身辺整理の目的・方法を解説。まずは断捨離で不用品の処分をはじめよう
身辺整理とは、自身が死ぬ前に不用品を処分したり思い出の品を整理したりしておくことを指します。終活の一環や、資産を整理して充実したシニアライフを送るためなど、行う理由は人によってさまざま。身辺整理には気持ちがすっきりし、先の人生を身軽に明るく過ごせるメリットがあるともいわれます。この記事では、そんな身辺整理のやり方を具体的な方法とともにご紹介します。
身辺整理とは?目的やタイミングを解説
まずは身辺整理の概要の他、実施する目的やタイミングなどについて詳しくご紹介します。
●身辺整理の目的
身辺整理とは、身の回りにあるものごとを清算すること。家族と自分の生活がよりよくなるために、必要なものだけを手元に残し、シンプルで快適に暮らせるよう、未来のために身辺整理を行います。
死後に遺された家族は、悲しみの中でも行政の手続きなどを進める必要があります。家族の負担を軽減し、迷惑をかけないようにするためにも身辺整理は有効です。不要な相続トラブルを事前に回避することもできます。
身辺整理という言葉にネガティブな印象を持つ方はおられるかもしれませんが、むしろこれから新しい人生を歩んでいくためのポジティブな行動ともいえるのではないでしょうか。
●身辺整理のタイミングは?
身辺整理をするタイミングは人それぞれですが、退職・転職など環境が変わるタイミングがおすすめ。資料・机・スーツ用のたんすなどから不要なものを処分すると、新しい生活を気持ちよく始めることができます。
また介護が必要になったときや、福祉施設に引っ越しをするときも身辺整理にふさわしいタイミングです。しかし気力・体力が必要なので、なるべく健康なうちに行いたいもの。自分でできないときはまわりの人や業者に相談することも大切です。
身辺整理では何を整理する?
次に身辺整理で「整理する物」について詳しく解説します。身辺整理で整理する物は、大きく分けて以下の4つに分類されます。
●自身の財産
身辺整理のはじめに、まずは所有している資産をリストアップしましょう。預貯金・有価証券・株・不動産・車・タンス預金……負債も含めて財産目録を作ります。ネット証券やネット銀行を利用している方は、アカウントへのログイン名なども合わせて記載しておくと遺族がスムーズに手続きできます。
財産の整理は、相続トラブルを回避する側面もあります。財産は遺言書が無い場合、民法にしたがって遺産分割されますが、どれくらい財産があるか明確でなければ適切に分割することができません。
身辺整理で全財産を把握できていれば具体的にこれからの生活の見通しが立てられ、すっきりとした気持ちになれるでしょう。
●借金・ローン
負の遺産と呼ばれる借金やローンも、遺族に相続されてしまいます。借金以外にも固定資産税や所得税、住民税や未払いの医療費などもすべて確認しておきましょう。負債がある場合は返済までのスケジュールを把握し、残りをまとめて返済できないかどうか検討します。遺された人を思いやり、トラブルを回避するためにもきちんと確認しておくことが大切です。
●デジタルデータ
デジタルデータとはパソコンやスマホに保存された写真や動画のデータ、SNSやブログなどのインターネット上のデータ、各種有料サービスなどのことをいいます。まずはすべてをリストアップし、アカント名やパスワードをノートなどに記入しましょう。リストをパソコンに保存すると、パソコンのパスワードがわからずにログインできないトラブルも起こり得ますので、必ず紙などのアナログなものに残します。プライベートな側面も多いので、不要なものは少しずつ削除しておくと安心です。
●不用品
自分の持ち物全てを見直し、不要なものは断捨離していきましょう。これからの生活に本当に必要なものだけを残していきます。処分に迷うものは、一旦保留にしても大丈夫。1年間使わなかったら処分するなど、自分の中でルールを決めて再度見直します。
アルバムなど大切な思い出の品は、何を残しておきたいのかノートに書き出して整理すると、本当に残しておきたいものを見極めることができます。
全てを一度に作業するのではなく、少しずつ着実に進めることが断捨離を成功させるコツです。
身辺整理の進め方。まずは手をつけやすい不用品を断捨離
ここでは身辺整理の進め方について解説します。エンディングノートや整理のスケジュールを準備して身辺整理に臨みましょう。不用品の整理は断捨離を活用することで上手に進めることができます。
●エンディングノートの作成
エンディングノートとは、死後家族に伝えたい思いや、事務的なことを書き留めておくものです。文字にすることで、身辺整理する手順を再確認することができます。
マイナンバーなどの個人情報・通帳・大切な書類を保管している場所などを記載すると、遺族の行政手続きがスムーズになります。
遺言状と違ってエンディングノートに法的な効力はありませんが、家族にとって大切なノートになるでしょう。
●整理のスケジュールを作成
まずは身辺整理のスケジュールを作成し、やることに優先順位をつけるとスムーズに進めることができます。整理し忘れも防げます。ざっくりとした所有物の量と、段取りの確認を行い、無理のないようなスケジュールを作成しましょう。協力者が必要な場合は事前に声をかけて相談しましょう。
●不用品の断捨離
身辺整理といっても何から始めれば良いのかわからずに途方に暮れてしまう人も多いはず。そんな人は手をつけやすい断捨離から始めるのがおすすめです。
断捨離はすべての所有物を確認し、必要かどうか判断していく作業です。粗大ゴミなど処分に申請が必要なものもあるので、不要なものは早めに判断し処分しておきましょう。
断捨離をすることで物理的なスペースができてすっきりとした気持ちになり、物を探す手間や時間も省くことができます。無駄なことにお金を使うことがなくなり、その分お金が貯まりやすくなるメリットもあります。
たくさんある所有物に気が遠くなってしまうかもしれませんが、一度に全て片付けようとせず、こまめに行うことが断捨離を成功させるコツです。
断捨離の上手な進め方
では、断捨離とはどのように進めるものなのでしょうか?やり方がわからないという方は以下の方法を参考に進めてみてください。
●まずは分別
断捨離は、場所ごとに少しずつ進めて行くと、スムーズで着実に行うことができます。
具体的な方法の一例を紹介します。まずはその場所にある物を以下の3つに分類しましょう。
2.たまに使うもの
3.使っていないもの
「3.使っていないもの」は思い切って捨ててしまいます。「2.たまに使うもの」は1年間などの期限を設け、改めて検討します。保管するスペースにパンパンに物をつめるのではなく、7割程度に収めるのが目安です。
●断捨離するモノの処分方法とは?
