苦痛の中で絵を描き続けた異才の画家・鴨居玲
鴨居玲について
みなさんこんにちは。
最近は遠方に住んでいる友人が遊びに帰ってくることが多く、少し忙しめな毎日を送っています。
昔話に花が咲き、気付いたらこんな時間!ということもしばしば。
友人の帰りを見送った後はやっぱりさみしくなりますね。
次はいつ会えるのやら・・・。
記事に関係ない前置きはここまでにして、作家の紹介に移りたいと思います。
暗 異才な画家・鴨居玲
今回紹介するのは、鴨居玲(かもい れい)という画家です。
聞き覚えの無い方も多いかと思います。
というのも、展覧会がそれほど多くなく、展示点数が多い美術館も茨城県と石川県ととても遠いので見かける機会は少ないと思います。
近くで展覧会の開催があればなぁ・・・。
絵を見る機会は少ないですが、一度でも目にしたことのある方は名前を憶えてしまうことでしょう。別の絵を見ても「あ!鴨居玲だ!」とわかるくらいになると思います。それくらい強烈なタッチの絵が多いです。
暗く陰鬱で引きずり込まれるような絵の中に、鴨居本人の叫びが聞こえてくるようです。
この記事の作成にあたって、私も資料をあさったりして調べながら執筆しているのですが、正直これはかなり精神にキます。
自分の精神状態が良い時に見るのがベストだと思います。
暗~死へ 鴨居玲の軌跡
さて、ひとまず作品の話は置いておいて、彼の軌跡についてお話しましょう。
まず出生に関してなのですが、なぜか生年月日と生まれた場所に2つの説が存在します。
どうも出生届が出されていなかったらしく、出自に関してはいまだ謎のままです。
出身地は石川県金沢市と大阪府高槻市の説があり、どちらも彼にとってゆかりの場所だったことは間違いないようです。
1946年に金沢の美術学校に入学し、宮本三郎に師事します。
卒業してからは芦屋・田中千代服装学園にて講師をしていたようです。
その後、1959年頃にフランスに渡り、スペインにアトリエを構える1971年までは様々な国を転々とし、日本にも度々帰ってきていたようです。
もしかしたらその時帰国していた鴨居から直接絵を買われたという方もいらっしゃるかもしれませんね。
晩年は再び金沢に戻り、美術工芸大学で非常勤講師をしていたようです。
そして、1985年に心臓病と創作に行き詰ったことで、神戸の自宅にて自殺してしまいます。何度も自殺未遂を繰り返したのちのことだったそうです。
サインの変化…心情と作風
鴨居のサインですが、スペインに移住する1971年頃に“ Rei Kamoi ”から“ Ray Camoy ”に変わっています。このあたりで作風にも少し変化が見られます。
鴨居の若い時代の作品は、風景画、抽象画、人物画など様々でどれも一見すると静かなようにもみえますが、確かな狂気と混沌が垣間見える作風でした。
引き込まれるような暗さはすでに確立されており、風景画にしても鴨居らしさが見て取れると思います。
サインが変わる1971年より少し前からは人物画が多くなります。
なにか含みのあるような独特な表情を浮かべているものも多く、色遣いも暗い雰囲気の中に赤や緑を使ってその恐ろしい雰囲気を作り出しています。
晩年には自画像ばかりを描いていたそうで、この頃の鴨居は創作に行き詰り、周りからの期待に耐えられず、精神的にもかなり不安定だったようです。
それは絵にも如実に表れており、彼の感じていた絶望や絵を描くことの辛さを感じ取ることが出来ると思います。
当時の鴨居は「絵は私にとって苦痛そのものです」と話していたという話もあります。それほどの苦痛の中でも絵を描くことを止めず、その結果多くの人の心に訴えかける作品を作り出していきました。
エネルギーある作品~生命(いのち)をかけて生命を注ぎ込む~
鴨居は自身に一枚の絵を描く前に100枚のデッサンを描くことを課していたそうです。
描かれたデッサンは数ヶ月手を加えられず、イメージが固まりエネルギーが溢れ出してから一気に描き上げていたとのこと。
まさに狂気!常人にはマネできません。
また、一度筆を取ってからは一心不乱に絵を描いていたようで、展覧会の当日にはげっそり痩せこけ、かろうじて生きていたようだったと伝えられています。
本当の鴨居玲
鴨居の容姿は、おどろおどろしい彼の作品からは予想できないほど美形だったそうです。
以前、直接お会いしたというお客様からもハンサムだったというお話を聞かせていただきました。
性格も我儘で子供っぽいところがあるものの、そういったところも含めて憎めない人物だったそうです。
だからこそ、お会いした事のある方は彼を応援し続け、ファンで居続けたのでしょう。
エネルギーを出し切った鴨居が周りの人達に癒して貰い、力を蓄える時間。
絵を描いてない時のこの瞬間がこそが、本当の自分を出せる瞬間だったのかも知れませんね。
私も叶うなら一度お会いしてみたかったです。
さいごに