価値のある掛軸とは?歴史と人気のジャンル・作家をご紹介
古くから美術品として重宝される掛軸。現代でも床の間に飾られているのを見かけることも多いはず。掛け軸はもともと中国で発祥し、飛鳥時代に日本へと流入。その後は日本の文化と交わり、独自の発展を遂げてきました。古来より日本人の身近にあった掛軸ですが、どれくらいの価値があるのでしょうか。また、引っ越しや生前整理、代替わりなどのタイミングで価値が分からないものをお持ちではありませんか。
この記事では、掛軸の価値を正しく知るために、掛軸の歴史から人気の絵のジャンル・作家をご紹介します。また掛軸を売却する際に高く査定してもらえるポイントも併せて解説します。
掛軸とは?
掛軸とは、書や絵画に裂(きれ)や紙を貼り、軸を取り付けて表装したもの。日本では床の間に掛けて飾られることが多いため、「床掛け」と呼ばれることもあります。掛軸は北宋時代の中国が発祥とされています。仏教画を「掛けて」拝するという、礼拝の対象として生まれました。丸めて持ち運びやすく複数生産しやすいことから、仏教の普及を目的に作られたのが始まりです。日本では飛鳥時代に仏教が伝来すると同時に仏画の掛軸も流入。その後は日本の文化と融合。時代と共に芸術的価値を高め、鎌倉時代の水墨画や江戸時代の浮世絵など、芸術品をさらに良く見せる補完品的な役割として日本独自の発展を遂げていきました。日本での掛軸の使われ方には主に3種類あります。
1つ目は、床の間に掛けられる「床掛け」。中国から伝来した「幸福の象徴」を描いたものを飾り運気アップを図ることもあります。人気のあるモチーフには、家を守る「虎」や長寿を願う「老人と山水」、立身出世などに効果があるとされる「龍」などがあります。効果を高めるために、設置する向きや方角が定められていることも。
2つ目は、仏壇に掛けられる「仏壇掛け」です。掛軸を仏壇の中に掛け、仏像の代わりとして礼拝を行います。掛軸の中央には本尊を、左右に本尊を補佐する脇侍(きょうじ)を描くことを原則としていますが、名号・法名軸を描くなど、宗派によってさまざまです。
3つ目は、茶室に掛ける「茶掛け」です。掛軸は茶室に欠かせない道具の1つです。一般的な掛軸と違い、茶の湯が行われる草庵(そうあん)に合うように軸の幅がやや細く作られているのが特徴です。来客や季節、昼夜などを考慮して掛軸を取り換え、もてなしの心を表現します。それぞれの季節に咲く花や植物を題材にしたものを掛けるのが雅とされています。
掛軸の役割と絵画との違いは?
掛軸は絵画と似たような役割を持っており、どちらも鑑賞することを目的としています。掛軸と絵画の違いはどのようなところにあるのでしょうか。
室内装飾
掛軸は昔から一般的な室内装飾として用いられています。比較的簡単に入手できたため、内装や他の家具との調和などを計り室内装飾としても重宝されました。
呪術的な役割
医療が発達していない時代には、病にかかると必ず祈祷が行われました。病の治癒を祈祷するため、呪術的な役割を期待され作られた掛軸もあります。
長さのある絵の鑑賞
古来の書や絵は巻物に描かれていました。中には数メートルに及ぶ長さのものもあったため、そのまま飾り付けることや、一度に全体を眺めることは困難でした。そこで分割し、掛軸として仕立て上げる方法が編み出されました。長さのある作品であっても一度に鑑賞することが可能となったのです。
文化財・美術品としての価値
掛軸は戦国時代以降、美術品としての価値を高めていきます。明治時代には西洋化が進むなか、美術においては西洋に負けじと「日本らしさ」が強調されていき、日本画も大きく発展してきます。日本画に呼応する形で掛軸も文化財・美術品として評価されるようになりました。現代では、掛軸は日本美術のジャンルの1つとして認識されています。
価値のある掛軸の特徴は?
