骨董品の相続対策とは?相続税の決まり方と相続の際の注意点
「骨董品を相続財産にする場合、相続税の計算はどうなるのか?」「相続か贈与かどちらが良いのか」など骨董品の相続対策にお悩みの方もいるのではないでしょうか?この記事では、骨董品にかかる相続税や相続する際の注意点などについて解説します。
骨董品の相続税とは?
まずは骨董品や骨董品にかかる相続税の基本について解説します。
骨董品とは?
骨董品とは、制作時点から時間を経てもなお希少価値のある工芸品・美術品全般を指す言葉です。絵画(日本画、洋画、現代アート)、掛軸、茶道具、陶器、工芸品、刀剣、甲冑、中国骨董、象牙、珊瑚などなど、さまざまな種類があります。1934年にアメリカで制定された通商関税法の骨董品の定義は「製造時点から100年を経過した手工芸品・工芸品・美術品」となっています。
相続財産評価額とは?
骨董品の価値や金額を計算する際には「相続財産評価額」が使われます。相続財産評価額は相続税を計算するときの財産価値の基準になります。
骨董品の相続財産評価額は時価扱いになる
骨董品の相続財産評価額がどのようにして決まるのか?について解説します。
骨董品の相続税は時価?
相続財産の評価は、原則として相続が開始した日(死亡日)の時価で計算すると相続税法 第22条で定められています。例えば、絵画を相続した場合、「死亡日」の売買価格や市場価値(時価)を基に絵画の価値を評価して金額を計算し、相続税を課税するのです。
また、財産評価基本通達135条によると、以下の2点によって骨董品の価値を評価すると定められています。
(2) (1)に掲げる書画骨とう品以外の書画骨とう品の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
出典:国税庁 第2節 たな卸商品等
「販売業者が有するものは、業者のたな卸商品等の評価によって定められる」
「販売業者が有さないものは、売買実例価格・精通者意見等を参考に評価する」
という2点を把握しておきましょう。
骨董品や美術品の時価はどのように判断される?
骨董品や美術品の評価額(時価)を計算するには以下のようなポイントを参考に行います。
・買取業者の査定
・専門家による鑑定
・購入した価格
ここまで解説したように、骨董品の相続税は時価によって課税されます。熱心なコレクターであっても、正確な時価を判断するのは容易ではありません。そのため、骨董品を相続した際には、専門家による査定を検討しましょう。
相続財産の中に骨董品が!どのような部分に注意すべき?
相続財産の中に骨董品がある場合、まずは以下2点に注意しましょう。
専門業者で時価計算を
金額がさほど高額ではない場合、市場価格を調査して自身で金額・課税額を計算するケースもありますが、高額な骨董品の金額を素人が正確に計算するのは難しいことも。そのため、相続財産の中に骨董品がある場合、専門業者で時価計算をしてもらうことをおすすめします。
注意しなければならないのは、ブランドショップや質屋などの総合買取店で査定してもらうことです。このような業者の中には、市場の付加価値を調査せずに、現状の業界相場・地金相場以下でしか見積もりをしないことがあります。相続財産の価値を正しく判断するためにも、相続した作品の専門知識を持つ査定士がいる業者に依頼しましょう。
資産隠しに使うのはNG
骨董品は人気や希少性の観点から「付加価値」が付きやすいとされています。また、「骨董品の価値や金額は税務署にとってわかりにくいため、申請額を圧縮でき節税になる」といったセールスによって高額な骨董品を販売する業者もいるようです。
このような理由から骨董品が資産隠しに利用されるケースがあるようですが、資産隠しは脱税行為です。相続税は税務調査が入りやすく、万が一税務調査で資産隠しが発覚したら、相続税法違反による告訴や重加算税を課せられる可能性があります。骨董品を資産隠しに利用するのは絶対にやめましょう。
相続?贈与?それぞれのメリット・デメリットを解説
相続財産とするか贈与財産とするかも判断が難しいところです。相続と贈与はどのような違いがあるのか?どちらを選ぶべきなのかについて解説します。
相続と贈与の違いは?
