腕時計の修理(オーバーホール)は専門家に依頼しよう。自分で修理する場合の手順とリスク
腕時計は、ファッションをワンランクアップするおしゃれアイテム。普段から身に着けている大切な腕時計だからこそ長く使用したいもの。このように私達の生活の中で身近な腕時計ですが、たくさんの歯車でできている精密機械です。長期間正常に使用するためには定期的なメンテナンスが必要です。
腕時計が動かなくなった・落としてしまった・曇っているなど、突然トラブルが起こってしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。この記事では、ご自身で腕時計の修理を修理する方法やリスク、専門家に依頼するメリットをご紹介します。
腕時計の修理(オーバーホール)を自分で行うことは可能?
腕時計のオーバーホールとは内部の部品を取り出し修理すること。オーバーホールはメーカーや修理業者に依頼すると費用がかかってしまいます。ご自身の手で行うことは可能なのでしょうか。
Webサイト・動画などを確認して自分できることも
腕時計の分解・修理の方法を紹介しているWebサイトや動画などがあります。その手順に従って進めていけば、自分で出来る可能性も。
時計の修理を自分で行うメリット・デメリット
メリット
ご自身の手で時計の修理を行うメリットは、費用を抑えることができること。修理に必要な工具などを揃えるためのコストはかかりますが、業者に依頼するよりは低コストで済みます。また、業者に依頼すると修理に時間が掛かります。自分のタイミングで修理できるため、急いでいる人にとってはメリットとなります。
デメリット
自分で時計の修理を行った場合、正常に組み立てられたとしても専門の方が見ると一般の方が修理したことが分かってしまいます。そのためメーカー保証が受けられなくなったり、専門業者が修理を受け付けてくれなくなったりする場合があります。また時計は精密機械のため、小さな部品が多いです。うっかり部品を紛失してしまう恐れも。
腕時計の修理(オーバーホール)に必要な道具と修理手順
ご自身で腕時計の修理をするためにはどのような道具が必要なのでしょうか。修理の手順も併せてご紹介します。
修理に必要な道具
精密ドライバー
ネジの取り付け・取り外しの際など、多岐にわたり使用します。腕時計に使われているネジのサイズはさまざまです。それぞれのネジ山に合うドライバーを使用して修理を行います。
ラジオペンチ
腕時計の裏蓋を開ける時などに使用します。
腕時計の裏蓋を開ける工具(コジアケ)
腕時計の裏蓋がはめ込み式の場合、裏蓋を外す専門の工具です。小さな隙間がある箇所に刃を入れ、力をかけることで裏蓋が外れます。
時計固定器
腕時計を分解する際、作業がしやすいように固定する台です。修理する腕時計のサイズに合わせて用意します。
時計修理の手順
1.裏蓋とケースの分解
まずは裏蓋とケースをラジオペンチや腕時計の裏蓋を開ける工具を使用して外して分解します。
2.各パーツの整理
外した各パーツや部品はとても小さいため、紛失してしまう恐れがあります。部品入れなどに入れて整理し、無くさないようにしましょう。
3.油の洗浄・調整
部品についた古い油や金属カスの洗浄と調整を行います。
4.部品の交換
部品が破損している場合は交換を行います。
5.部品の組み立て
歯車などがスムーズに動くように注油しながら部品を組み立てていきます。
6.動作確認
全て組み立て終わったら時間を調整し、正常に動作するか確認しましょう。
自分で腕時計の修理(オーバーホール)をするリスク
ご自身で腕時計を修理する方法をご紹介しましたが、実際は豊富な知識と経験が必要な作業です。大切な時計を長く使いたいなら、残念ながらご自身での修理はあまりお勧めできません。
失敗するリスクが高い
時計はごく小さな部品が数十・数百とあるような精密機械です。小さな歯車がずれたり、細い軸が曲がってしまったりするだけでも時計が動かなくなってしまう可能性があります。古い腕時計や海外製のものは交換用の部品が手に入らない場合も。そのため失敗するリスクが高いといえます。
保証が効かなくなる
もし時計がメーカー保証期間内だった場合、一般の方が分解・組み立てを行った時点でメーカー保証が受けられなくなってしまいます。
修理業者が受け付けてくれないことも
一度でも一般の方が分解・組み立てを行った腕時計は、それ以降専門の修理業者が受け付けてくれない場合が多いです。なぜなら、異常な箇所を調査するだけでもかなりの手間がかかってしまうからです。
腕時計の修理(オーバーホール)を依頼できる3つの業者
では、腕時計の修理を検討している場合、依頼先にはどのような選択肢があるのでしょうか。
腕時計のメーカー
メリット
最も確実なのは各時計のメーカーへ依頼すること。純正のパーツを保有していることや高い技術を有した技術者がいるため、安心してお願いすることが出来ます。
デメリット
メーカーに依頼する場合、修理に時間がかかるのがデメリット。特に高級ブランドや海外メーカーの場合1カ月前後かかるのが目安です。さらに損傷が激しいものやヴィンテージ品の場合は数ヵ月かかってしまうこともあります。また、修理業者に比べると高いコストがかかります。
時計の小売店
メリット
時計の小売店やホームセンター・家電量販店の時計修理カウンターでも修理を依頼することができます。リーズナブルで、破損具合によってはすぐに修理してくれるのがメリットです。
