作家着物って高く売れる?売る前に確認したいポイントと有名作家の買取相場
「祖母の着物を相続したけれど、どれほどの価値があるのかわからない」「箪笥のこやしになっている着物があるけれど、なかなか着る機会がない」
そんなお悩みをお持ちの方は、着物の買取専門店に査定依頼をしてみてはいかがでしょうか?特に作家着物の場合、思わぬ高額査定がつき高値で買い取りしてもらえる可能性があります。
この記事では、作家着物とはどのようなものなのか、どこで買取してもらえるのか、売る前に確認しておきたいポイントなどについて解説します。
作家着物とは?3つのタイプに分かれる
作家着物とは
作家着物とは、着物作家が染めや織り・装飾などを手がけた着物のことを指します。洋服でいうところの「デザイナーもの」と同義です。大量生産される着物と比べて品質が高く、制作にも長い時間と手間がかけられています。希少価値も高いため、人気の作家着物となると、数10万円から高いものでは数100万円で取引されることも珍しくはありません。
着物作家にはいろいろな人がいる
着物作家が持っている技術は人それぞれですが、大きく3タイプに分けることができます。
友禅作家
着物の生地に絵を描いていく作家
染色作家
着物の生地に小紋の型染を行う作家
刺繍作家
着物の生地に刺繍を施す作家
着物作家には、重要無形文化財の保持者として人間国宝に認められている方や、伝統工芸師に認定されている方などもいます。特に人間国宝に認定されている着物作家が手がけた着物は、希少価値が高く芸術品としての価値も高いため、非常に高額で取引されています。
この記事の最後でも詳しくご紹介しますが、人間国宝として認められている着物作家には以下のような方がいます。
・平良敏子(芭蕉布)
・小宮康孝(江戸小紋)
・田島比呂子(友禅染)
・中村勇二郎(伊勢型紙突彫)
・福田喜重(刺繍)
・細見華岳(綴織)など
とはいえ、着物作家に資格などが必要というわけではありません。上記のように国から認められている方以外にも、着物をプロデュースしているタレントさんやモデルさんなども着物作家に含まれます。
作家着物はどこで売却する?それぞれメリット・デメリット
作家着物を売却したい場合、以下のような3つの選択肢が考えられます。それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
ネットオークション・フリマアプリを利用する
メリット
着物に限ったことではありませんが、家にいながら気軽に出品できるのがネットオークションやフリマアプリの魅力です。空いている時間に出品作業をしたり、取引を進められたりするのでとても便利です。スマホからも利用できるので、外出先でも売買の状況をチェックすることができます。
デメリット
ネットオークションやフリマアプリで作家着物を出品するデメリットは、一言でいうと「なかなか売れない」ということです。ネットオークションやフリマアプリは取引開始価格を自分で設定できるので、高値で売れるのでは?と思うかもしれませんが、高い着物であればあるほどなかなか売れないのが実情です。個人から数十万円・数百万円の物を買う人というのはあまりいないからです。特にこれまでにそのサイトで販売実績がなかったり、値段が高かったりすると、敬遠されやすくなります。
また、個人間でのトラブル(クレーム・入金がされないなど)に巻き込まれる恐れがあるのも心配です。もしもこういったトラブルに遭っても、運営者側は関与しないことがほとんどなので、ご自身で対処しなければなりません。
このほか、ご自身で作家着物の価値や値段を適正に算出できない場合、うっかりその価値に気づかずに安い値段で売ってしまう恐れもあります。
リサイクルショップを利用する
メリット
リサイクルショップは衣類から雑貨・家電・家具・インテリアまで幅広い商品を取り扱っています。着物を買い取り対象としているお店もたくさんあります。近くに店舗があれば気軽に持ち込めるというのが、リサイクルショップを利用する一番のメリットと言えるでしょう。
デメリット
リサイクルショップは扱う商品が幅広いだけに、着物に関する専門知識を持ったスタッフさんがいるかどうか疑問です。作家着物を査定する際には、着物の状態や素材などにくわえて作家の付加価値も値段を左右します。専門的な知識がない方に査定された場合、作家着物が持つ本来の価値を見抜けず、適正価格で買い取りしてもらえない可能性があります。
またそもそも、「衣類は扱っているが着物の買取はしていない」というリサイクルショップも少なくありません。
専門の査定士がいる買取専門店を利用する
