【出張買取:陶器買取】今井政之 花瓶
今井政之の生い立ち
1930年、大阪生まれの今井政之は、幼少時代を疎開先の広島県竹原市で過ごしました。海と山に囲まれた中で虫や魚、花など瀬戸内に生息する動植物をデッサンすることに夢中になったそうです。
少年の頃、海や山で目にした生き物のもつ生命の輝き、その美しさは今井少年の目に焼きつき、今に続く今井政之の作品のモチーフとなっているのでしょう。
今井政之の作品からは、当時の感動を土の上に再現したいという強い思いを感じます。
生き生きとした魚、花たちが踊る作品――。生き物が持つ力強さを感じさせ、見るものの心を癒してくれます。
1946年、県立竹原工業学校金属科を卒業後、骨董好きの父親の勧めで、岡山県備前市伊部にて陶芸家を目指しました。
備前焼作家の鈴木黄哉などに作陶の基本を師事し、また1949年より岡山県工業試験所窯業分室に勤務する傍らで、備中山手焼の研究や土器の発掘、備前・備中の土や陶石の採集や研究を行い、技術と知識を身につけました。
1952年には備前焼作家西川清翠の勧めもあり、京都に活動の場を移し、京焼名工であった勝尾青龍洞に師事、さらに翌年には楠部彌弌を中心とした青陶会の創立に参加、楠部からも作陶技術の指導を受けています。
今井政之は象嵌(ぞうがん)の技法に優れており、世界でも類を見ない「面象嵌」に独自の境地を切り開いています。
「象嵌の今井」と称されるまで
象嵌(ぞうがん)とは、工芸技法のひとつです。 象は「かたどる」、嵌は「はめる」と言う意味があり、象嵌本来の意味は一つの素材に異質の素材を嵌め込むというもので、元は金工や木工芸で古くから使われてきた装飾技法です。例えば、金属を彫り込む「彫金」などの金属工芸、貝を漆器に嵌め込む「螺鈿」(らでん)などの漆芸がそれにあたります。それぞれ色の違った素材を嵌め込んで模様を際立てます。
陶芸作品の場合、ベースとなる土が生乾きの状態で象嵌を施します。土を削り取り、凹んだ箇所に色の違う土を埋め込みます。乾燥が進んだら色土をヘラなどの工具で慣らして密着させます。ベースの土と埋め込んだ土の性質が異なると、ひび割れたり隙間が生じたり、浮き上がりの原因となります。土そのものの収縮率や水分量、乾燥するスピードが異なるからです。そのため、細やかな管理が必要とされます。
世界でも成功した者がいなかった「面象嵌」に、今井政之が取り組み始めたのは、陶芸家として確固たる地位を築いていた30代後半の頃です。「これまで誰もやったことがない、見たことのないものをやりたい」と取組み始めました。それまでも陶芸で、象嵌技術に挑戦した作品は存在しましたが、殆どが線象嵌で、より大きな面に造形を施す面象嵌は難しく、当時まで未完成の領域でした。
数々の受賞を重ねた今井の技をもってさえ、陶芸に象嵌という技法を持ち込むのは困難を極めました。土と土の収縮率を合わせる工夫を重ね、気の遠くなるようなテストを繰り返したに違いありません。多くのデータをとり、数々の失敗を乗り越え、納得のいく作品ができるまで約20年かかったといいます。
長年の土との格闘の末に体得した独自の象嵌技術は、唯一無二のものを生み出したいと強く願った今井政之の執念がなせる業だったのでしょう。
登り窯へのこだわり
「土は自然のもの、デザインも自然のもの、自然に生かすためには、やはりこの自然の焔でないと」という思いから、現代の多くの陶芸作家が扱いやすい電気窯やガス窯を使用するのに対し、昔ながらの薪を用いた登り窯、穴窯で作品を焼くことにこだわりました。
ところが、1965年頃登り窯が煙害の問題となり、何百年と続いた登り窯の使用が京都市内で禁止になりました。「象嵌は登り窯でないと本物は作れない」と確信していた今井政之は、同じ思いの仲間の8人と結集し、1971年に岐阜県兼山町(現可児市)に登り窯の「兼山(けんざん)窯」を築きます。しかし、共同窯には限界があり、その後の1978年に自分専用窯を郷里の竹原の地に竹原豊山窯(登り窯・穴窯)を築きます。
更に収縮率の高い備前の赤土にも果敢に挑戦し、登り窯による窯変(ようへん、火炎による色彩変化)を加味した作品に挑戦していきました。
通常、人の手が及ばない焔の偶然がもたらす美の作用(窯変)を、試行錯誤を経て、自らの作品に取り入れることに成功したのです。
さいごに
「象嵌」「窯変」2つのまったく異なる技を作品の上に共存させた唯一無二の芸術作品。
それが今井政之の陶芸なのです。
文化勲章に顕彰された今も、常に前向きに挑み続けています。
どのように変遷し、作品が生み出されていくのか、今後の活躍からも目が離せませんね!
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