掛軸といっても価値はさまざまです。価値のある掛軸とはどのようなものなのでしょうか。
希少性が高いもの
市場に出回っている数が少ない掛軸であれば希少性が高く、価値があるとされます。たとえ有名画家の作品であっても市場に出回っている数が多ければ、それほど高値になりません。
作家物であること
掛軸や共箱のどこかに作家の落款やサイン(銘)があれば、作家物であるといえます。有名作家が手掛けた掛軸は非常に高額となります。作家の人気にも移り変わりがあるため、安く手にいれた掛軸でも、作家の人気が上がれば高額となります。また掛軸そのものの状態が多少悪かったとしても、有名作家の作品であれば値がつくことも。
良い保存状態であること
掛軸の保存状態が良いものであれば高い価値が期待できます。日焼けや色あせ、虫食いなどの劣化があり状態が悪ければ価値が下がってしまいます。専門の職人に修繕してもらえば掛軸の価値は上がります。
信頼できる経路で入手
掛軸をどのように入手したのか、経路を確認しましょう。骨董品コレクターの大切なコレクションや著名な人から譲り受けた場合は価値が高い可能性があるといえます。さらに本物と証明できる鑑定書や箱書きなどがあれば高く評価されるでしょう。
ジャンルごとの掛軸の価値と特徴
掛軸にはさまざまなジャンルの絵が描かれています。ここでは掛軸で描かれるジャンルと、ジャンルごとの価値について紹介していきます。
花鳥画
花鳥画の概要
花鳥画とは、花や鳥などを始めとし、草木・虫・水生生物、小動物などをモチーフとした日本画のこと。もともとは中国で体系化されたジャンルの一つです。
花鳥画の価値・相場
花鳥画は人気で作られた掛軸の数も非常に多いため、買取価格の幅も広くなっています。作家物であれば3万円からが相場といえるでしょう。王雪涛(おう・せっとう)の作品が20万円で買取されるなど、中には数十万円の値が付くものもありますので、花鳥画の掛軸は査定をしてみるのがおすすめです。
山水画
山水画の概要
山水画とは、山や川、樹木・岩石を題材にした絵画です。広義には風景画とされますが、現実の風景ではなく理想郷としての景観を表現しているのが特徴です。
山水画の価値・相場
山水画は中国を起源としていますが、幽玄が表現されているとされ日本でも人気があります。作家物であれば2万円からが相場となります。人気のある作家は20~30万円の値がつくものも。
神仏画
神仏画の概要
神仏画とは、神や仏を題材とした絵画です。そもそも掛軸は「掛けて拝する」という用途で作られたのが始まりです。当時は文字を読める人が少なかったこともあり広がっていきました。
神仏画の価値・相場
神仏画の買取価格は、誰が描いた作品かということと、状態によって大きく左右されます。作家物であれば2~5万円程度が相場とされます。棟方志功の作品であれば、100万円以上の値がつくものも。
水墨画
水墨画の概要
水墨画とは、墨だけを用いて描かれた絵画です。線だけではなく、ぼかし技法で濃淡や明暗を表現しているのが特徴です。
水墨画の価値・相場
水墨画の買取価格は作家の知名度によります。作家物は5万円程度が相場とされていますが、北大路魯山人の作品は数十万円以上の値がつくものも。
中国掛軸
中国掛軸の概要
中国掛軸とは、中国由来の技法を使って描かれたものや、中国作家による掛軸作品の総称です。
中国掛軸の概要・相場
中国掛軸は日本の作家が手掛けた掛軸よりも高値が期待できます。もともと中国掛軸は価値の高いものでしたが、中国で文化財の持ち出しを禁止する法律が厳しくなったことや、中国富裕層による購入によってさらに価値が高騰しています。作家物であれば5~15万円が相場とされていますが、特に有名作家作品だと1,000万円を超える値がつくものも。
高額買取が期待できる作家の掛軸
作家物であれば価値が高い掛軸。その中でも高値での買取が期待される作家3名とその作風について紹介します。
円山応挙