メリット
作家着物を売るのに最もおすすめなのは、専門の査定士がいる買取専門店です。着物のコンディションや素材を正しく見極められるだけでなく、作家着物本来の価値を理解した上で査定をしてくれます。不当に安く見積もられる心配がないのでとても安心です。
また、着物はかさばるので持ち運ぶのが大変ですが、買取専門店の中には自宅に鑑定士がきてくれたり、専門の宅配査定サービスを用意していたりすることもあります。
作家着物の売却を考えているのであれば、専門の査定士がいる買取専門店を利用しましょう。
作家物の着物を売る前に確認すべきポイント
売却先が決まったら、次は売る前に確認したいポイントを抑えましょう。
作家着物を売るときは以下のポイントを確認しておくことをおすすめします。
落款が入っているかどうか
もっとも大切なのは着物に落款が入っているかどうかです。
詳しくは以下解説します。
落款とは
落款とは、作家が自分の作品であることを証明するためにつける印のこと。正式には「落成款識(らくせいかんしき)」と言います。絵画や書には作者のサインがありますが、落款はそれと同じようなものです。基本的にどの作品にも同じ落款をつけるため、落款を確認すればその着物の作者を見分けることができます。
着物にはさまざまな種類のものがあり、織り方や染め方・刺繍の入れ方などにそれぞれ特徴があります。それらの特徴から作者や価値を判断することも可能ですが、中にはそれだけでは正しく鑑定できないことも。人気ブランドや人気作家の着物となると、類似品や偽物が出回っていることも。そういった際に、落款はとても役に立ちます。
なお、落款には決まった書式というのはありません。作家によって落款の大きさや書体・書く内容も異なります。
落款はどこに入っている?確認方法とポイント
絵画の場合、作家のサインは右下または左下にあるのが一般的で、一見してそこにあることがわかります。しかし着物の落款は少し違います。着物の落款はたいていの場合、おくみか衿先のような見えない部分に入れてあります。
なお、落款がついていないからといって「=作家着物ではない」というわけではありません。落款をつけることは義務ではないので、何らかの事情で落款を入れないケースもあるのです。買取店での査定時も、落款がついていれば「これは作家物・高級品だろう」という目線で査定が始まるのは確かですが、落款がないからといって即座に「偽物である・大量生産品だ」と判断されるわけではありません。
証紙があるかどうか
次に着物の証紙があるかどうかを確認しましょう。
証紙の概要と確認するポイントは以下です。
証紙とは?
落款の他に、着物の価値を判断する材料として重要なのが「証紙」です。その着物の産地や製造元・伝統工芸品マーク・織り方・原料名・染め方が記載されています。宝石でいえば鑑定書のようなものです。
証紙がついている=高級着物の証明になる
着物の証紙は、経済産業大臣が指定する検査に合格し、伝統工芸品として認められたブランド着物のみに与えられるもの。どんな着物にもついているものではありません。証紙があれば、それが一流の着物だという証明になります。そのため、証紙を一緒に提示することで買取価格が高くなる可能性が大。証紙をなくしてしまった場合は、査定額が下がることがあります。
他に不要になった着物がないか
着物を買取専門店に売却する際、まとめて売却した方が高値になることがあります。一点から売却することももちろん可能ですが、持ち込む前に他に売れる着物がないか探してみることをおすすめします。
着物の帯はないか
着物だけでなく、帯がないか確認してみましょう。帯も作家物は高値で取引されることがあります。特に丸帯・袋帯・名古屋帯・半幅帯・角帯などは高額で買い取ってもらえるケースが多く、さらに作家物となれば査定額がアップすることも。
着物の状態も査定に影響を与える
いかに作家物の着物であっても、買取査定には保存状態が大きく関わります。落款があって証紙がついていたとしても、保存状態が悪くカビが生えていたり、日焼けによって色落ちしていたり、目立つ傷がついていたりすると、買取額が大幅に下がったり買い取りをしてもらえない恐れもあります。着物を売却したい場合は、あらかじめ保存に気を遣い、状態をよく確認することが大事です。
ただし、人気作家着物の場合、コンディションが多少悪くても買取可能なケースもあります。着物の状態によってケースバイケースなので、一度査定に出してみると良いでしょう。また、作家物かどうか・価値があるかどうかわからないという場合も、査定を受けてみることをおすすめします。
作家着物買取
高額で取引される着物作家は?