相続と贈与には以下のような違いがあります。
・贈与:財産を渡す人が亡くなる前に、贈与人が相続人に財産を引き継ぐ
相続する際には相続税、贈与する際には贈与税が課税されます。では、それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのかについて以下で解説します。
相続・贈与のメリット・デメリット
相続・贈与、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
相続のメリット・デメリット
相続のメリットは基礎控除が大きいという点です。多少高額な骨董品であっても、基礎控除内であれば相続税がかかりません。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×相続人の人数」となっています。
美術品や骨董品を相続させるデメリットは、「死亡時の財産すべてが相続税計算の算定基礎となるため、美術品以外で基礎控除を超えた財産がある場合、節税にならない」「値上がりする財産の場合、値上がり分にも相続税がかかってしまう」「時価の評価方法や基準によって相続人同士でもめてしまう」などが挙げられます。
贈与のメリット・デメリット
贈与のメリットは、110万円の年間控除枠を利用できるという点です。年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかかりません。また、美術品や骨董品などの相続税対策に向いている相続時精算課税制度を利用することも可能です。詳しくは次の項目で解説します。
贈与のデメリットは、相続開始3年以内の贈与に関しては、相続税を支払う対象になってしまうことです。これは、死期が迫り税金対策のために慌てて贈与をする人に対処するための法律です。財産を渡す人が亡くなってしまう3年以内の贈与はなかったことになり、相続税を支払う必要があるので注意しましょう。
相続時精算課税制度の活用とは
相続時精算課税制度の特徴は以下の2点です。
・贈与時の価値で相続税が計算されるため、値上がりが見込まれる骨董品の相続対策に向いている
2500万円までの贈与税の猶予も大きなメリットですが、注目すべきは「贈与時の価値で相続税が計算される」という点です。相続するまでに骨董品が大きく値上がりしたとしても、贈与時の金額で課税されるため相続対策に適しています。
相続と贈与はどう判断すればよい?
相続・贈与どちらにもメリット・デメリットがあります。ただし、贈与であれば相続時精算課税制度が活用できます。骨董品の相続を検討していて、早めに準備ができるのであれば、贈与を選択するのもよいでしょう。将来的に向けて、相続か贈与かどちらかを決めかねている方は、税理士などの専門家に相談してみてください。
相続・贈与に関わらず、骨董品の相続で大切なポイント
骨董品を相続させるか贈与させるかに関わらず、骨董品の価値根拠を示すために以下の書類は大切に保管しておきましょう。
・贈与の契約書
・売却時の見積
・売却時の明細控え
これらの書類は骨董品の価値根拠を示すのにとても重要になります。贈与税・相続税・売却時の譲渡所得税などの申告時に、これらの書類がないと税務署に認められない可能性があるため大切に保管するようにしてください。
骨董品の価値を正確に判断できる!専門業者を選ぶ際のポイント
相続か贈与かの判断だけでなく、骨董品にかかる相続税を計算するためには、正確な査定が重要になります。そのため、骨董品の査定を行う専門業者の選定が非常に重要です。正確性の高い見積りを出してもらうために、以下のような条件を持った専門業者を選びましょう。
骨董品の買取実績が豊富
絵画(日本画、洋画、現代アート)、掛軸、茶道具、陶器、工芸品、刀剣、甲冑、中国骨董、象牙、珊瑚など、多種多様な骨董品の買取実績が豊富な業者を選びましょう。実績が豊富であるほど、信頼性が高いと考えられます。買取実績は、HP等などから確認できます。
骨董品に詳しい鑑定士が所属している
相続する骨董品に詳しい鑑定士が所属しているかどうかも重要です。買取実績が豊富でも、骨董品の種類によっては経験が乏しいという可能性もあります。相続する骨董品の専門家や鑑定士がいるかどうかも合わせて確認しましょう。
メディア露出がある業者
美術品や骨董品の鑑定に関する番組など、鑑定士・スタッフがメディアに露出経験があるかどうかも確認しましょう。メディア露出が豊富な場合、信頼性が一定担保されていると考えられます。また、本体の運営会社も一定の信頼性があると判断できるでしょう。
アフターフォローがしっかりしている
サービスを利用した後のアフターフォローがしっかりしているかどうかも確認しておきたいポイントです。クーリングオフ制度に関しての記載やサービス後の相談窓口など、HP等から確認してみましょう。
担当者の対応が丁寧
電話やメールで問い合わせをした際の担当者の対応も確認しましょう。担当者の対応が丁寧で感じもよい場合は、スタッフへの指導が行き届いており、一定の信頼性があると判断できます。また、相談なども気軽にしやすいといえます。
これらの条件をひとつだけでなく複数満たしているかどうかが重要です。特に査定の信頼性に直接関わるため、買取実績と専門の査定士がいるかどうかは必ず確認しておいてください。
骨董品高額買取
まとめ
骨董品は上手に活用することで有効な相続対策となります。しかし、骨董品は価値が上がるのに時間がかかるもの。早まって売却してしまったり、相続人が価値を正確に知らなかったりすると財産がかえって目減りしてしまうリスクもあります。
骨董品を相続対策として利用する場合は、相続税の決まり方や相続か贈与かの判断の他、相続税の評価に大きく関わる鑑定業者の選定に十分注意してください。また、税務署に骨董品の価値を申告する際には、「購入時の領収書・贈与の契約書・売却時の見積・売却時の明細控え」などの有無が非常に重要になります。紛失しないように大切に保管するようにしましょう。
骨董品高額買取
公認会計士・税理士・行政書士。相続税を専門に取り扱う税理士事務所の代表。相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,700件以上(累計9,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスをはじめ、オーダーメイドの生前対策・相続税還付業務等も行う。相続関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。現在グループ全体で250名を超える相続専門のプロフェッショナル集団。
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