着物の収納方法を解説!大切な着物をより美しく長持ちさせるために
「着物をどうやってしまっていいかわからない」「どうしたらきれいに長持ちさせられるの?」
そんなふうに思っている方は多いのではないでしょうか。着物には、普通の洋服とは違う独特なお手入れ方法・収納方法があります。そこで今回は、着物をより美しく長持ちさせるための正しいお手入れ方法と収納方法をご紹介します。
着物の劣化につながる5つの要素
着物は、収納方法や収納の状況によって、シミやカビ・シワなどの劣化を起こすことがあります。これらの原因となる要素は大きく分けて以下の5つです。
湿気
着物には、一般的な洋服にくらべて湿気を含みやすいという性質があります。湿気の高い場所に収納していると、カビが生えてしまうことも。梅雨や暖房器具を使う季節も、湿気には注意が必要です。
虫
着物は絹でできていることが多いため、本来は虫はつきにくい衣類です。しかし、虫が好むウールなどと一緒に保管している場合、その影響を受けてしまうことがあります。
皮脂などのタンパク質
着物に皮脂などのタンパク質汚れがついたまま保管しておくと、虫がつきやすくなります。収納する前に汚れがないかしっかりとチェックするようにしましょう。
ガス
着物と一緒に保管している帯板やゴム製品など接着剤を用いている製品は、ガスを発生させることがあります。そして、そのガスが影響して着物にダメージを与えることも。
紫外線
紫外線を浴びると、着物の色は変色しやすくなります。日光の当たる場所に保管しておくのは避けましょう。また、紫外線のみならず、お部屋の灯りの影響で変色が起こることもあります。保管時はたとう紙に包んでさらに風呂敷をかけるなど、光が当たらないようにすることが大切です。
着物を収納する前に必ずお手入れを
前項で解説したように、着物を劣化させる要因はさまざまあります。これらの要因を排除して正しく収納・保管しておくことが、着物をより美しい状態で長持ちさせる秘訣です。
着用後の着物は意外と汚れている?
着物を着る際は下に襦袢(じゅばん)などの下着を着るので、着物自体はあまり汚れないのでは?と思っている方は多いかもしれません。しかし、きれいに見えても、汗や食べこぼし・泥・土・ほこりなどの汚れが付いていることが多いもの。こういった汚れをそのままにして収納してしまうと、カビや虫食い・変色・シミなどが起きやすくなります。いざ着るときにこのような事態にならないように、収納する前にしっかりと汚れをチェックしましょう。
また、着用しているときに汚れがついたら、その場ですぐに拭き取るなどの対処をすることも大事です。
収納前の汚れのチェック方法
着用後はまず着物用のハンガーにかけて、汚れがないかどうか全体的にチェックを。特に、食べこぼしがつきやすい胸まわりや、汚れやすい袖振り、土や泥がつきやすい裾などは入念に。あわせて、タオルで上から下に向かってほこりなどの細かい汚れを払い落とします。
収納前のシミ抜き
着物にシミがついてしまっている場合は、シミの種類によって対処法が変わってきます。
以下、シミの種類ごとの対処方法について解説します。
油性の汚れがついていた場合
ファンデーションや口紅・皮脂汚れ・ボールペンの汚れなど、油性のシミがついていた場合は、ベンジンを使います。ガーゼにベンジンを出して湿らせ、シミのついている部分を軽くトントン叩いて汚れを落としていきます。ガーゼを取り替えながら何度か繰り返しましょう。このとき、こすらないように注意を。いっぺんに取ろうとせず、あくまで何回かに分けてトントンと優しく行うのがコツです。
水性の汚れがついていた場合
お茶やコーヒー・醤油など水性のシミがついていた場合は、水で薄めた水性洗剤を使います。油性汚れと同様に、薄めた水性洗剤でガーゼを湿らせ、シミがついている部分をトントンと叩いて汚れを落としていきましょう。何度か繰り返して汚れがとれたら、最後は水だけでガーゼを湿らせてトントンしながら洗剤を落としてください。
ただし、油性汚れも水性汚れも、慣れていない方は呉服屋さんやクリーニング店などの専門家に依頼したほうが安心です。
汚れを落とした後は、ハンガーで陰干しを
汚れをきれいにした後は、日光の当たらない場所で半日から1日ほど干して汗や湿気を飛ばしましょう。このとき、1日以上干すのはNG。あまり長くハンガーにかけていると、シワができたりおかしな型がついたりすることがあります。
着物の収納方法
収納前のお手入れが済んだら、着物を収納しましょう。
収納方法の基本
着物の収納方法の基本は以下の3点です。
しわができないように畳む
まずは着物を丁寧に畳みましょう。きれいに畳んでおくことで次に着るときにシワを伸ばしたり形を整えたりする手間が省けます。
たとう紙に包む
着物を畳んだら、「たとう紙」という専用の紙で包みましょう。たとう紙は通気性がよく、着物の湿気を吸ってくれます。
桐箱や桐のタンスへ
着物を収納するのに最適なのは、桐箱や桐タンスです。桐には防虫効果と防湿効果があるため、着物の劣化を防いでくれます。
桐箱や桐のタンスがない・・・プラスチックケースへの収納方法
着物の収納には桐箱や桐たんすが最適ではありますが、高価な上に場所をとるため、なかなかマンションなどでは用意しづらいかもしれません。そういった場合は、プラスチックケースで代用することが可能です。プラスチックケースは湿気を呼びにくいという点で着物の収納に向いています。以下のポイントに気をつけて収納しましょう。