買取店での高額取引が期待できるのは、以下の7名の作家の着物です。
売却前に、これらの作家の着物ではないかを確認してみましょう。
久保田一竹
久保田一竹とは
久保田一竹は、日本でも有数の著名な着物作家です。人間国宝にも認められており、世界的にもその名が知られています。彼の功績として特に知られているのが、「辻が花」という、室町時代につくられ江戸時代に失われてしまった着物を現代に再現したことです。伝統技法に独自の技法を加えることで、「一竹辻が花」という自己流の表現を確立し、絵画のような繊細な着物を生み出しました。
また、久保田一竹の着物は「光のシンフォニー」と評され、国際的な評価も受けています。1990年にはフランス芸術文化勲章シュバリエを受賞、1995年にはワシントンのスミソニアン博物館に作品が展示されました。
買取相場
久保田一竹の訪問着と帯の一式「彩夢」は、60万円の買取相場価格がついています。
龍村美術織物
龍村美術織物とは
龍村美術織物は、1894年に創業者の龍村平蔵によって創設された織物製品を扱う会社です。その基礎となったのは、美術品の復元技術。龍村平蔵は大正末期に、正倉院宝物裂・法隆寺裂などの研究に着手し、その技術を高めました。昭和に入ると、海外へも進出。1954年にはクリスチャンディオールからの依頼を受け、名物裂の制作を行っています。平成に入ってからは、今上天皇即位の礼に際して御使用裂や、皇太子・雅子妃殿下「納采の儀」用絹巻物を謹織。また、正倉院宝物の琵琶袋「大宝相華唐草文様」の復元など、国内における重要な織物の製織を手がけました。
また一般向けにも、美術織物から生まれた帯や茶道具・バッグ・雑貨などを販売しています。
買取相場
龍村美術織物の彩絵間道 袋帯は、5万円の買取相場価格がついています。
中村勇二郎
中村勇二郎とは
中村勇二郎は、昭和に活躍した伊勢型紙彫刻師です。型紙彫刻師とは、着物に模様を染めるために用いる型紙をつくる職人のこと。友禅や小紋・ゆかたなどの柄や紋様を表現するのに欠かせない技術です。中でも三重県の伊勢は型紙の生産が盛んで、その精緻で優美な美しさは美術工芸品として高い価値を持っています。中村勇二郎は、そんな伊勢型紙技術の保持者として人間国宝に認定されています。代表作には、「古代菊の図」や「四君子の図」などがあります。
買取相場
中村勇二郎の小紋菊は、3万円の買取相場価格がついています。
藤林徳扇
藤林徳扇とは
藤林徳扇は、延宝8年(西暦1680年)に京都市北区鷹ヶ峰にある旧藤林町(現・鷹峯藤林町)で創業した錦の御旗の織り匠「徳扇」の12代目にあたる人物です。琳派の優美で高尚な意匠を継承しつつ、琳派の枠に留まらない独自のデザインの着物や帯を制作。また、「徳扇コスモアート」と称される絵画を発表しました。芸術界のノーベル賞」ともいわれるユネスコ・グリーティング・アーティストとして連続して選出されるなど、国際的な評価も得ています。
買取相場
藤林徳扇の訪問着は、5万円の買取相場価格がついています。
六谷梅軒
六谷梅軒とは
六谷梅軒は、大正時代から昭和時代にかけて活躍した型紙彫刻師です。伊勢型紙錐彫の技術を学び、鮫小紋や通し小紋といった繊細な紋様を得意としていました。先に紹介した中村勇二郎と同様、伊勢型紙技術の保持者として人間国宝に認定されています。
買取相場
六谷梅軒の江戸小紋は、3万円の買取相場価格がついています。
平良敏子
平良敏子とは
平良敏子は、芭蕉布(芭蕉の繊維を用いた織物)の第一人者です。芭蕉布は沖縄県の特産物で、軽やかな質感が特徴的。戦前までは沖縄各地で織られていましたが、戦争とともに一時は途絶える寸前までに衰退。沖縄出身の平良敏子は、戦後芭蕉布の復興につとめ、独自の作風を確立しました。その功績が讃えられ、人間国宝に認定されました。2021年2月に満100歳の誕生日を迎え、現在も現役で芭蕉布の製作を行っています。
買取相場
平良敏子の芭蕉布帯は、10万円の買取相場価格がついています。
翠山工房
翠山工房とは
翠山工房は、新潟県十日町市にある着物メーカーです。創業は江戸時代で、もともとは「桐屋」という名称で織物業を営んでいましたが、2019年に㈱翠山と屋号を変更しています。現在は、昭和50年代に「辻が花(※)」と出会い、現在はその意匠を現代に継承すべく創作を手がけています。翠山工房ではデザイン・型付け・染め・友禅・絞りなど全ての工程を自社で行っており、職人たちの丁寧な仕事が作り出す着物は高い評価を得ています。
※「辻が花」:室町時代に誕生し、江戸時代に失われてしまった幻の着物
買取相場
翠山工房の訪問着は、3万円の買取相場価格がついています。
この他にも高額買取が期待できる作家は多くいます。
気になる方はどのような作家が作った着物であるかを確認し、ネットなどで一度調べてみると良いでしょう。
まとめ
作家着物は、芸術品としての価値も希少価値も高く、高額で取引されています。「着ていない着物がタンスに眠っている」「着物を相続したが価値がわからない」という方は、ぜひ一度買取専門店に査定依頼をしてみてください。
作家着物買取