断捨離するモノは「家電・家具」「服」「骨董品や貴重品」の3つに大きく分類できます。それぞれの処分方法について解説します。
・家電・家具の処分方法
家電や家具の処分には、思った以上に時間と手間がかかります。まずは直近の1か月間を振り返り、使っていない家電をリストアップします。扇風機やこたつなどの季節家電については、1年前に使用したかどうかで判断しましょう。
捨てるものはサイズによって粗大ゴミとなるので申請が必要です。断捨離する家電や家具が多い場合、買取業者に依頼すればまとめて処分することもできます。
・服の処分方法
洋服は一番溜めこみやすいアイテム。いつか着るかもしれないと思って、いっこうに着ない服はありませんか。自分なりに処分のルールを決めておきましょう。悩んでしまったときは、実際に着てみるのがおすすめ。髪型や体型が変わって似合わなくなったなど、処分する理由が見つかるかもしれません。逆に気に入ったものは残しておきましょう。
靴やバッグは判断に迷うもの。靴の場合は普段使いの3~4足のほか、冠婚葬祭用など、用途ごとに1足ずつ残すとよいでしょう。バッグも同様、用途を考えて判断します。どちらも5個前後が目安です。
・骨董品や貴重品の捨て方
気に入って購入、または相続した骨董品や貴重品がある場合は、なるべく査定に出しておきたいもの。
遺族が遺品整理で売った骨董品に高い値段がついた場合、相続トラブルに発生する可能性があります。無料で見積もりを出してくれるところも多いので、複数の買取業者に見積もりをお願いするとよいでしょう。正しく価値を判断するために、知識が豊富な鑑定士が必要です。
遺品・蔵整理高額買
身辺整理を上手に進めるための注意点
身辺整理を進める上で、業者の力を借りることは有効ですが、注意しないとトラブルを招く可能性があります。また、不用品処理の際に発生する騒音は近所トラブルにつながりかねないため、実施の際には十分に注意してください。以下に、実際にあった身辺整理に関するトラブルとトラブルを避けるための注意点について解説します。
●悪徳業者によるトラブル
不用品回収業者は、まとめて処分してくれるので身辺整理の頼りになる味方です。しかし悪徳業者によるトラブルもあります。例えばこんなトラブル例があります。
・料金に関するトラブル
「無料で回収と案内していたのに高額の請求をされた」「作業が終了しないと料金がわからないと事前説明を曖昧にし、後から追加料金を請求された」などのトラブルが実際に発生しています。料金に関するトラブルはもっとも発生しやすく、契約前にしっかり注意する必要があります。
「料金形態について不明点がなくなるまでしっかりヒアリングをする」「見積書を確認して内訳に不明点があれば事前に確認する」「追加費用などが発生しないか確認する」など、正式に契約する前に料金に関する内容を明確にしましょう。
・不用品の回収に関わるトラブル
「金目のものを見つけると必要なものまで強引に引き取る」「整理の方法が乱雑で、モノを放り上げるなど個人への配慮に欠ける」などのトラブルが発生しています。遺品整理への意識が低く、配慮に欠けた業者が実際に存在します。
担当者の雰囲気や身なり、会社のホームページのデザインや情報量を確認し、少しでも不安を覚えるようであれば依頼をしない方が良いでしょう。また、事前に口コミなどを確認し、悪い噂やトラブルに関する情報が記載されている場合は違う業者を探しましょう。
この他、「品物を回収後にお金になる部分を持ち去り、残りは不法投棄していた」など、非常に悪徳な業者も存在しています。このような業者を事前に把握するためのポイントとしては、「無料」を強調したチラシを配布している業者には注意した方が良いかもしれません。
また、依頼する前に業者のWebサイトなどに住所・電話番号が記載されているかどうか、その記載が正しいかどうか確認することが大切です。安心できる業者は見積もりが明確で、追加料金やオプション料金が決められていることがほとんどです。業者とのトラブルを避けるためにも、業者を活用する際はしっかり注意しましょう。
●不用品の処分作業による騒音トラブル
不用品を処分するときは、ご近所の方とのトラブルにも注意しましょう。夜間でも片付け作業をしていると、騒音が近所迷惑になる場合があります。また業者に依頼した際に、トラックが頻繁に来て道を塞いでしまって困る、ということもあります。遺品整理が原因で、近所の方とのトラブルに発展したという事例もあるため、なるべく日中に行うようにしたり、業者を依頼する際にはトラックの駐車場所を確認したり、周りの人に気を配りながら作業しましょう。
まとめ
身辺整理は、物だけでなく心の整理にもつながります。今までの人生を振り返りながら、これからの人生を考え、快適な生活を送るための大切な儀式ともいえるでしょう。また、遺された家族の負担を軽減し感謝の気持ちを伝えることができます。全部を一気に整理しようとせず、焦らず丁寧に進めていくのがコツです。思い立ったときに少しずつ始めてみてください。