【出張買取:骨董品買取】東洲斎写楽 浮世絵
江戸の浮世絵
浮世絵のモチーフのなかで、美人画といえば美人が後ろを振り向く姿を捉えた菱川師宣の「見返り美人図」、富士山といえば富士山の有る風景を描いた葛飾北斎の富嶽三十六景が有名ですが、歌舞伎役者といえば私は東洲斎写楽の歌舞伎役者の大首絵を思い浮かべます。
大首絵というのは、浮世絵の表現形式のひとつで、歌舞伎役者や美人女性の胸より上の部分が描かれたものです。それは今でいうところのブロマイドのようなもので、江戸時代の人々は、お気に入りの美男美女のお顔をアップで見ることができる大首絵を集めていました。
写楽が浮世絵を制作したのは江戸の中頃で、同時期には喜多川歌麿や歌川豊国などの絵師が活躍していました。
ただ、写楽が浮世絵を制作したのはたった10ヶ月という短い期間でした。しかもその正体は諸説あるものの、未だに明らかになっておらず、存在が今なお謎めいています。
現代では写楽の浮世絵は高く評価されていますが、意外にも当時はあまり人気がなく、歌麿の方が人気が高かったと言われています。
では写楽の浮世絵は、他の絵師と比べるとどのような違いがあるのでしょうか。
写楽の浮世絵
他の絵師が描いた大首絵の役者は、顔の大きさや目の描き方にそれほど違いは見られません。様式に則って描き、美化された役者像を表現していたのです。
それに比べて写楽の描いた役者絵を何枚か並べてみると、同じように様式に則って描いている中にも、骨格、鼻筋、目の彫りなどを描き分けており、個々の特徴を捉えたまるで似顔絵のように見えるのがお分かりになると思います。
ブロマイドのような立ち位置であったので、似顔絵のようなより本物に近い絵の方が売れるように思われるかもしれませんが、その当時江戸の人々が求めたのは、理想化された男前や美人だったのです。それを知った上で写楽は役者の目の大きさや、口や眉の形、首の太さまで補正せず、ありのままを描いたのです。
写楽以外の絵師が描く大首絵は、ある意味補正された修正後の顔写真のようなイメージでしょうか。補正するということは、こうあって欲しいという理想があるからです。
理想を表現した美しい顔は、見る人の心を惹きつけ、心躍らせます。それは決して悪いことではありません。けれども、均整のとれた顔立ちよりも、部分部分に特徴を感じられる顔立ちの方が親しみや愛着が湧くものです。
写楽は、手心を加えることなくありのままの姿を描き、そこに喜怒哀楽といった人間らしい感情をも表現しています。ただ美しさを感じさせるだけのものではなく、人間の真実を描き出したのでした。
さいごに
「理想化されたもの」と「真実を写しだしたもの」。どちらもそれぞれに良さがあり、どちらも素晴らしい作品ばかりです。役者の表情に注目していただくと浮世絵の見方も変わってお楽しみ頂けるのではないでしょうか。
世界に誇る浮世絵師・東洲斎写楽の作品をお譲りしたいとお考えの方は、ぜひ八光堂までご相談ください。
写楽の浮世絵に魅了され、求めておられる方への橋渡しをさせていただければと存じます。