可能な限り大き目のケースを用意
プラスチックケースにもさまざまな大きさがありますが、たとう紙に包んだ着物を曲がらずに入れられるサイズが理想です。一般的なたとう紙のサイズは、二つ折りのもので90cm×35cm程度、三つ折りのもので65cm×35cm程度です。可能であればこのサイズが入るケースを用意しましょう。
もし、このサイズがない場合は、たとう紙ごと二つ折りまたは三つ折りにして収納します。これ以上折ってしまうと、シワがつきやすくなってしまいます。
必ず除湿剤や防虫剤を一緒に入れる
プラスチックケースは湿気を呼びにくいものではありますが、桐箱や桐たんすとちがって湿気を吸収してくれるわけではありません。また、ケースを置いておく場所によっては湿気が発生しやすいこともあります。ケースの中に除湿シートを敷き、湿気対策をしておきましょう。あわせて、防虫剤も入れておくと安心です。
着物を美しく保管するための対策
着物を美しく保管するためには、以下のポイントに留意しましょう。
湿気対策
着物に湿気を含んだまま保管していると、雑菌が繁殖したり虫やシミ・カビなどがついたりして着物にダメージを与えてしまいます。湿気対策のポイントは、「着物についた湿気を取り除くこと」「湿気をよせつけないこと」のふたつです。
着物についた湿気を取り除くために
前述したように、着物を脱いだあとに汗や湿気を飛ばすために、ハンガーにかけて半日から1日干しておきましょう。
このほか、年に2回ほど「虫干し」という作業をすることも大事です。これは、着物を収納ケースから出してハンガーにかけて干し、風を通す作業です。よく晴れていて乾燥している日を選んで、直射日光の当たらない場所で行ってください。4〜5時間干しておけば湿気を取り除くことができます。このとき、着物だけでなくたとう紙も干して風を通しましょう。また、「虫干し」以外にも、ときどきケースを開けて換気を。
湿気をよせつけないために
前述したように、着物はたとう紙に包んでから湿気を呼びにくい桐箱や桐たんす・プラスチックケースに収納しましょう。プラスチックケースの場合は、除湿シートを敷くことを忘れずに。また、ケースを置いて置く場所も重要です。お風呂場や洗面所に近い場所は湿気がたまりやすいので避けてください。押し入れにしまう方は多いかと思いますが、押し入れも湿気が溜まりやすい場所です。押し入れにも除湿剤を置いておきましょう。
また、たとう紙も永久的に湿気を吸ってくれるわけではありません。たとう紙にも寿命がありますので、茶色の斑点が出てきたら取り替えを。
このほか、着物を収納する場所にはたとう紙以外の紙類を入れないようにしてください。化粧箱や証書などを一緒に保管している方もいるかと思いますが、湿気が発生する原因にもなるので避けましょう。新聞紙をケースの下に敷くのもNGです。
また、複数の着物を一緒に収納するときは、収納する順番にも気を配ってください。振袖のような生地の多いものは上のほうに、夏用着物のような生地の薄いものは下のほうに。
虫対策
湿気対策とともに必ず行いたいのが虫対策です。前述したように、ウールの着物や羽織・洋服と一緒にしまうのは避けてください。
また、ケースの中に着物用の防虫剤を入れておきましょう。ただし、防虫剤は正しい入れ方をしないと効果を発揮できないばかりか、着物にダメージを与える原因にもなってしまいます。以下の点に気をつけてください。
【防虫剤を入れるときの注意点】
直接着物に触れないようにする
防虫剤は化学薬品なので、着物に直接触れるとシミや変色を引き起こすことがあります。
引き出しの上部に置く
防虫剤は、たんすやケースの中でゆっくりと気化して長期間着物を虫から守ってくれるもの。気化した防虫剤は空気よりも重たくなり下に沈む性質があるため、引き出しの上部に入れておくことが大事です。
種類の異なる防虫剤を入れないようにする
種類の異なるものを一緒に入れてしまうと、組み合わせによっては化学反応が起きて着物が変色したりシミがついたりすることもあります。入れる防虫剤は必ず一種類にしましょう。あらたに防虫剤を入れるときは、以前に入れたものが残っていないか確認してください。
汚れ(皮脂などのタンパク質)対策
汗や皮脂などのタンパク質を含む汚れは、着物を劣化させてしまいます。着用後は半日から1日ハンバーにかけて陰干しをし、汗を乾かすようにしてください。
紫外線対策
紫外線による変色や劣化を防ぐためには以下のポイントに注意を。
日光の当たる場所に置いておかない
汗や湿気を飛ばすために干すとき、収納するとき、いずれも日光が当たらないように気をつけましょう。
蛍光灯が当たる場所におきっぱなしにしない
蛍光灯の光にも微量の紫外線が含まれていますので、注意を。たとう紙に包んでいる場合も、蛍光灯のもとに長時間置くのは避けましょう。
変色対策
着物が変色する理由は、紫外線の影響や防虫剤の化学反応などです。前述した防虫剤の使い方・紫外線対策を参考して、変色を防ぐようにしましょう。
シワ対策
着物にシワがついてしまうと、次に着るときに大変です。次回もきれいな状態で着られるようにするには、畳み方に注意しましょう。また、ケースに収納するときにぎゅうぎゅうに詰めない・重ねすぎないことも大事です。そのためにも、ケースは大きめのものを用意し、スペースが十分あるところで保管するようにしてください。
収納・保管ができない場合の方法は?