円山応挙(まるやまおうきょ)は江戸時代後期に活躍した画家です。足の無い幽霊を初めて描いたとされる「幽霊図」が有名です。暇さえあればスケッチをしていたという応挙。当時はあまり重要視されていなかった写生と日本画の装飾技法を融合したインパクトの強い独自の画風を確立し、一躍人気絵師となりました。この画風はのちに「円山派」と呼ばれ、日本画の代表的な流派の1つとなりました。動物を多く手掛けた応挙ですが、中でも人気のモチーフは虎です。当時の日本に虎はいませんでしたが、虎の毛皮から想像し、まるで見たことがあるかのように生き生きと描いています。
伊藤若沖
伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)は江戸時代中期に活躍した画家です。全30幅にも及ぶ「動植綵絵(どうしょくさいえ)」やモザイク画のような「鳥獣花木図屏風」などが有名で、大作を多数残しています。羽の先まで描き込んだ鶏や、虫食いまで緻密に描き込んだ植物など、まるで生きてそこにいるかのように描かれており、圧倒的な構図と色彩の鮮やかさが特徴です。動植物への温かいまなざしやユーモアがつまった自由な作風は「奇想の画家」として近年再評価され、国内外で最も人気が高い画家の一人です。
奇想の画家・伊藤若冲。「動植綵絵」など唯一無二の作風が評価される
上村松園
上村松園(うえむらしょうえん)は明治から昭和にかけて活躍した画家です。女性が画家として生きていくことが難しい時代に、生涯美人画を通して女性の美を表現し続けました。世の女性たちの社会的な価値を高めたいという願いが込められており、女性から見た美しい憧れの女性を描き出しています。そのため松園が描いた女性からは強さと気品が漂っています。作品はすべて毛筆で描かれていますが、繊細な線や力強い線など、さまざまな筆のタッチを使い分けているのが特徴です。美しく格調高い作品の数々は、今での多くの人を魅了し続けています。
明治~昭和に活躍した上村松園。女性の美を表現し続けた女流画家
掛軸の買取店を選ぶ際のポイントは?
掛軸を売却する際は、少しでも高値で買い取ってくれるお店を選びたいもの。買取店を選ぶときのポイントをご紹介します。
掛軸の買取実績が豊富である
まずは掛軸について知識と経験が豊富な専門の鑑定士が在籍しているかどうか確認しましょう。さらに過去に買取実績が豊富な業者であれば審美眼が養われているので安心してお願いすることができます。高く売却できるルートも持っているため、査定額が上がる可能性もあります。
掛軸に詳しい鑑定士が所属している
掛軸の作品のジャンルは多岐に渡り価値も幅広いため、一般の方が価値を正しく判断するのは非常に困難です。掛軸に詳しい鑑定士が所属している会社であれば、安心してお願いすることができるでしょう。
メディア露出があり母体がしっかりしている会社
メディアに露出経験がある店舗は、豊富な知識と経験を持つスタッフがいることが保証されています。また、買取は現金での即払いが基本です。高価なものを買い取るためには会社にも資金力が必要となります。母体がしっかりしている会社であれば、適正な買取価格で査定してくれます。
Q&Aやアフターフォローがしっかりしている
掛軸を売却したあとに後悔してしまうことがあるかもしれません。クーリングオフ制度を利用できるなど、アフターフォローが出来る業者だと最初から分かれば安心してお願いすることができます。何か疑問があれば気軽に相談をしてみましょう。
担当者が丁寧に対応してくれる
受付での対応が丁寧な会社は、感じがよく疑問点があった場合に気軽に確認しやすいため、安心して利用することができます。きめ細かいサービスが行き届いており、品物も丁寧に扱ってくれます。
掛軸高額買取
まとめ
床の間に飾り季節を表現するなど、来客のお客様をもてなす美術品として今でも私達の身近にある掛軸。
掛軸はもともと古代中国から伝わったものですが、現在では日本の長い歴史に培われた「美」を表現する大切な道具の1つとなっています。
価値が分からない掛軸をお持ちの方や処分を考えている方は、古美術八光堂で一度査定してみてはいかがでしょうか。専門知識と経験豊富なスタッフが丁寧に鑑定いたします。汚れや傷があっても高値で取引されているものもあります。ぜひお気軽にご相談ください。
掛軸高額買取