季節を楽しむ乾山写し
乾山写しについて
美味しい料理を目で楽しませてくれるもののひとつに器があります。
旬の食材を使った料理のそばに、そっと添えられるように描かれる器の文様は、私たちに季節の移り変わりを感じさせてくれます。
まだまだ寒い日が続きますが、いち早く春を告げる「梅」が描かれている器に盛られた料理が運ばれてくると心まで温まりますね。
今回は特に梅の文様が多く用いられる「乾山写し」をご紹介いたします。
“乾山”とは
まず、「乾山写し」の「乾山」とは、江戸時代に活躍した京焼の尾形乾山のことです。
乾山は、京焼の祖と言われる野々村仁清から技法を学びました。京都に窯を開いてからは乾山焼とよばれる優れた作品を多くつくりました。その作風は大胆で自由であり、無駄を省いた洗練された印象で、世の人々に広く親しまれていました。
兄は画家の尾形光琳で、弟の乾山がつくる器に兄の光琳が絵付けをした合作を制作するほど仲がよかったといわれています。乾山は光琳の影響を受けて、琳派の華麗な花文様を京焼に取り入れます。そして、単純化された図案や巧みな色使いが特徴的な、素朴で味わい深い独自の世界観を築きあげました。
“写し”とは
次に焼物でいう「写し」とは、陶芸家の偉人に敬意を表して、時代の陶芸家たちがその作風を採り入れて写した作品という意味です。「仁清写し」は野々村仁清の作風を、そして「乾山写し」とは尾形乾山の作風を写した作品ということです。京焼の家元の永楽善五郎や、三浦竹泉、久世久宝、江戸の今戸焼の白井半七も乾山写しの作品を多く製作しています。着物やお菓子にも、乾山写しのものを見かけることもありますね。その中でやはり多く写されるのが「梅」の文様です。
乾山の兄光琳の傑作に「紅白梅図屏風」があります。光琳に影響を受けた乾山にとっても梅は特別なモチーフであったことでしょう。乾山焼の梅は単純化された図案の中に、空に向かって枝を伸ばす幹の生命力と、花弁の可憐な愛らしさを感じられます。「写す」という言葉には、ただ真似をするだけではなく、先の技術を取り入れて新しい作品を作りあげるという意味があります。だからこそ、創意工夫された乾山焼は今もなお、写され続けているのではないでしょうか。私たちも、器に描かれた文様をゆっくりと眺め、季節を楽しむ心を忘れずにいたいものですね。
さいごに
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