【大阪本店:絵画買取】斎藤清 木版画
斎藤清ならではの作風
斎藤は、もとは独学で油絵を描いていましたが、安井曽太郎の作品をきっかけに木版画の道に進み、やはりそこでも独学で版画制作を行いました。
「木版画」というと、浮世絵などのイメージが強いせいか、何となく日本風のモチーフをイメージしがちですが、斎藤はパリ、アメリカ、メキシコ等海外の風景も積極的に描いていました。
もちろん日本の田舎風景も多く作品にしていましたが、海外の景色を描いたものも多くあるのです。
斎藤は対象を絵に起こす際、何度も繰り返しスケッチをしていたと言います。そうして構図を幾度も取り直し、描く対象の形や質感を理解し、次第に単純化させていったのでしょう。
形が単純化してくるとそれはデザインになります。イラストやロゴマークなどに近くなってくるのです。そうなってくると近代・現代的な雰囲気になっていきますね。
更に言えば、斎藤の作品の構図は少し独特で、描く対象を中心には据えず少しずらしたり、大胆に大きく画面いっぱいに配置したりしています(この辺り、私は歌川広重に通ずる部分があるように感じますが、皆様は如何でしょうか)。
対象を中心にドンと据えるような所謂「観光名所案内」的なものとは違い、視点をずらして構図を取っているので、そこに新しさを感じられるのでしょう。
斎藤清の作品にモダンさを感じるのは、恐らくこういった背景があるのではないでしょうか。
木の温かみを活かした作品
斎藤は生涯木版画を制作していました。銅版画でもリトグラフでもなく、なぜ木版画だったのでしょう。
斎藤の作品に「地の幸」というものがあります。大地に育つはつか大根を描いたユニークで力強い作品ですが、この大根の葉っぱは木の木目を利用して描かれたものです。
他にも、このように木の板に元から刻まれている木目を利用して制作された版画が多数あります。ある時は人影、ある時は猫の体…。様々なものに木目模様が配されています。
木目調の模様が入ることにより画面にも変化が出て、鑑賞する側としても面白さを感じることができます。また木目の持つ温かさすら画面から匂いだってくるような気さえします。
恐らくですが、この木版画特有の「木の質感」や「温かみ」を 斎藤は大事にしたのかもしれません。
その証拠…に、なるかは分かりませんが、 斎藤の作品は、冬を描いたものであっても、どこか冷たさではなく、温かさを感じます。それは 斎藤清のファンならば、誰しもが感じていることなのではないでしょうか。
和洋折衷の雰囲気が醸し出すモダンさ、そして木版画特有の温かさ。
それこそが斎藤清の真骨頂なのかもしれませんね。
さいごに