で愛されています。
現在でも高い品質の作品を作り続け、世界に誇る陶磁器ブランドとなったノリタケですが、設立当初は決して順風満帆ではありませんでした。白磁の開発は困難を極め、10年もの歳月がかかってしまったのです。そこから日本初のディナーセットの登場までさらに10年がかかるなど、試行錯誤の連続でした。
この記事では、そんな陶磁器ブランド・ノリタケの歴史と、初期の名品であるオールドノリタケの製品の魅力を中心にご紹介していきます。
オールドノリタケとは?設立から現在まで
ノリタケ創業のきっかけは福澤諭吉のアドバイスから。在米日系商店の草分け
ノリタケの始まりは江戸時代末期まで遡ります。江戸の馬具商・六代森村市左衛門は、鎖国が明けた日本に欧米から様々な文化が流入する一方で、日本の金が海外にどんどん流出してくのを憂いていました。そのことを師と仰ぐ福澤諭吉に相談すると、流出した金を取り戻すためには輸出貿易が一番だというアドバイスを受け、市左衛門は輸出貿易を始める決意をします。
1876年、「森村組」を設立。ニューヨークにて「MORIMURA BROTHERS(モリムラブラザーズ)」という日本の伝統的な雑貨を販売する雑貨店を開きます。陶磁器や掛け軸、屏風、団扇などはニューヨークでは珍しかったため、大人気となりました。
商売をする中で、アメリカでは陶磁器の人気が高いことに気づいた森村組は、自分たちで陶磁器を製造・販売することを計画します。
白磁の開発は苦難の道……10年の歳月をかけて成功
森村組が当初輸出していた陶磁器は、有田焼や清水焼でつくられた純和風のデザインで、花器や置物が主な物でした。アメリカで商売を拡大するためには、日常使う食器を制作し、さらに白磁に洋風な絵付けをする必要がありました。パリ万博で見た白い陶磁器に感銘を受け、ヨーロッパに技術者を派遣して研究を続けましたが、目標とする白磁の生産は困難を極めました。
1902年、研究から10年の歳月を経てついに白磁の開発に成功します。ロンドンのローゼンフェルト社の協力と、オーストリアやドイツの工場で受けた教えが実を結んだのでした。後にこの白生地は「日陶の3・3生地」と呼ばれるようになりました。
この成功を受け、1904年1月1日、ノリタケカンパニーの前身となる日本陶器合名会社を設立します。「ノリタケ」の名前は、愛知県愛知郡鷹場村大字則武の地名に由来して名づけられました。ここから日本の近代陶業が始まったのです。
時代に合った精巧なデザインの気品ある作品を発表し続ける
白磁の制作は可能になったものの、新たな壁が立ちはだかります。開発した生地では、ディナーセットに必要な25cmの大皿を作ることができませんでした。洋食器では均一性が重要ですが、底が平らな大皿を作る技術が日本にはなかったのです。
しかし、偶然にも見本の皿を割ってしまい断面を見たことが成功のきっかけとなりました。それまでは平らにするために生地を均一にしようとしていましたが、中央部分が厚く作られていることに気づいたのです。こうした苦労のもと、1914年、創立から10年の時を経てついに日本初のディナーセット「セダン」の誕生となりました。
1910年代に制作した豪華なデザインをほどこしたオールドノリタケは、アールヌーヴォーの影響を強く受けており、高い評価を獲得しています。1922年ごろからは世界中で機械化が進み、オールドノリタケも工業的なデザインのアールデコ様式のデザインが増えていきます。
1933年には日本で初めてボーンチャイナの製造に成功し、本格的製造は1935年にスタートします。1938年頃にはノリタケのボーンチャイナ製ティーセットは、日本特有の精巧なデザインで非常に人気となり、北米へ大量に輸出されることとなりました。
現在のノリタケが制作しているのはフォーマルなデザインの食器やインテリアだけはありません。若い世代に向けたキャラクターをあしらった食器や、電子レンジなどの家電に対応した新しい素材の食器なども生産し、幅広い世代に向けた新しい感覚の食器を生産し続けています。
また、長年培ったノリタケの食器製造技術は、現代のセラミック技術の発展へと寄与しています。
オールドノリタケの定義と特徴
オールドノリタケの定義とは?輸出されたノリタケ製品初期のアイテム
オールドノリタケとは、ノリタケ製品の中でも初期に制作されたアイテムで、骨董愛好家から高い評価を受けています。
時代をはっきりと限定することはできませんが、1800年代末から第二次世界大戦頃までの間アメリカへ輸出されたノリタケ製品のことを指します。英語圏では「EARLY NORITAKE」と表記されています。
デザインは豪華なものからシンプルなものまでさまざまですが、使われている金彩が純金に近い24・23金で、ひとつひとつがハンドペイントによる一点ものということもあり、非常に高い芸術性で多くの人から支持を受けています。
オールドノリタケのデザイン。2つの特徴
オールドノリタケのデザインは、主に2つに分類されています。1つは明治期の1885年頃から昭和初期の1935年頃までの間、主にアメリカに輸出されたアールヌーヴォー様式の西洋画風のもの。もう1つは大正末期の1022年頃から昭和初期の1929年頃の間に流行したアールデコ様式のものです。
アールヌーヴォー様式のオールドノリタケについて
明治時代の作品は手作りで複雑な曲線を持ち、花や樹木などの自然のモチーフに淡いパステルカラーを基調としており、当時流行していたゴージャスなアールヌーヴォー様式の影響を強く受けています。陶器の表面を立体的に盛り上げ、金液をほどこした「金盛り」。