着物を持っているものの、「収納・保管する場所がない」「ほとんど着ないので手放したい」という方もいるかもしれません。また、「遺品整理をしていたら着物がたくさん出てきて困ってしまった」という声もよく聞きます。着物の処分方法・破棄方法は以下を参考にしてください。
自治体の廃棄方法に応じて処分する
着物を簡単に手早く処分したい場合は、ゴミとして出すことも可能です。多くの自治体で着物は可燃ゴミまたは資源ゴミとして分類されるようですが、各自治体によってゴミの区分や出し方は異なりますので、お住まいの地域のルールに従ってください。
家族・友人・知人に譲渡する
着物は普通の洋服よりも高額で価値があることが多いため、ゴミとして処分するのは抵抗があるという方は多いかと思います。そういった方は、家族や友人などまわりの人に譲渡するのがおすすめです。自分で買うと良い値段のするものですから、欲しいという方は意外と多いかもしれません。
リサイクルショップで売却
リサイクルショップによっては着物の買取や引き取りをしてくれるところもあります。ただし、リサイクルショップでは着物そのものの価値を正しく判断するのは難しい場合が多く、古着としての査定になることがほとんどです。価値の高い着物・高価な着物だったとしても、高値での売却はあまり期待できないでしょう。
フリマアプリなどのネットオークションで売却
フリマサイトやアプリ・ネットオークションで売却するというのもひとつの手です。フリマアプリやネットオークションに慣れている方にはおすすめです。気に入った人がいれば想定よりも良い値段で買い取ってもらえることもあります。ただし、ご自身で着物の正しい価値をわかっていないと適正な値段をつけるのが難しく、実は高級な着物を安値で売ってしまう恐れもあります。
買取業者に査定を依頼する
着物の処分方法として一番おすすめなのは、着物の買取を行っている専門の業者に査定依頼することです。着物の正しい価値がわかるスタッフがいるので、納得のいく価格で売却しやすくなります。ものによっては高額な価格で買い取ってくれることもあるでしょう。着物の処分に困っている方は、一度査定依頼してみることをおすすめします。
買取業者に依頼する際のポイント
買取業者に査定依頼をする際には、着物の正しい価値を見極めてほしいものですね。以下のポイントに留意しましょう。
証紙を一緒に提出する
証紙とは、着物を仕立てる前の反物の産地や素材・織元などを証明するものです。有名な産地の反物や伝統工芸品の反物には、証書がついています。証書があれば着物の価値が一目瞭然なので、査定の正確さが増します。
小物も一緒に売る
着物の一緒に帯や帯留め・長襦袢・バッグ・草履といった小物がある場合は、一緒に査定に出しましょう。着物単品よりも高い査定がつく可能性があります。
お手入れは事前にやっておく
シミ抜きなどのお手入れを行っていたとしても、査定の金額にそこまで大きく差が出るということはありません。しかし、美しい状態の方が印象は良くなるため、着物を査定に出すときはできるだけ事前にお手入れをしておきましょう。収納前に行うのと同じ容量で、陰干しをして汗や湿気を飛ばす・シミ抜きをする・ほこりを払っておくなどのお手入れをして、においや汚れを取り除いておきましょう。
着物の専門家がいる業者に依頼する
着物の買取依頼は、専門家がいる大手業者を選ぶと良いでしょう。こういった業者は独自の販路を持っていることが多いので、買取価格が若干高くなる可能性があります。また、複数枚の着物がある場合は、出張買取や宅配買取に対応しているところがおすすめです。
遺品整理で祖母の着物が出てきた。着物の処分方法とは?
▶専門家による査定を受けられる古美術八光堂は着物買取にも対応しています。
着物買取
まとめ
着物をより美しい状態で長く保管するには、収納前のお手入れや収納の仕方が鍵になります。今回ご紹介した方法をぜひ試してみてくださいね。
遺品整理で祖母の着物が出てきた。着物の処分方法とは?
▶専門家による査定を受けられる古美術八光堂は着物買取にも対応しています。
着物買取