デメリット
ブランドものの時計は受け付けないお店が多いのがデメリット。また、修理は電池交換やベルト交換などの簡単な作業を中心としている場合が多く、破損状態によっては受け付けられないことも。
時計修理(オーバーホール)専門業者
メリット
時計の修理を専門に行っている業者に依頼すると、メーカー修理よりも価格が安く、短納期で修理できる場合が多いのがメリットです。身近に信頼できる修理業者があれば、定期メンテナンスも気軽に実施できます。
デメリット
修理業者によっては純正パーツを揃えていない場合も。もし純正パーツではないものを使って修理を行った場合、その後メーカーで修理を受け付けられない可能性もあります。
腕時計修理業者に依頼した場合の作業手順と相場
時計修理業者に依頼した場合、どのような手順で修理が行われるのでしょうか。一般的な手順と気になる修理費用についてもご紹介します。
作業の流れ
1.来店
まずは時計修理業者に修理したい腕時計を持ち込みます。近くに修理業者が無い場合は、宅配での修理を受け付けている業者も。
2.修理工房への送付
腕時計を修理工房へ送付します。
3.見積りの連絡
修理工房では、専門の技術者が内部の状態と作動状況を確認します。その上で詳細な見積もりを作成します。
4.修理
修理を進めていきます。すべてを分解・オイル洗浄し、再組立てを行います。海外のメーカーや特殊な部品を使用しているものは、部品の取り寄せ納期によって修理期間が変動する場合があります。
5.修正完了・現物送付
組み立てが完了したら、専門の機械を使って詳細な精度調査・動作テスト・ランニングテストを行います。合格基準に達成したら修正完了。お客様へ現物を送付します。
時計修理の相場
時計修理業者に依頼する場合、気になるのが修理料金です。業者によって修理費用は異なりますので、一例をご紹介します。
ロレックス 16760 GMTマスターⅡの場合
電池交換¥3,000~
外装修理¥6,000~
オーバーホール¥29,000~
オメガ シーマスター プロフェッショナル クロノの場合
電池交換¥3,000~
外装修理¥6,000~
オーバーホール¥29,000~
エルメス クリッパー CL4.210 クォーツの場合
電池交換¥3,000~
外装修理¥6,000~
オーバーホール¥28,000~
カルティエ パシャ 2528 オートマチックの場合
電池交換¥3,000~
外装修理¥6,000~
オーバーホール¥29,000~
腕時計の修理(オーバーホール)業者を選ぶポイント
大切な腕時計の修理は、信頼できる業者にお願いしたいもの。たくさんある時計の修理業者の中で良い業者を見つけるポイントはあるのでしょうか。
実績が豊富かどうか
腕時計の修理は専門的な仕事です。大切な腕時計を預けるのであれば、事前にWebサイトを確認して実績豊富な業者かどうか確かめましょう。
経験豊富な時計技師が在籍しているか
豊富な知識と経験を持った時計技師が在籍していることが重要です。「時計修理技師」「公認上級時計師」の資格を持つ技術者がいることが参考となります。
母体となる企業・グループの信頼性が高いか
母体となる企業やグループの信頼性が高ければ、技術力に対する安心を感じられるでしょう。また、他の業者に比べて料金が安く設定されている場合もあります。
サービス内容がWebサイトなどに明確に記載されているか
時計の修理費用は業者によって異なります。そのためサービス内容や価格がWebサイトに明記されているか事前に確認しましょう。
アフターフォローの有無や内容
アフターフォローが充実している修理業者を選びましょう。修理業者によっては、修理した時計であれば点検や洗浄・防水試験を無料で実施しているなどのアフターフォローを行っているところも。
担当者の対応が丁寧・謙虚であるか
修理をするにあたり、さまざまな疑問や質問が出てくるでしょう。初めて依頼する場合はなおさらです。そんなときに納得できるまで丁寧に応えてくれる業者を選ぶことが最も重要です。大切な時計を扱ってもらうのですから、丁寧で謙虚な対応をしてくれる業者を選びましょう。
見積書の内訳が明確かどうか
修理費用は業者によって異なるため、提示された費用が適切かどうか見極めるのが難しいかもしれません。そのため、初めての方にも分かりやすく見積書の内容が明確になっているかどうか確認しましょう。また、追加費用の有無についての説明があるか、概算ではなく正確な見積もりを出してくれるかどうかも信頼できる業者か判断できるポイントとなります。
Web申し込みなどに対応しているか
近くに時計修理業者が無い場合は、Web申し込みや宅配での修理に対応しているか確認しましょう。
時計修理工房なんぼや
まとめ
大切な腕時計を長く使い続けるためには、トラブルが起こったときに適切な修理を行うことが大切です。メーカーで修理を依頼するとそれなりの費用や納期がかかってしまいます。そんなとき信頼できる時計修理業者が身近にあれば、低コストですぐに対応することができます。時計修理業者ではこまめなメンテナンスも引き受けてくれるので、腕時計の寿命も延びることでしょう。
古美術八光堂では、腕時計の修理を行っています。些細なトラブルであってもお気軽にご相談ください。
時計修理工房なんぼや