金の特定の部分を酸で腐食させ金を施す「エッチング」。本焼成を終えてから絵付けすることで華やかな色彩を表現する「ハンドペイント」など、さまざまな技法をこらしています。これらの技法以外にも、モチーフや構図が素晴らしい美しい絵柄であることや、緻密で繊細な製品で多くの人々に愛される製品となりました。
バックプリントには「Nippon」と印字されています。
アールデコ様式のオールドノリタケについて
工業化が進んだ1920年代には、世界的にモダンで都市型のライフスタイルが主流となり、デザインも直線的でシンプルなアールデコ様式が人気となりました。
ノリタケの製品も大正末期から昭和初期の間は、機械によって大量生産が可能な直線的でシンプルなデザインのアールデコ様式の製品が生産されました。
ノリタケのアールデコには、金彩に似た輝きを持つ「ラスター彩」という技術が使われた、きらびやかな製品も多く見られます。当時のアメリカでは、金色に輝く装飾品は豊かさの象徴として流行しており、優雅さと上品さを併せ持つオールドノリタケ製品は非常に好まれることになりました。
バックプリントには「Noritake」と印字されています。
オールドノリタケ、丁寧で緻密なハンドメイド製品で愛され続ける
オールドノリタケは、明治中期から第二次世界大戦前後まで、当時の欧米の流行を取り入れながらも独創的な製品を作り上げてきました。ひとつひとつが丁寧なハンドメイドで作られており、美しくバラエティに富んだ鮮やかな絵付けと、繊細で緻密な装飾技法の数々は特に欧米で絶大なる人気を誇りました。
日本初のテーブルウェアを製作したことで有名ですが、ティーカップ、花瓶、ランプスタンド、陶磁器人形、火鉢まで、製品の種類は多岐に渡ります。
金彩を施すセーヴル風やウェッジウッド風、ボーンチャイナなどの伝統的な図柄から、若者に人気のアニメ柄まで、その時々の流行に合わせた意匠を取り入れたデザインは、現代でも愛され続けている秘訣です。
人気のため、オールドノリタケには偽物も多いで注意が必要です。バックスタンプ(裏印)が入っているものが本物ですが、種類はなんと100種類以上。用途や販売先、製造年代、材質などで分けられています。主なバックスタンプには、イギリス輸出向けマルキ印、複雑な模様のアメリカ輸出製品裏印、国内・アジア・オセアニア向け裏印などがあります。見た目だけで判断できないものもありますので、信頼できるショップで購入したものと質感や凸凹を見比べて判断しましょう。
一般の方では判断しにくいものは、買取業者に無料査定を依頼するのがおすすめです。国内外にコレクターが多いオールドノリタケ製品は、思わぬ高額査定に繋がる可能性もあります。
古美術八光堂ではオールドノリタケ作品の鑑定・買取査定を行っています。専門知識が豊富な鑑定士が査定し、他店より高値でのお買取りも可能です。鑑定・査定を検討中の方は、コチラのURLをご確認ください。
食器高額買取
オールドノリタケの作品紹介
オールドノリタケの代表的な作品を7つご紹介します。
オールドノリタケ金彩 脚付ボウル
オールドノリタケ金彩蓋付シュガーポット
1921年頃に製造されたシュガーポットです。アールデコの影響を受けており、直線を中心としたシンプルで機能美にあふれるデザインとなっています。全体的に金地がほどこされており、側面には青と赤の可愛らしいお花が描かれています。
オールドノリタケ食器セット
各サイズのプレート(皿)からカップ&ソーサー、ボウル、スープ皿、コンポート皿、クリーマーなど一式になったセット作品です。持ち手などに金彩が施され、小さな花模様も繊細に表現されているかわいくも美しい作品となっています。
オールドノリタケカップ&ソーサー「日本の風景」
1928年頃に製造されたカップとソーサーのセットです。
日本の庭園と着物の女性が描かれており、珍しい意匠が特徴です。カップとソーサーの全面に描かれたデザインには、金彩が施されており非常に豪華な印象を与えます。日本らしい配色も印象的です。
オールドノリタケティーポット
1911年頃に製造された背高のティーポットです。全面に金彩が施されており、豪奢な印象を与えます。側面にはオレンジ色の椿が描かれ、赤と青の意匠も鮮やかです。100年前に作られた作品とは思えないほど、美しいものになっています。
オールドノリタケ孔雀紋ティーセット
1911年頃に製造されました。明るい青と黄色のラインが施され、その中には桃色の花の中を舞う美しい孔雀が描かれています。ティーポット、シュガーポット、クリーマー、カップ、ソーサーのセットです。
オールドノリタケコーヒーセット
1911~1921年頃に製造されたコーヒーカップ18点セットです。
白磁に金彩で花模様が描かれています。金彩部分は盛り上げ装飾が施されており、立体感がアクセントとなっている上品なデザインです。
オールドノリタケの金彩は金の含有度が多く、豪華な輝きを放っています。
まとめ
オールドノリタケは、日本を代表する陶磁器ブランド・ノリタケの、創業から約60年の間に製造された製品の総称です。繊細で上品、そして優雅なデザインは現在でも古臭さを感じさせず、今なお世界中で愛され続けています。
オールドノリタケの製品は買取市場でも人気が高く、製品によっては高額で取引されています。新品、未使用、箱入り、セットで揃っている場合は特に人気です。
キズや汚れがあっても、査定額が高くなるものも数多くあります。オールドノリタケの買取を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。
古美術八光堂